11・木の妖精
ぽーは、緑いっぱいの大きな山の上を、ごきげんに飛んでいました。
「ふっ、ふっ、ふーん♪」
すると、山の近くの村から女の子の声が聞こえてきました。
「この木を、きらないで!」
「おじさんたち、ダメだからね!」
「ん? どうしたんだろう?」
下を見ると、小さな女の子が大きな木の前で、腕を広げてさけんでいました。
二人のおじさんが、困った顔で立っています。
「おじょうちゃん、おじさんたちはここに道路を作らなくちゃいけないんだ。
そのためには、この木をきらないといけないんだよ」
「いやだ! この木は、おばあちゃんといっぱいあそんだ、だいじな木なの!」
女の子は木から離れません。
「ほら、せいこ。あきらめなさい。もう帰ろ」
ママが、女の子の手を引いています。
すると、ギザギザの刃がついた道具を持ったおじさんが近づいてきました。
女の子のパパとママは、抱っこして木から離れました。
「えーん、いやだー!」
女の子は、足をバタバタしながら泣いていました。
道具が動きだして、木に触れた、その時……
ギュインギュインギュイン
「――イタタタタア! イタい、やめてくれ!」
どこからか、大きな声が聞こえました。
「ん……? だれだろう?」
ぽーは、きょろきょろとまわりを見まわしました。
「キミの名前は、なんて言うんだい?」
「え……? どこから聞こえるんだろう?」
「ここ、ここだよ。目の前に大きなブナの木があるだろ?」
「――ひいっ、木がしゃべってる!」
ぽーはビックリして、ブナの木から離れました。
「おどろかなくてよい。こっちへおいで」
ぽーは、おそるおそる近づいていきました。
「ボク? ぽーだよ」
「ぽーか、よい名だね」
「おじさんはだれ?」
「おじさん? わしはまだ七十歳の若者だよ」
「おじいさんじゃないの?」
「木の歳では若者だぞ。わしは、この木の妖精なんだ」
「ようせい?」
「木を守るおばけってとこかな」
「そっか……。でも、どうすればたすけられるの?」
「わしは、まだせいこちゃんを見守りたいんだよ。
せいこちゃんのおばあさんとの約束なんだ」
どうしたらいいかな、と考えながら、ぽーはブナの木の枝にそっと触ってみました。
すると……ドングリが三個、四個と落ちて、おじさんたちの頭にコツンコツンとあたりました。
「イ、イテテッ!」
「なんだ? ドングリか……。それにしても大きいなあ」
でも、おじさんたちはまた道具を動かして木をきり始めました。
ギュインギュインギュイン
「うわぁ、どうしよう!」
「助けてくれぇ!」
木の妖精は、大きな声でさけびましたが、聞こえるのはぽーだけです。
「よし、これでどうだ!」
ぽーは、たくさんの枝をゆらしてみました。
ゆっさ ゆっさ
ばさ ばさ ばさー
ひゅーん ひゅーん
ぼて ぼて ぼてー
たくさんのドングリが、大雨のようにおじさんたちへ向けて落ちていきました。
「うわあ、なんだこれは!」
「木がゆれて、ドングリがどっさり落ちてきたぞ!」
「これは、山がおこってるんじゃああ!」
おじさんたちはビックリして、逃げていってしまいました。
何日かして……
ぽーはあのブナの木を見に、村へやってきました。
大きな木は、少し先の場所に移動していました。
木の下では、女の子がパパとドングリを使って工作をしていました。
「ねえ、パパ」
「うん、なんだい?」
「このドングリでつくったおにんぎょう、おばあちゃんのおはかに持っていってもいい?」
「うん、いいよ」
「おばあちゃんが、大きくなったらせいこもつくれるようになるよって言ってたの。
わたし大きくなったよって、言えるかな?」
「うん、言えるよ。きっと、おばあちゃんもよろこぶよ」
パパはそう言って、女の子の頭をなでました。
「よかったね、せいこちゃん」
ぽーもニッコリしています。
「おーい、ぽー君。ありがとうな」
ブナの木から声が聞こえてきました。
「助かったよ。これで、おばあさんとの約束が果たせそうだ。
わしはな、せいこちゃんのおばあさんが子どものころから、ずっと見てきたんだ。
おばあさんがある時、わしのところに来てな。
せいこちゃんを見守ってくれって、たのまれたんだよ」
「そうだったんだね」
「今回はありがとうな。また遊びにきてくれよ。
ずっと話し相手もいないし、動けないしな。あっはは」
「わかった。じゃあ、友だちだね」
「うん、友だちだ」
カラーン♪ コローン♪
カラーン♪ コローン♪
やさしい鐘の音が、雲の上の教会から鳴っていました。
ぽーは、また新しい友だちができて、うれしそうに空へと飛んでいきました。




