嫌いじゃなければ付き合ってみればいい
小さなことを積み重ねて成長していくと他人はいうが、私はいつも一歩が大きい。思い立った時にはもう夢に向かってすごい勢いで走り出すタイプだ。韓国の女性アイドルが大好きでいつでもイベントに参加できるようにしたいという思いから気づけば韓国の四年制大学に進学し、アイドルを追いかけ回してついに大学を卒業することが決まった。留学生活をYouTubeにVLOGとして載せたら1発当たり収入もよく、このまま芸術系のビザを取得して韓国に残り女性アイドルを追い続けようかと思っていたが、有名大学を卒業したのため知り合いから大きめの韓国芸能事務所でアイドルのVLOGの編集しないかと声をかけられた。ついでに自分のVLOGも撮っていいと言われて、副業までやれるならばがっぽり稼げるな…そう思いまずはインターンとして入社した。
「前任者が再来月で辞めちゃうから、日本語も出来るって聞いて適任だわ」
チーム長という上司は疲れた顔をしながらも嬉しそうにそう言って私をデスクに案内する。大手芸能事務所だ。聞いたことあるアイドルの名前ばかりある。推しの会社ではないけれど。この調子なら推しともどこかで会えるかもしれない。
「あなたがまず担当するアイドルたちが今日は午後から練習のはずだから見に行きましょうか」
チーム長に言われてデスクを立ちついていく。下の階に降りると練習室がたくさんある。音楽が漏れて聞こえてくる。一つの部屋の番号を確認するとカードをかざして中に入る。そこではカメラを回されたまま振り入れをしているアイドルたちがいた。
「な、」
「BLACKSHINEよ」
この事務所は有名アイドルだらけだが、5年連続で年末の授賞式の大賞を総なめにし、私の推しグルを二位に追いやる韓国アイドル界の覇者BLACKSHINE。というか、男性アイドル担当するんだ私。
「自己紹介いるかしら?」
「さすがにBLACKSHINEのメンバーはわかります…」
自分のYouTubeを見られているので女性アイドルが大好きなことはバレているが事前にファンクラブに登録していないか調べられているようでBLACKSHINEについてはあまり知らないと思われていたようだ。しかし、名前と顔が一致するだけで年齢も担当も知らない。
「名前と顔はわかるんですけど、個人個人をよく知らなくて」
「そうよね、やっぱり自己紹介が必要ね」
チーム長が撮影中のカメラを止めさせて休憩に入ったメンバーを呼ぶ。
「イアンの後任者の」
「Liaさん?」
私を紹介するより先にメンバーの1人が私を呼んだ。不思議に思いその方を向くと
「YouTuber、ですよね。女性アイドルのファンの」
多分ドンヨンさん。多分。
「あ〜!俺たちこの人の日本語のVLOG教材に日本語の授業受けたね!」
と言ったのは多分ジェヒョンさん。YouTubeのVLOGを題材に日本語の授業することあるんだ。不思議だな。
「癖のない標準語だからって見たやつ」
「あ〜、あれか。めちゃ有名人じゃない?」
6人グループなのだが、みんなが口々に話し出す。
「みんな知ってるのね、なら紹介の手間が省けたわ」
「でも、女性アイドルのファンだから俺たちのことは知らないですよね?」
ドンヨンさんが少し不安そうにこちらを見る。
「右からドンヨンさん、ジフンさん、ジェヒョンさん、ソウタさん、チンフィさん、ヒョンビンさん」
名前があっていたようでおぉー!と感動の声が上がる。多分このまま年齢順のはずだ。
「アタリデス!」
とドンヨンさんが日本語で言ってくれるのでぺこりと頭を下げておく。リーダーはドンヨンさんではなくてたしかジェヒョンさん。ここまではわかるが、個人の性格はよく知らない。
「1カ月くらいは6人が出社してる時に一緒にいて個人の性格を知っていって欲しいの。その間は退勤前に日報を書いてくれたらいいわ」
1カ月くらい仕事イージーモードだな。しかし、VLOGはデスクから自分を映す以外の撮影は禁止なのでしばらく社会人VLOGは撮れなさそうだ。
「何してるんですか?」
メンバーを見ながらメモを書いているとドンヨンさんが声をかけてきた。
「メインボーカルのドンヨンさん。小言が多いメンバーをよく見てる。ソウタさんと特に気が合うよう。多分2人を呼ぶニックネームがある」
「おぉ、スゴイ。ボクとソウタはイルズってヨバレテマス!」
韓国語でいいのに、日本語が得意なドンヨンさんが日本語で話してくれる。小言が多いというメモは見逃されたようだ。イルズの由来は、日本人のソウタさんと日本語得意なドンヨンさんで日本の韓国語イルボンのイルだけをとってイルズらしい。
「イルズ、日本での人気高そうですね」
「ツートップ!」
日本語を話してくれる韓国アイドルはそりゃツートップだろうな。
「ツートップは嘘じゃん、ジェヒョンが顔面で一位取ってくじゃん」
ジェヒョンさんとソウタさんは同じ2000年生まれだから…
「コンコンズか」
00の韓国語からコンコンズだと予想すると、
「さすがアイドルオタク、俺とジェヒョンはコンコンズ。日本人気はジェヒョンが一位で俺とドンヨン兄さんはその次を争ってる」
「やっぱり日韓に万人受けするイケメン顔ですもんね」
「Liaさんもジェヒョンが一番カッコいい?」
「アイドルみすぎて、一番カッコいいの概念消えてるんですよね。今はルッキズムに則ってイケメンか違うかしか判断出来ないんですよ」
アイドルってみんな綺麗だし、個性派イケメンもいれば正統派もいて、でもみんな綺麗だし。そうなってくるとみすぎて目がバグってどれが一番かわからなくなる。目と鼻と口があれば美形なのかと思って鏡見たらブスな自分いるし。
「女性アイドル以外興味なさそう」
「まぁ、大正解ですね」
少し話していると練習再開の声がかかりまたカメラを回して次の新曲の練習が始まる。振り入れは早いのに、そこから同じ動作を全員揃うまで何度も合わせ続ける。大変だ。曲が止まるとまたメンバーでわちゃわちゃとしたり振りについて話し合ったりしている。アイドルって真面目じゃなきゃ出来ないよな。私の推しも練習シーン見てると何が違うの?みたいなところ何度もやり直したりしてる。ファンが見てるからこそ妥協が許せないのだろう。さっきから手の挙げる角度を確認している。ダンスできないからよくわからない。首を傾げながら見ている私とドンヨンさんが目が合うと、ハハっと笑い出した。メンバーもどうしたのかとドンヨンさんを見る。
「いや、なんでもない」
首を傾げる私の顔が面白かったのかもしれない。申し訳ない。多分今のシーンはカットになるな。私の存在が変な写り方すると無駄に炎上する。映るならマネージャーみたいにうつらないといけない。
「僕たちのこと変な目で見るから」
試しに社内のカフェテリアで今日の撮影分を軽く編集しているとドンヨンさんが向かいに座った。
「変な目?」
「何してるかわからない不思議なものを見る目」
季節は冬だというのに、当たり前のようにアイスアメリカーノを飲むドンヨンさん。日本人の私は普通にホットコーヒー。
「私はダンスはやったことがないので、小さな違いがわからないんですよ。アイドルをどれだけ見ていても一瞬の幸せに目を奪われて正直ダンスまでは覚えられない」
「でも、僕たちがこだわった細部がその一瞬の幸せを素敵なものにしてる?」
そう、素人にはわからないこだわりが、強い意志が私たちオタクを沸かせて幸せにしている。そのオタクの一人ではあるが、推しでないグループのことはもっとわからない。
「僕も君のVLOGで使うフォントはわからないしね」
でもフォントによって完成度が変わってくる。私はそう思いながら、パソコンに目を向ける。作り途中のVLOGに映るのはブサイクな私ではなく、美しいアイドルのBLACKSHEINだ。
「まぁ、基本の字幕のフォントは会社指定なんで編集者の私のカラーはほとんどないですけどね」
あるのは、BLACKSHINEチャンネルのカラーだ。この会社はこの会社でフォントを作っているから、本当にフォントだけでどの会社の動画がわかるだろう。そうやって刷り込んで、そのフォントをどこかで見た時にBLACKSHINEを思い出すんだ。
「僕たちのグループの中にタイプの人いたりする?」
「アイドルが恋バナですか?私恋愛はあまりしてこなかったので、今日もこの後推しのサイン会で」
「サイン会?あのグループカムバだったっけ」
「そうですよ〜、何話したらいいと思いますか?」
「君あのグループの常連でしょ、どうせ世間話だ。僕もよくきてくれるファンはみんな友達みたいだから」
そう、会ったら、ねぇ聞いて〜!から始まり10万20万と費やした金は数分の世間話に終わる。それでも推しとお話がしたい。私が払わなければお話は出来ないのだから。
「…ドンヨンさんとお話するなら仕事の話しないと、サイン会にくるファンに悪いですね」
「僕たちは同僚ジャン!そこは違うデショ」
まあ、私も推しがマネージャーさんたちと話してても妬んだりはしないからな。だって仕事だし。
「私はまだインターン生ですけどね、あ、時間だ。お疲れ様です。この後顔面綺麗にしにいかないといけないので」
ただの顔も韓国ではメイクサロンがたくさんあるからプロに見れる顔にしてもらえる。それにそのvlogを撮ればまた収益につながる。アイドルをバカみたいな火力で追いかけるのに金がいるのだ。ドンヨンさんに挨拶をして会社を出る。
深夜3時、私は会社の練習室にいる。本当にエンターテイメントは見えないところが苦労のドブラック。自分も動画編集は真夜中に思いついたらやったりしていたがそれは個人事業主だからやれることなのに、この会社、いや芸能事務所はそれを会社単位でやる。アイドルのスケジュールに空きがないなら睡眠時間を削らせるというのだから。
「今から朝の6時まで3時間通しで日本の番組の出演曲を練習します。その後は、プロモーション用のお泊まり撮影です」
マネージャーから本日のスケジュールが発表される。私も同じように一緒についていく。カメラの設置とかあるから。
カムバック期間を前に空白を作らないようにちょうど行われる日本の音楽番組の特番に出るらしく何度か披露した曲らしいが振り入れからする。あんなにたくさんの曲やってたらやらない数ヶ月で忘れちゃうわな…。深夜の3時だというのに歌を思い出すためにところどころ歌いながら振り入れをする彼ら。体力底なしか?なんて思いながら眠たい目を擦りながら見る。
「あなたは朝からのお泊まり撮影の方からでよかったのに」
「日本人は前入りスケジュールみたら来ちゃうんですよ。チーム長」
「真面目で嬉しいわ、早く出発できる時にあなたを待つのは嫌だったから前の予定を教えたの」
…確信犯じゃないか。メンバーはバス移動中に仮眠をとるらしく、そこはカメラが回らないから同じく睡眠時間を削られた男性マネージャーや撮影スタッフは同じバスで寝るらしい。私は女性スタッフが集まるバスに乗り込む。私は前日の夜の推しのサイン会に参加していたからバッチリメイクのまま出社したが今から仮眠を貰えるということでコンタクトをとってメイクも落とした。
「僕たちは今ソウルから南下して」
すっぴんのままプロモーションお泊まり撮影が始まった。今回は会社のYouTubeではなく音楽番組会社のアプリ上で配信される動画だ。なのでよく知らない撮影スタッフもいるが私はその撮影の裏側を会社のYouTubeにあげる方の撮影スタッフとしてついてきている。
「僕たちすっぴん晒して…」
「何年目だよ、何回もすっぴん撮られてるだろ」
「僕は目がないからぁ」
ドンヨンさんが嘆いてるところにジフンさんがつっこむ。もちろんカメラは回っている。今回は巨大温室プールで遊び尽くすらしく。全然寝てない彼らには可哀想な仕事だと思ったが、
「ほらウォータースライダー!!やば!!」
「あっ、ジェヒョン兄さん走らないで!」
とても楽しそうだ。アイドルというのはほんとうに映像からも人を元気づける。というか生で見ているこちらも正直子供を見ているようだ。子供はエネルギーが余っているがこちらのアイドルたちも全員二十歳を超えているというのにとっても元気だ。子供と違って足元見ないですっ転んだりしないところが安心だ。入隊を控えたメンバーもいるので本当に怪我はしないでほしい。温室プールで遊び終えると先に今日のコテージに行く組と買い物に行く組に分ける。撮影スタッフも分かれて、私はチーム長について行くことになりコテージに行く組になった。しばらくカメラを回した後コテージに着くまでカメラオフ。メンバーたちには束の間の休憩だ。
「軽くメイクしますか?もうプールとか入りませんよね?」
目がないと嘆いていたドンヨンさんがチーム長に聞く。
「繋ぎがおかしいから今日の寝るところまではすっぴんよ」
「うわぁん…。ほんとに目がないのに…」
「目がないっていうのは私のすっぴん見てから言ってください」
ドンヨンさんよりも私の方が明らかに目がない。
「あるよ!それに君はカメラに映らないから、全世界にすっぴん晒さないじゃん」
「確かに、私のvlogは全てメイク後からですね」
今回は自分のvlogは撮れないしね。ドンヨンさんはえーんと泣き真似をしながら最年少のチンフィさんにむくみ取りマッサージをしてもらっている。ソウタさんはアイマスクをして爆睡。それはそう、みんな寝るべき。
「ヤ!ドンヨン兄さんだけなんでメイクしてるの!」
メイクさんは同乗していなかったが、チーム長と私のメイク道具でもいいからメイクしたいと駄々こねるドンヨンさんのためにvlogのネタにもなるしとカメラを回してメイクした。ソウタさんに突っ込まれてドンヨンさんがへへと笑っている。編集ではきっと、※本人の強い希望で一人だけメイクしました。と注意書きされているだろう。
鉛のように重たい身体を引きずりながら社屋を出ようとすると、同じ、いや私よりの過酷なスケジュールをやりきったドンヨンさんが後ろから軽快な声で
「やっと帰れるね〜」
と声をかけてきた。その隣のソウタさんはほぼ寝ているというのに元気なもんだな。
「はい、私はこれから次の出社ギリギリまで寝ます。スケジュール変更の連絡きても気づかないかもしれない…」
お風呂入れるかな、もう玄関の床で寝そうだ。これこそ限界社畜vlogとしては完璧だけど、カメラ回す余裕もない。
「ソウタもう動けないから、会社すぐ目の前の僕の家で寝るけど来る?」
「私も1人の女性なので、遠慮します。外はファンがいるので、その写真撮られますよ」
「僕たちの同じ家への帰宅何回も撮られて、付き合ってると思われてるからね」
何事もないようにいうけど、それって家の前にもファンいて写真撮られてるってことだよね。アイドルってプライバシーないな。
「会社の仮眠室嫌になったら僕の家来てもいいよ」
「ファンに撮られたら大炎上ですよ。私インフルエンサーだし、これでも」
「家は一個じゃないよ。ま、冗談だけど、気をつけて帰ってね」
本当に目の前に家があるのだろう、車にも乗らずに歩き出した。隣のソウタさんは力なさげに手を振って引きずられていった。その他メンバーも高級車を運転手に運転してもらい帰っていくところにチンフィさんの車が目の前で止まった。
「方向一緒でしょ、通勤ラッシュの時間にそのボロボロの体で地下鉄乗りたくないでしょ。乗って行きなよ」
……この中国人、優しい。同じ歳だし。
「乗ったらファンに晒し上げられたりしませんか」
怯えながら聞くと、
「大丈夫でしょ。何回かスタッフ送ってるし」
早く乗りな、と言われ私の徹夜明けの頭は楽な方を取りました。チンフィさんの運転手に住所を伝える。フードデリバリーの配達範囲が一緒って盛り上がったけどまさか覚えているとは、有り難き。外車大きくて乗り心地良い。私の収入だと買えない。素晴らしい車。チンフィさんと話すことなくそのまま意識が落ちた。
家の前につき、お礼を言いながら車から降りる。
「じゃ、数時間後に」
「十数時間後です!!そんなすぐに出勤したら死にます!」
「繁忙期は数時間後で、みんなドンヨン兄さんの家にしか帰れないからね。自分の家での睡眠を大事に」
ドンヨンさんの家本当にみんなの寝るところになってるのか。チンフィさんに手を振って、車が見えなくなってから家に入る。やはり、私はダメな人間でした。起きたらお風呂に入ります。そう心の中で唱えて服だけ着替えてベッドに入った。
起きると夕方だった、出勤までは時間があるなと思いながら通知を見ているとドンヨンさんから連絡がきていた。
「チンフィに送ってもらったの?」
「明日もチンフィに送ってもらったほうがいいよ。明日も昼まで帰れないだろうから」
明日というかまだ今日帰って今日出勤するのですが、普通の夜勤は朝には帰れるだろうにこのエンタメ業界め。昼までは拘束確定スケジュールか。とりあえずドンヨンさんに返事をして、カメラを回し、社畜vlogの素材をとることにした。
カムバック前の準備期間に入った。連日会議を重ねており、こちらは深夜3時の会議に出席してすでに疲労困憊である。会議にアイドルも参加するためにカメラを回しに私も参加したのだ。あんな時間に人々がクソ真面目にメンバーにバラが似合うかカーネーションが似合うかを言い合うなんて、オタクはどちらでも喜びますよと思いながらも私もついでにバラ派に挙手しておいた。ジェヒョンさんが特にバラが似合う男な気がするから。センターが似合うものこそがそのグループに似合うものだと思う。だけど今回のカムバックは、陸軍軍楽隊にジフンさんの入隊が決まって完全体での最後のカムバックになるということでジフンさんを前に押す構成にするようで、会議はまた持ち越しとなった。
「ドンヨンさんもそろそろ発表ですよね」
「僕は軍楽隊の規定年齢超えちゃったから、陸軍だろうけど陸軍に入隊するならまだ余裕があるから」
ギリギリまで完全体での活動を優先したドンヨンさんはすでに歌手として軍に入る方法としての軍楽隊への入隊年齢を超えてしまった。入隊時期もなるべく早く完全体で活動するために調整しなければいけない。
「明日明後日も会議だね」
「私は今から動画編集です…」
「あ、帰れないんだ。大変。まぁ僕たちも今から、収録だけどね」
…もう朝日が見えてきた、私はいつ帰れるのかわからないが、彼らも収録が終わるまで帰れないんだろうと思ったら、動画編集の途中で呼び出された。
「ちょっと今からジェヒョンが番組収録あるから、カメラ回してついて行ってくれる?」
「え、」
「他のグループが出る予定だったんだけど、北米ツアーでLAからの便が遅延して間に合わないのよ。ジェヒョンが先に収録終わったから、ジェヒョンに出てもらうことにしたのよ」
「わ、かりました」
動画編集も終わってないのに、え〜〜んと泣きそうになりながら、カメラを持ってジェヒョンさんと同じ車に乗り込む。ジェヒョンさんは台本のチェックをしている。イケメンは、徹夜明けも素敵な顔してるな。
「メイク終わらせてるから、好きに回してくれていいよ」
「あ、はい。じゃあ、回しちゃいますね」
カメラをつけると
「俺は今急遽北米ツアーでLAからの飛行機が飛ばなくて帰ってこれない可愛い後輩の代わりに番組に参加します〜」
なんて言いながら笑っている。それなりに取れ高になりそうな素材をとってカメラをオフにする。
「この仕事慣れた?」
「いや、ここまで不規則だとは思ってなくてちょっとしんどいところはあります」
「慣れるよ。俺たちの動画の再生回数も上がってるし、編集の言葉を選んで編集してくれてる、ありがとう」
「いや、私が日本人だから教科書みたいな堅い韓国語のボキャブラリーしかないだけですよ」
「まずそうな会話は切ってくれてるじゃん。ドンヨン兄さんが君にばっかり構うからドンヨン兄さんの尺ほとんどない」
「スタッフとはいえ女性らしき人との絡みは見たくないでしょうから。そのうち動画でのドンヨンさんの尺の少なさで怒られそう」
「カメラ回ってる時は我慢してって言っとくよ」
ドンヨンさんはスタッフともメンバーとも同じように絡むのが好きな人だから、過去のvlogを見ても前任者と仲良く話してるのが映ったりしている。しかし、前任者は男性、私は女性。映さないほうがいいものもある。
収録が終わりまた一緒に車に乗り込む。その姿をジェヒョンさんのファンがカメラに収めているので、なるべく社員だとわかる社員証を見えるようにする。
「ファンのカメラが向いてる時、気を張りすぎじゃない?」
「私もアイドルオタクなので、女性社員と仲良くて炎上した事例は何個も見てますので」
あなたたちが大賞を受賞するようになった頃に親しげにしていたメイクさんがものすごく叩かれていて怖かったことを思い出す。勤務していたメイクショップもバレていたし、今はBLACKSHINEについていないところからも影響を感じる。
「でもさ、アイドル側が君のことを好きで近づいたら意味ないよね?」
「…冗談がすぎますね。あなたたち、あんなに綺麗な女性アイドルたちを見るのに、このくたびれた会社員がよく見えることがあるんですか?」
「あるよ、俺の元カノもやめたけど衣装スタッフだったし」
「……とんでもない暴露やめてください。私の口が軽かったらどうするんですか??」
「もうデビューして7年だよ、俺たちはもう好きにしていい世代だよ」
衣装スタッフと付き合っていたなんて話は聞いたことがない。怖い、そんなこと何処かで口滑らせたらオタクに袋叩きにされる。7年契約が基本の韓国芸能界。彼らは兵役を前に契約更新を迎える。今だにKPOP界の帝王として、誰にもその玉座を譲らない彼ら。まだ契約更新のお知らせはないが、プロデュースチームは兵役後まで全員がいると踏んで計画やプロモーションを考えている。
「オタクとしては、あまりお揃いのタトゥーとか、相手の噂があまりにも酷いとかじゃなければ、三十を目前にした推しが恋人を作っても文句はいいません…」
「オタク側の意見」
「会社の人間としては、頼むからプロモ期間は大人しくして欲しいとは思ってると思います」
「会社の意見、ね。もしさ、アイドルに言い寄られたらどうするの?」
「私思うんですけど、BLACKSHINEって恋バナ好きなメンバー多いですよね?」
ドンヨンさんといい、ジェヒョンさんといい、
「あ、恋愛中ですか?聞かないんで話題変えましょう」
「いや、今彼女いないし」
生粋の恋バナ好きということ?もしかしてこの人たち、カメラ回らなかったらずっと恋バナしてるタイプ?女の子?そんなことを思っていると車はジェヒョンさんの家についた。
「じゃ、仮眠取ったらまた出社するから、お疲れ様」
「お疲れ様です」
私は会社に戻って動画編集と言いたいところだが睡魔が限界なので会社の仮眠室に向かうことにした。昼の12時、仮眠室満室。クソが、と思いながらシャワーを浴びて、使われてない練習室に入る。仮眠中、使用する際は声掛けくださいと張り紙をする。2時間は寝たいな、と思い中にあるソファに乗る。スケジュール上はこの部屋は使われないはずだ。もう限界だ。寝る。
アラームの音が鳴る。モゾモゾと動きながらも自分の身体がバキバキなのを感じる。自分の家じゃないな。私の家は睡眠を大事にしたキングサイズのベッドなのだから。目を開けると、人が視界に入り飛び起きる。
「あ、ごめん。驚かせた?」
「とっても…」
ドンヨンさんだった。ドンヨンさんはポリポリと頭をかきながら
「鍵、かけないと社内でも危ないよ。現に男の俺がここに入れちゃってるし」
「……忘れてました」
「心配で中にいたんだけど、俺がいる状態で鍵したら逆に変だから…」
「忙しいのに、変なことに気を使わせてすみません。ドンヨンさんも寝れてないですよね?」
我が社の大事なアイドルに何させてるんだ私。いつも練習室使う時はレッスンの撮影だから人の出入りもあるし、かぎをしめるという考えが頭から飛んでいた。
「いや、ちょっと寝てたよ。そろそろまた会議だよね」
ドンヨンさんに促されて、会議に向かう。悪いことをしたなと思いながら会議室に向かうと、爽やかな笑顔のチンフィさんに会う。
「チンフィめっちゃ機嫌良いじゃん」
「彼女が中国からこっちに今日来てて」
「なるほどね」
……中国に彼女いたんだ。しかもしれっと話し出した。
「この話私聞いちゃって良いんですか」
「いいよね、喋ったら誰かなんてすぐわかるし。彼女のこと知ってるのメンバーとチーム長と君くらい」
「じゃあ聞いちゃダメじゃないですか!」
「まぁまぁ、てか今来ても忙しいから時間ないじゃん」
「忙しすぎてしんどくなってきたんで呼んだんですよ」
「顔が見たかったんだな」
アイドルも心の拠り所って大事だよなぁ。あのキラキラを支えてくれる存在だと思うと恋人にも感謝…いや、これ男性アイドル推してる女性の立場ならそんな簡単に納得は出来ないよな。私は女性アイドルすきだから、ステージでより輝くなら恋人どんと来い!だけど。複雑な顔をする私に
「好きな人の顔見て頑張ろうって思う気持ちはよく知ってるんじゃない?」
ドンヨンさんはそう言って私のスマホの画面をトントンとする。そこに映るの多額のお金を注ぎ込んで勝ち取った推しとのツーショットだ。家宝といっても過言ではない。友達のように手を振ってくれて一緒にハートを作って撮ったこのツーショット、いつ見ても愛おしい。
「はい、私は今日の昼はオンラインサイン会なので」
「わぁ、あのアルバムまだサイン会やってたの」
「女性アイドルも働かせすぎだね」
発売から3ヶ月以上経ったアルバム、そろそろサイン会なんて終わる頃だが、次のコンサートの話も聞かないので繋ぎとしてサイン会がまだ開催される。いっそのこと休暇にして欲しいが、やるなら払うし行く。オタクというのは結局は自分のためであり、わがままだ。
深夜の会議が終わり、動画を編集する。終わらない。終わらないけど、明日は休みをもらっている。終わらせて今日アップロードしてしまいたい。
「死ぬ、このままだと死ぬ。ブサイクな顔で推しに会いたくない」
オフィスに1人、この言葉の意味は仕事が終わらずに化粧もできずオンラインサイン会なんてしたら後悔で死んでしまうという意味だが
「死んじゃダメデショ!」
日本語で言ったため、なぜか近くにいたドンヨンさんを驚かせたようだ。
「え、なんで帰ってないんですか!今日は会議で解散でしたよね?」
「あんまり思い詰めた顔でオフィス行くから」
ドンヨンさんの手には、ホットのカフェラテとアイスアメリカーノ。
「一息ついてもらおうと思って」
「ドンヨンさんみんなにそんな気を遣ってるんですか?」
気を遣いすぎて疲れますよ、という意味だったのだが、ドンヨンさんは目をパチクリさせると
「君が気になるって言ったら、どうする?」
……怖いことを聞いてきた。
「私は会社の人間、あなたは所属アイドル。気をつけてください」
「何を?そんなことで僕が引くと思う?」
…ドンヨンさん、すっぴんは自信ないって言ってたのに、全然自信満々に近づいてくるじゃん。同じようにほぼ寝ずに仕事してるのに、綺麗な肌だな…、いや近い。
鼻と鼻が当たる距離。何これ、屈まれて近づいてくる顔はさすがアイドル、端正な顔。
「顔、真っ赤だよ」
「っ、からかわないでください!」
「キスしてもいいの?喜んでするけど」
「だ、ダメです!私、仕事中なんです!私で遊ばないで」
ドンヨンさんの肩を押すと、逆にその腕を掴まれた。
「本気だよ、ただ合意がないことはしたくないだけ」
私は寝不足で変な幻覚でも見てるのだろうか。すごく綺麗な顔がその目が私を見ている。私は女性アイドルのオタクだ、自分のプライベートの全ての時間を推しに使う。それは今までずっとそうで、同じ歳の女の子が恋愛をしている時もわたしはずっと…
「お金もあるし、ソウルに家あるし、次男だし、好条件だと思うんだけど」
韓国でよく聞く結婚条件じゃないか。何をそんな切々と話しているの。あなたは誰もが好きになるアイドルで、そんな風に、
「今すぐに返事を出さないで、そういう風に僕のこと見たことないのは分かってるから、今から考えて」
忙しい時に止まらなくてごめんねと言うと、カフェラテを私のデスクにおいてドンヨンさんはオフィスを出た。
メイクサロンで動画を回しながらメイクされる。会社のvlogをなんとか編集し終えて、チーム長のチェックへ提出した。差し戻しされないといいな。
「肌がとても疲れてるわね」
いつものサロンなので遠慮がない。そして私もその肌の状態はわかっている。本当にありえないお疲れ具合なのだ。よくこの顔を見て好きなんて…と思い出したら顔が赤くなってきた。
「何?急に真っ赤になって、なんかあったの?」
動画を回している以上余計な話はできない。動画を切って話しても、アイドルもメイクしたりするサロンだ、誰にバレるかわからない。
「なにもないです〜、今日はオンラインサイン会なので濃い目にお願いします」
そしてオンラインサイン会。いつも通り何を話すかは決めていなかったが、口はこう動いた。
「会社の先輩に告白された」
私がそう言うと推しはパァッと目を輝かせた。
「えっー!どうするの?カッコいい?」
「10人いたら10人かっこいって言うと思うけど、そういう風に考えたことなくて」
推しはその間もニヤニヤと笑っている。可愛すぎる。その表情は初めてだ。
「私ね、思うんだ。嫌い!とか苦手じゃなかったら、付き合ってみるのもアリだなって」
……絶対恋愛経験あるアドバイスじゃん。そういうと
「次のサイン会までに結果教えて!」
「えっ、次って来月の日本のサイン会?あれ行けなさそうなんだけど!」
「タイもあるよ!オンラインのやつ」
BLACK SHINEのメンバーたちは1週間前くらいしかスケジュール把握してないのにうちの推しはすごいなぁ。どれかでまた恋バナね!と言われて画面が切られる。真っ黒になった画面に映るのは綺麗にメイクされた私。この顔で毎日会ってるならまだしも、すっぴんくたびれ姿の私が好きって、もうマイナスから好きなら怖いものないじゃん。メイクしたまま出社しても良いが、せっかくの半休。また深夜にはダンスの振り入れが始まるためその撮影に出勤しなければならない。寝ます。今が夕方、必ず寝ます。夜に出勤します。さようなら綺麗なメイク、私はお風呂に入ります。
ダンスの振り入れが始まり、音を出したり、声でカウントをとりながら新曲の振り付けがメンバーに伝えられていく。この映像、自分の推しでよく見たなぁ。
「だ〜!そのステップ何?!ゆっくり見せて!!」
チンフィさんが壊れた。確かにその足のステップなんだ。意味がわからない数床をトントントントンしている。その横でダンス得意なソウタさんが難しくなさそうに完璧にステップを決める。
「ここは8カウントじゃなくて、16でダダダダって」
ドンヨンさんがゆっくり足元を見せながら踊る。ほぉ、16カウント。難しいな。2人をアップで映す。チンフィさんの顔が苦悩に歪む。
「みんな〜、ドリンク買ってきたよ〜!」
チーム長が扉を開けて、両手にドリンクショップのドリンクが入った袋を見せる。振り入れ一時休止で、メンバーがチーム長に集まる。その姿もカメラに収める。
「で、これととりあえず先行曲でもう一つか。明日?」
「いや、夕方」
「だぁ、その間何?」
「ヒョンビンのラジオとジェヒョン兄さんのドラマ撮影」
「カムバ前にドラマ撮ってるんですか兄さん」
ジフンさんが驚きながらジェヒョンさんをみると
「登場5話で死ぬから」
キャストのスケジュールの都合で死ぬイケメン役しかやれない多忙アイドル俳優ジェヒョンさん。ドラマ撮影もついて行ったりした。有名な女優見て固まったりしたらジェヒョンさんに笑われた。
何回かに分かれて何度もダンスの練習が組み込まれるカムバック前のスケジュール。この人たち、寝ないし運動してるし、私はそれをとりながら、カムバック後にこの映像を一気出し出来るように編集を進めていく。眠すぎて韓国語出てこないな、なんて思いながら打ち込む。
「みなさん、そういう体力あるところもアイドルとしての素質なんですね。私は今日の編集を終えたら残りの撮影は固定カメラにして帰ることにしました」
許してくれ、明日日本へ行き推しに会わねばならないのだ。今日は早く帰って寝て飛行機に間に合わせなければいけない。
「え、リアさん帰っちゃうの?」
「明日日本でサイン会あって…」
サイン会と聞くと全員があ〜っと納得する。私の狂いオタクぶりは散々私のYouTubeで見たでしょう。最近あげた社畜vlogもとても好評でした。可哀想の声殺到。サイン会の休みをくれる弊社(深夜出勤あり)ありがとう。
「僕たちのファンもこれくらい命削ってるのかな」
ヒョンビンさんちょっと引いてるじゃん。命削ってるのはこの会社のせいだけどな。
「日本も行って帰ってくるんでしょ」
「東京大阪の二日間のサイン会したらその足で帰ってきます」
今度はジフンさんが引いた顔してる。だって日本でやることないし、それより編集しないといけないし。データもち出せないから出社しないといけない。
「みなさんオタクの義理堅さと献身的な気持ちがわかったら今後のサイン会もそれを胸に臨んでください。まぁ、顔見れたらなんでもいいんですけど」
ちなみにあの日からドンヨンさんとはこちらから積極的に距離を置いている。なぜならカムバ前でカメラばかりで何に映り込むかわからないからだ。それに、編集しているとドンヨンさんがどんな目線で自分を見ていたのか分かって恥ずかしくなった。編集が止まるので近寄らないことにしたのだ。
オフィスで編集を終えてやった〜と伸びをするとその伸ばした腕を掴まれた。
「ぎゃっ??!」
後ろを振り向くとドンヨンさんだった。
「ビビらせないでくださいよ」
「最近俺のこと避けてるでしょ」
事実だが、そうストレートに言われると困るなぁ。そう思いながら素直に頷くと
「君に避けらると仕事のやる気が半減する。会えると思って来たらすぐに隅っこに隠れるし、他のメンバーの個人仕事に真っ先に手を挙げてついていくのに、俺のソロアルバムの会議は来てくれなかった」
拗ねてる。アイドルというのは、愛嬌をしろと言われすぎて表情豊かだ。たしかにソロアルバムの会議なんてついて行ったら次の仕事までの間捕まるだろうなと思って別のスタッフにカメラを渡した。
「でも、俺のことなんとも思ってない顔よりも意識して逃げてる方が嬉しい。どう、俺のことアリって思えて来た?」
「か、帰ります!明日は東京なので!!」
顔が近い!なんとも思わなかったその顔が、その目が私を見るとドキドキする。固定カメラの動画を編集していると不意に視線が一箇所に向くドンヨンさんのその先は私だった。
「明日空港まで送ろうか?」
「カムバ前の大事な空き時間は寝てください!」
そう言い捨てて私はオフィスを出た。オフィスを出て地下鉄へ歩く。時間を確認するとどうやら仕事に集中しすぎたようだ、帰ってお風呂入って荷造りしたらもう空港に行かなきゃいけない。眠いのに。パンパンと顔を叩き自分を起こす。推しに会うぞ〜!頑張れ私!
タクシーを飛ばしてもらいながら空港につき、流れるようにチェックイン。KPOPアイドルオタクは空港とは切っても切れない縁がある、この仁川空港なんて特に。出国審査を終えて搭乗口近くのカフェで軽食を食べる。向こうに着くのが昼でそのまま東京の実家に荷物置いたら、タクシーでサイン会の会場へ行く。流れは完璧、飛行機に乗ったら飛行機が飛ぶ前に気を失うように寝た。
「やだ、一年ぶりなのに何走ってるのよ」
「サイン会なの!」
「まだアイドル追いかけて!!」
母親と会うとなぜすぐに怒られるんだろう。まぁ、聞いてる暇はない。化粧を終えてアプリで呼んだタクシーが来たのを確認して玄関を出る。
「夜は家で食べるから!」
「は〜い、気をつけて〜」
私のアイドルオタクぶりにも諦めがついているのだろう。送り出しの言葉は軽い。久しぶりの日本だというのに、やることはサイン会。全くもってどこにいても変わらないオタクだ。
「あーっ、やっぱり来たじゃん!」
推しが嬉しそうな顔してる、最高、心拍数上がって来た。嬉しそうな顔はニヤニヤへと変わって
「で、どうなった?」
「仕事忙しくて進展なし」
「えぇー!!じゃあ次のオンラインサイン会までには!」
「付き合うべきなのかな、まだよくわからないんだよね」
「向こうはなんか言ってこないの?」
これって推しとのサイン会ですよね、カフェで友達と恋バナしてるんじゃないですよね。なんて思いながらも、翌日大阪会場。
「でもさ〜、顔も良くて?稼ぎも悪くないんでしょ?どこに躊躇うの?」
「好きって思ったことないから…」
「気持ちって自覚するのに時間かかるものじゃん?」
「いや、あなた推すって決めるまでのタイムラグ無かったよ??」
「推しと恋愛は違うから!」
アイドルから絶対聞かないと思ったセリフまで出て来た。まぁ、同性だからだろうけど。これ私がレズでガチ恋なら死んでたぞ。まぁ、今のところ私はストレートのようなのでノーダメージ。
「明日もう仕事で韓国帰るの?」
「正確にはこの後夜の便で」
帰って向こうで寝て、明日の朝には出勤だ。推しがまるで私たちみたいなハードスケジュールねと言ってるが、貴方達の裏方と同じなのでそれはそう。こちらはカムバック前の一番忙しい時なので、この休みも奇跡のようなものだ。
編集、撮影、編集、明日には新曲でのカムバック、それのための会議からMVの撮影まで、素材はたくさんある。私以外にも編集している。それでも終わらない。決まった期限があるわけではないが、カムバック活動中に動画を上げなければ数字は取れない。鮮度が命。
「明日からの音楽番組もついていくんだよね」
編集をひと段落させて時計を見る。またしても深夜、仮眠室に行こう。オフィスを出てエレベーターに乗る。頭痛がひどい。寝不足すぎる。仮眠室のある階につきエレベーターを出て数歩あるいたところで眩暈がした。立ち止まり座り込む。自分のVLOGも休みに編集してたから、睡眠不足とパソコンの見過ぎだったんだろうな。
「リアちゃん?」
エレベーターの方からドンヨンさんの声が聞こえる。そしてこちらに走ってくる足音。
「寝不足の眩暈です」
「大丈夫じゃないじゃん、仮眠室も埋まってるし。立てないよね?ちょっと、ごめんね」
抱き抱えられてエレベーターに戻る。あ〜、どこいくんだろう。私、アイドルの女の子と比べたらまあまあ重たいんだけどな。なんてうっすら頭の片隅で考えたのが最後、意識が飛んだ。
目を覚ますと知らない部屋だった、というか知らないお家。このベッドルームだけでも広いな。というかこのベッドクイーンサイズかな、大きい。起きようとすると、カタと扉が開いた。
「あ、起きた?そろそろテレビ局に行かなきゃだから起こそうと思って」
「………」
ここってもしかして、いやもしかしなくてもドンヨンさんのお家ですね?
「会社から2番目に近い家だよ、メンバーが泊まったりするのとは違う方。僕1人で過ごす時の家」
「はぁ」
「だから多分ファンにもバレてないよ」
私、ドンヨンさんに抱えてもらってここに連れて来てもらったもんな。そんなところファンに見られたら一貫の終わりだ。
「家に迎え呼んでもよかったんだけど、カメラとか会社だよね?会社まで送るよ」
「…ご迷惑をおかけしました。まさかあの程度で目眩を起こすとは思わず。助かりました、ありがとうございます」
地下駐車場のドンヨンさんの車に乗り会社まで送ってもらう。本当はドンヨンさんは自宅まで会社の迎えが来るが、私が会社に撮影用のカメラを撮りに行かなくてはいけないのをわかって早く起こして出社してくれるつもりだったようだ。
「本当にありがとうございます、カムバック前にぶっ倒れたらここからの2週間働けないところでした」
「かしこまりすぎ、まぁ座り込んでるの見た時はびっくりしたけど、見つけたのが僕でよかったよ」
2人で車を降りてオフィスへ向かう。撮影用のカメラを確認して、送迎用の車へ向かう。さて、さらに過酷になるカムバック活動の幕開けだ。
「一位おめでと〜!僕たちのファンおめでと〜!!」
音楽番組で一位を取った楽屋、嬉しそうにトロフィーを持つドンヨンさん。それを横にメイクを落とすジフンさんとヒョンビンさん。もうほぼ寝ているソウタさん。お菓子食べてるチンフィさん。ジェヒョンさんはチーム長とお話し中。収録後は疲れているだろうからいつもカメラを回さなかったのだが、今回のカムバックでの初一位だったのでカメラを回した。
「みんながたくさんMVみて、毎日聞いてくれて、CDを買ってくれたから取れたんだよ。明日のサイン会で会おうね〜!」
ドンヨンさんが上手く話してくれてる横で、ありがとーといいながらもチンフィさんのお菓子を食べる手は止まっていない。だが最後には全員集まって、ありがと〜と言ったかと思うと口々に、美味しいもの食べてね、朝晩寒いから暖かく過ごしてね、夜は早くお家に帰るんだよと言い出した、全くアイドルというのはファンに過保護だ。さて、夜の20時。先ほどの部分だけでも編集してインスタに載せておきたい。動画は鮮度が命。
「隣に座らなくていいです」
「どうせ明日も朝から音楽番組なんだから、一緒に帰ろ」
「自宅に帰ります」
動画を編集する私の横でドンヨンさんが肘を突きながら私を見ている。大体一緒に帰るとはなんだ、あなたの家に行ったのは眩暈がしたあの日だけです。
「会社から近いところの方が睡眠時間長く取れるでしょ?」
「なら帰らずに会社で寝るまでです」
なんて会話をしているうちに10分にも満たない短いお祝いの動画が完成した。これをチーム長に送り、夜が明けた頃には投稿されるだろう。ギリギリ終電間に合うな。そう思いながらパソコンの電源を落とし立ち上がると、腕を掴まれる。
「また隈濃くなってる。せめて家まで送らせて」
「方向全然違うじゃないですか。ドンヨンさんこそ早く帰って睡眠時間確保してください」
「やだ」
拗ねた顔をするな。メイク落としてないからアイドル顔の完璧なドンヨンさんだ。
「ね〜、いいでしょ。ほらほら」
痺れを切らしたドンヨンさんは私のカバンを持って、私の肩を抱いて歩き出した。強引すぎる。
「お風呂入らずに寝たくないです」
「会社にお泊まりセット持って来てるでしょ、はい、帰るよ」
ふかふかのベッドはありがたい。しかもこたらのベッド、独り占めして良いらしい。もう来てしまったものはしょうがない。ありがたく睡眠を最高のものにします。
「カムバック期間も残すところ後一つの音楽番組を終えたら終了しますが、お気持ちは?」
「やっぱり楽しいね、これが終わったらアジアツアーするからね。楽しみだね」
カメラの前の彼らは常に生き生きとしている。その姿以外見せたくないならば、バックのカメラもそれしか撮らない。カメラをオフにした瞬間、倒れるように寝ていてもそれはファンには見せない。体力のある男性アイドルですら、カムバック期間後半は辛そうなのに、女性アイドルはもっとキツいんじゃないか。大体カムバックが終わって2.3日グループとしては休みがあるが個人仕事は違う。私はありがたくお休みをいただくが、ツアーのこともあるし、ジフンさんはツアーが終わる前にソロ曲でデビューして、最後ソロでファンミーティングを2日ほどやってから入隊だ。ジフンさんに休みはない。
「では、私はしっかり三連休いただきますので、動画のことで何かあれば、ジュンギさんは出勤してますので」
私と共にBLACKSHINEの動画編集を担当するジュンギさんは今ジフンさんの過密スケジュールに密着しているのでジフンさん同様休みがない。私はインターンのペーペーなので休みをいただきます。
休みというのは素晴らしい、アラームをつけずに寝てもいい。そしてあんなけがむしゃらに働いたおかげで、残業代が素晴らしく口座が潤っている。もとより自分のVLOGの収入もある、この調子でタイのサイトを開き、推しのサイン会の応募のためにCDをありえない数購入する。こうやって稼いだ金は自分に使われずきえていく。とはいえそろそろ肌が可哀想なので、美容皮膚科も予約した。
週末の休みにかぶっていたおかげで普通に会社員として働く大学時代の友達と会うことができた。
「あれ、数ヶ月見ないうちに痩せたね」
「はい…、おかげで今ならこのカフェのスイーツ全部食べれます」
金は自分にも使うべきだと、はい、ホテルのスイーツビュッフェに来ました。
「可哀想に腕も細い。二の腕がこんな、インフルエンサーとしても細すぎる。アイドルみすぎて自分がカリカリなの気づいてないでしょ」
友達はそういうとハイカロリーなものを私の皿に乗せる。体重は測っていないが多分5.6キロは落ちている。心配する気持ちもわかる。
「どう、アイドルと毎日会う生活は?」
「やはり女性アイドルでなければただの人間」
「かぁ〜!あのイケメンたちを目の前に?オッパたちを目の前にして?」
KPOP界の帝王たちを目の前にして私は平気で仕事ができるところ、この仕事が向いているのかもしれない。
「オッパたちの連絡先って手に入るの?」
「残念でした、アイドルの連絡先なんて平社員も貰えないと思う。私、チーム長とマネージャーのしか持ってない」
「厳重セキュリティ、なのに酷いファンにはバレてるの謎ね」
「漏らしてるのケータイ会社でしょ」
まぁ、ドンヨンさんが連絡先教えようとしてきて逃げたけど、他のメンバーはそんなことはない。とはいえ私のSNSは知ってるから緊急時はそれで連絡されることはあるだろう。私もクリエイター用アカウントにしてるから通知来ないけど。
「この後皮膚科のPR撮影だっけ?」
「うん、そのあとはヒョンシクと会う約束してるけど、来るよね?」
ヒョンシクも大学時代の友達、ヒョンシクと呼んでいるが大学を休学して兵役に行っていたので2歳年上だ。本人に会う時はオッパと呼んでいる。
「えっ、行く!」
この友達はヒョンシクが好きで、ヒョンシクもまんざらではなさそうなのにまだ付き合っていない。
皮膚科の撮影が終わり、ヒョンシクに迎えにきてもらう。
「オッパ〜!ありがと〜ん」
とわざと甘えたようなことを言うとヒョンシクは気持ち悪そうにジト目で毎回コチラを見てくるのだが、車に乗る前に外から腕を掴まれた。
「はっ?」
ズルッと、半身車に入っていたのに引っ張り出された。何?アンチかなんか?
「あっ、おい」
ヒョンシクも驚いて手を伸ばすが、届かない。トンと誰かの胸に当たる。
「そいつ、誰?」
ドンヨンさんの声だ。え、なんでここにいるの?てか、めっちゃ声低いんだけど。え?何?色々分からずに黙っていると
「この子、僕のなんですけど、どちら様ですか?」
なんてヒョンシクに聞き出した。うわ〜、マスクしてキャップ被った男のその発言怪しすぎる。ヒョンシクも訝しげな目でコチラを見てる。
「僕と行こう?」
「や、オッパと予定あるから」
「リアちゃん」
なんだか、ここでドンヨンさんのことを振り切ってはいけない気がする。
「オッパ、ユカには説明しとくから、今日はユカと2人でご飯して。ごめん」
車の扉を閉めると、今度は窓が開いた。
「いいんだな?」
「あとで説明する。とりあえず安全!大丈夫!」
ヒョンシクは今日中に連絡入れろよというと車を出した。ドンヨンさんは私の手を掴んだまま、ズンズンと歩き出した。多分この先は地下駐車場だ。車に着くと助手席の扉を開けられたのでおとなしく乗る。ドンヨンさんは運転席に乗ると、はぁと小さくため息を溢した。
「で、誰あれ」
「大学の同期で仲良い友達」
「ふぅん」
仕方ないので、そんなドンヨンさんを無視してユカとヒョンシクに連絡を入れる。ついでに知り合いだから大丈夫という証拠になりそうな車内自撮りも送っておく。
「毎日顔合わせて仕事してる僕たちのことをオッパって呼ばないのにあの人のことはオッパって呼ぶんだ」
「韓国で役所手続きとか困った時に手伝ってもらったり、ご飯いったりする仲だからですよ」
何をそんなに気にしてるんだろう。同僚とはいえ、アイドルとインターンである。気安くアイドルをオッパと呼べるのはファンだけだろう。
「気分が良くならない」
「ちゃんと説明してるじゃないですか!ご飯の予定もキャンセルしてついてきたのに!というか仕事は?」
「今日は肌管理」
行った皮膚科が同じだったのか。タイミングってすごいな。というか後ろ姿で私と気づいて腕を引っ張ったのか。
「好きな子が知らない男の車に乗るの、すごく不愉快」
ストレートすぎる。なんて言えばいいんだ。どう返したら平穏になるんだ。
「リアちゃん、僕と一緒にいるの嫌じゃないでしょ。試してみてよ、僕と付き合うの」
車の中でマスクとキャップをとったその顔は真剣で、そしてやはり綺麗。そして頭の中で甘く囁くのは、推しの嫌いじゃなければ付き合ってみれば良いという言葉。
「こんなに触れても嫌がらないのに、試すのもダメなの?」
その手は私の頬に触れる。確かに、この距離の接触に不快感を覚えたことはない。というか、パーソナルスペースを崩されても嫌だと思わない。
「試してみます」
私がそう答えるとドンヨンさんの表情がパァッと明るくなる。
「わぁ、どうしよう。自分で言ったのに、夢みたいだ」
あんなにも綺麗なアイドルたちをみているのに、私と付き合うことがそんなに嬉しいことなんだろうか。不思議だなと思いながら見ていると、着信が入る。ユカからだ。
「出ていいよ」
言われなくても出るが、通話を押すと
「あんた彼氏なんかいなかったじゃん!!!」
バカデカボイスの日本語である。スピーカーにしていないのに、ドンヨンさんにも聞こえてギョッとしている。
「ほんとに彼氏?やばい人じゃない?まだ一緒にいるならツーショット送って!!」
「あ、や、ツーショットはちょっと」
「はぁ??!」
こんなところで、ドンヨンさんに彼女がいるのがバレるのはいけない。そう思っていると、ドンヨンさんがスマホを取り上げてあろうことかビデオ通話に変え、
「シャシンはとらないでね」
そう言って私の肩を寄せる。画面に2人の顔が映る。
「なっ、BSのドっ、うぇ?!」
「そういうことだから、安心してクダサイ。じゃあね」
そう言うと勝手に通話を切る。大胆すぎる。私がびっくりして何も言えないでいると
「晩御飯、食べに行こうか」
そう言って車を出した。この人は少し浮かれすぎていないか。なぜアイドルに彼女ができるとバレるのかなんとなくわかった気がする。危機感がない。
「アイドルですよね?カムバック終わって、来月にはツアー始まるんですよ?なんであんな」
「もう恋愛禁止期間終わったし、」
個室焼肉に入って問い詰めるとあっけらかんとしている。こちらがまるで心配性みたいだ。
「もういいです、責めないです。はい」
「怒ってても可愛いね」
「あなたは目が悪いので皮膚科ではなく眼科へ行くべきです」
心外そうな顔でこちらを見てきた。事実だ、いくら私がインフルエンサーだろうとアイドルの可愛さや美しさには敵わない。確かに韓国の三大大学を卒業はしたものの、頭が良いとは思わないし、何か推したちに勝るものを見つけたことはない。
「君が気づかないならそれでいいよ、君の可愛いところは僕だけ知ってればいいから」
そう言って焼いた肉を私のお皿に乗せる。韓国人彼氏は世話焼きだとよく聞くが、早速世話焼きが出ているなと思いながらその肉を食べる。アイドル行きつけの焼肉、美味しい。もぐもぐと与えられるだけ食べて締めまでしっかり食べる私とカムバック期間に痩せてしまったはずなのに多くは食べないドンヨンさん。アイドルって大変だなぁ。
家まで送って貰うつもりがドンヨンさんの前にもきた二つ目の家についた。
「着替えないですよ」
「この前置いてったの洗ってあるよ」
…この前着替えたまま置いて行ってしまったのか。
「下着も洗ったんですか?」
「ハウスキーパーさんがね」
よかった、本当によかった。置いて行ったことも忘れていた私、仕事で記憶飛びすぎ。
「明日休みでしょ、いいじゃん。夜更かししてお話でもしようよ」
「ドンヨンさんはツアーの練習ですよね」
「昼からね」
ソファーに座ると私のスマホを手にしたかと思うとそのまま携帯番号とトークアプリのアカウントを追加している。
「僕のね」
貴重なアイドルの連絡先だ。このスマホ落とせない。
「先お風呂入る?」
「えっと、じゃあ先にいただきます」
とはいえこの家はベッドルームが二つあって、ドンヨンさんの部屋の方には浴室、客室の方にはシャワーがある。もちろんシャワーの方を使わせて貰う。頭を洗いながららこの長い髪の毛、乾かすのめんどくさいし明日にでも美容院でショートボブにでもしてもらおうかな。腰までの長さの髪の毛は推しとお揃いの長さだ。まぁ、推しはエクステ私は地毛だけど。
リビングに戻ると同じようにシャワーを終えたドンヨンさんがドライヤーを持って待っていた。スキンケアセットも並んでいる。しっかりと自分がアンバサダーをしているブランドだ。ありがとうございますとドライヤーを受け取ろうとするとやらせてと笑っている。この前は素直に渡してくれたのに、付き合うってこういうことなのか。大人しく背を向けるとドライヤーの音がする。髪にこだわりはないので好きにしてくれと思っていると、アイドルはやはり美しく保つことに細かいようで、今度はメンバーがイメージモデルをしているヘアミルクを塗ってくれる。ありがたい。これならロングヘアのままでもいいかもしれない。そうこうして髪が乾くと、今度はリビングから焼酎を持ってきた。
「何の話からする?」
「じゃあ、なんで私を好きなのか、からですかね」
不思議だから、何度も言うが男性アイドルは音楽番組で女性アイドルと会うし、バラエティー番組で女優とも会う、韓国だけじゃなくて、日本人が好きだとしても日本でも同じように出会える。その中で、美しさが売りでもない、限界アイドルオタク兼社畜のVLOGインフルエンサーなんて、ハッキリ言って何がいいかわからない。私が男ならそのポジションを優位に使い、推しを口説きに行く。必ず。
「君のVLOG見たことあるって言ってたけど、本当は全部見てる。アイドルのために韓国で進学して、生活も辛いのにアイドルに会うために泣いて、なのにアイドルにあったら嬉しそうに笑って」
全部お金に変えないとと、辛いことも嬉しいことも全部VLOGにしていた。今はもう少し節度があるけど、韓国に来てすぐの時はお金もなくて必死だった。
「そんな子に愛されてるアイドルが羨ましかった。君が僕のことを好きになったりしたら、どんな顔をしてくれるんだろうと思ったら、止まらなくて君のSNSは全部見てて、これが推しってことかと思ってたんだけど」
私が、ドンヨンさんの所属事務所に入社して、いいのか悪いのかドンヨンさんのグループ担当になった。
「そしたら、君が近くにいるのが嬉しくて、ボロボロになりながらまたサイン会行く姿には頑張れ〜って思っただけなのに、だんだん疲れていく姿見たら僕がお世話してあげたいって思ったんだ」
あまりにもくたびれてて可哀想だったのでは、チンフィさんなんか家まで送ってくれたし、やはり若い女の子がボロボロの姿はしんどく感じただけなのでは。
「それに、君と一番仲良しは僕がいいと思ったし、君が頼る先が僕だったらいいなって思った。それに、君が甘える先も僕であってほしい」
あまりにも情熱的でストレートな言葉に恥ずかしくなって、焼酎を注いでそのまま一気する。そんな私を見て笑いながら、同じように焼酎を飲む。注いでまた飲む。
そして飲み過ぎた。昼前にドンヨンさんがセットしたアラームがなり、2人でリビングで飛び起きた。
「やっば、時間ない。シャワー浴びたらもう行くね!」
「はい!あ、お酒残ってるからタクシーで!」
「シャワー浴びてるから呼んでもらってもいい?」
スマホを渡されてドンヨンさんのスマホでタクシーを呼ぶ。だいぶお酒くさいけど、シャワーと歯磨きで何とかなるかなぁ。シャワーから出てきたドンヨンさんは
「この家どの部屋入っても大丈夫だから。玄関のパスワードはデビュー日ね!」
スマホを持つと急足で家を出て行った。慌ただしいのが去るとやはり眠くなってきた。仕方ないのでリビングの空き瓶を片付けてから以前も使わせてもらった客室のベッドに入る。
昼過ぎにお腹が空いて起きた。とはいえさすがに人様の冷蔵庫は漁れない。ウォーターサーバーのお水を飲み、とりあえず帰ることにした。今回は着替えた服も忘れずに回収して、帰ったら自分の動画の編集しなきゃいけない。
自宅に帰り荷物を置き、外に出る。とりあえず、なんかお腹いっぱい食べたい。キンパ屋さんに入りキンパとトッポギを頼んで、韓国で暮らすことにも慣れて、言われてみたら和食定食が食べたいって泣いてとった動画あったなぁ。今思えば今よりもあの時の方が、推しの日本活動多くて日本に帰ってたのにお金なくてコンビニ飯食べてた。なんなら一日一食とか。そりゃ追い詰められたみたいに泣くよなぁ。そう思うと、仕事で詰まってても泣かない今って大人になったのかもしれない。家に帰り動画を編集しながらふんふんと自分の成長に浸る。そうこうしているとスマホが鳴った。画面にはドンヨンの文字。
「もしもし」
「なんで帰っちゃうの〜!!」
この人もう深夜23時だと言うのに、昼から仕事してまだこの元気。今日ツアー用のダンスブレイクの振り入れだったはずなのに、アイドルの体力ってすごいな。
「動画の編集は自分の家でやるもんですから」
「着替えくらい置いて行ってよ、もう来ないつもりなの?」
「またハウスキーパーさんに洗われたら恥ずかしいので」
独身の男の家に女の服と下着が洗濯出されたら嫌でも勘繰るだろう。ドンヨンさんが洗わなかっただけマシだけど普通に恥ずかしい。
「明日は何時からなの」
「昼から出勤ですよ」
「一緒じゃん、迎えに行くよ」
「逆方向なんでいいです、1秒でも長く寝てください」
アイドルは万年睡眠不足だ。寝ないでジム行ったりするくらい寝ない。絶対に体に悪い。アイドルに伝える言葉は毎度健康でいて、1秒でも長く寝て、頼むから健康でいて。
「はいはい、じゃあ明日会社で」
「はい、おやすみなさい」
「おやすみ、愛してるよ」
私の返事なんて期待していなかったのだろう、そのまま通話が切れた。いや、韓国なら友達でもふざけて言うし、付き合ってるならその言葉を言うのは普通なんだけど、構えてなかったから衝撃がすごい。
アイドルは多忙である、そしてそのスケジュールを共にこなすスタッフも多忙である。繁忙期にはパンパンに太るかガリガリに痩せるか、家に帰らないか、寝ずに家に帰るか、明日にはツアー初日、そしてそろそろジフンさんの入隊公示が出る。ファンも忙しいだろう、こちらも忙しい。推しのタイのオンラインサイン会、ついにドンヨンさんの家でやった。家に帰る時間なくて、でも会社でやりたくなくて、
「あれ〜いつもとお部屋違うじゃん」
なんて聞いてくる推しに、小さな声で
「彼氏の家です…、会社から近くて、繁忙期でこの後また出社…」
って言ったらめちゃくちゃ叫んでた。怖い。可愛いけど。マネージャーにシーっ!!ってされてたし。
「どう?付き合って?」
「繁忙期で忙しくて特に同僚の時と変わりなく」
「はぁ?!嘘つかないで!そいつはほんとに男?男気ないわね!」
本当になにもないのだ、キスすらしてない。忙しくて時が一瞬ですぎる中大事な時間をこのオンラインサイン会に当てています。
「リリーさんってファンとのサイン会そんな感じなんだね」
……私はまだ推しと話してますが、後ろにいるのはどう考えても
「リア、私が見えてるのって」
「どうも、BLACKSHINEのドンヨンです」
そのタイミングでサイン会終了のタイマーがなる。
「私はおしゃべりじゃないからね」
推しはそう言い残して、画面が暗くなった。この人は、危機感がない。同業に彼女バラすアホがいるのか。
「なんで!」
「まずはおかりなさいでしょ」
「いや、なんでこっちの家帰ってきたんですか!」
「家かしてって言うから見にきた」
まぁ、かしてしか言わなかったから見にきたのは間違ってないか。
「この後また出社でしょ、3時間は間あるよ。寝よ」
椅子に座っていた私を抱き上げるとそのまま自分の寝室へ行く。私をベッドに下ろすと
「ははっ、睡眠不足なのにサイン会して頭痛いでしょ。眠そう」
ない時間を作り出すのに有効なのは睡眠時間を削ること。布団をかけられてトントンされると睡魔に勝てなくなりそのまま目を閉じた。
アラームの音に起きる、ドンヨンさんはまだアラームの音が届いていないのか目を閉じている。
「ドンヨンさん、起きて〜。次はあなたのソロアルバムの会議ですよ〜」
肩を揺すっても起きないので、ペチペチと頬を叩くとんん〜って唸りながら起きた。
「メイクしてる、可愛いね」
「メイクしたまま寝たので寝具にリップついてます」
「洗ってもらうよう伝えとくね」
そういって起き上がると腕を引いてきた。バランスを崩して前のめりになると、両手で私の顔を挟んだ。
「なんですか」
「キスしてもいい?」
慌てて距離を取ろうとすると逆に頭に手を回されて引き寄せられた。完全にバランスを崩して、ドンヨンさんに覆いかかる。
「顔真っ赤、メイクサロンの厚塗りメイクなのに」
「揶揄わないでください、遅刻しますよ」
ファンデ厚塗りメイクなのに、顔はそのファンデがないみたいに真っ赤だ。起きあがろうとしたら頭から寄せられて唇が重なった。
「おはよう」
全然夜だけど、というかそんなことは問題ではなくて、信じられずにアワアワしているとドンヨンさんはクスリと笑って起きた。
「車で行こう」
時間もないのでリビングに置いていた鞄を持って慌てて一緒に出る。会社についてカフェでアイスアメリカーノをテイクアウトして会議室へ向かう。ソロアルバムが出るのはまだ先だけど、準備には長い時間がかかる。今日は曲の選定だ。これが終われば、年末の大賞のためのイベント用のダンスブレイクの振り入れのレッスン。その後はジェヒョンさんのドラマ撮影に同行。またも眠れないが、その睡魔を打ち消すようにアイスアメリカーノを飲む。
とってもテンションの低いジェヒョンさん、撮影を始めていいのか顔色を窺っていると、
「ドンヨン兄さんが浮かれすぎてる」
聞きたくない話を振ってきた。そして私をしっかりと見てくる。
「ツアーが年末から始まって、年末の授賞式もあって、春を迎える前にツアーが終わればジフンのソロとソロツアー、入隊。こんなけ忙しいのに、何?あの浮かれ具合」
仕事は真面目にやってると思うんだけどな。特にミスもないし。
「いつもこの時期ピリピリしてるのに、ふわっふわしてる逆に怖い」
年末は大賞を手にして王座は誰にも渡さないという帝王らしさが一番発揮されるところ。来年からはジフンさんの兵役を皮切りに3年ほどはグループ活動が止まる。兵役前最後のグループ活動。
「あんまり兄さんのこと甘やかさないで」
「私が原因みたいに言わないでくださいよ」
結局カメラも回せずに到着、仕方ないので現場入りからカメラを回す。今日は第5話、死ぬところを撮りジェヒョンさんはクランクアップの予定だ。
無事にクランクアップを迎えて車に乗る。カメラをある程度回した後切る。
「この後はコンサートの通し練習ですよね」
「君は固定カメラにして退勤だっけ」
「編集あるんで会社にはいますよ」
「じゃあさ、後でこっそり練習室に来て。ドンヨン兄さんにバレないように」
何を言ってるのわからないが、お願い!と言われてとりあえず困ることでもないので頷く。オフィスのデスクにいるとドンヨンさんに見つかるとおもいフリーアドレスのデスクのある階に行きとりあえず編集をする。2時間くらい編集したところで、練習室に向かうことにする。服を着替えてキャップを被り、そろ〜っと練習室にはいる。
「止めて、チンフィ位置が違う」
「あ、ごめんなさい」
「俺たちの完全体ツアーこれが終わったら三年はないんだ。ちゃんと頭に入れて」
また曲が流れて通しが始まる。何かおかしいところがあると、ドンヨンさんがすぐに気づいて止める。
「ソウタ、眠そうな顔してやるなら顔洗ってこい」
「すみません、洗ってきます」
ソウタさんがそう返事したことで練習が止まる。すごい、スパルタだ。私が撮影入ってる時にこうなった姿は見たことがない。見せたくない姿だったのかもしれない。驚きながらもファンにも見せてない姿だし、編集で切り取るところ多いなぁと思っているとジェヒョンさんがこちらにきた。
「アレが本来の練習中の姿ね。怖いでしょ」
「緊張感ありますね」
なんて話しているとこちらをジロリと見る目。小休憩に何してんだ?と言った目だったが私に気づくと
「えっ、帰ったんじゃないの?」
と言いながら小走りでこちらに来た。先ほどのピリピリした雰囲気はどこにもない。
「編集がひと段落ついたんで様子見に来たんです。もう帰りますよ」
「え〜、じゃあうちで待っててよ」
「明日は夜の会議まで私は空きなんで自宅に帰ります」
さっきまでピリピリしていた人とは思えない甘えっ子ぶりっ子でえ〜と言っている。あまりの豹変ぶりに示しがつかない。
「じゃ、通し練習頑張ってください」
メンバーに挨拶をして退勤する。もうすぐツアーだ。アジアを一緒に回るためにもパッキングもしなければ、ツアーに入ってしまえば個人の仕事も減るため意外と仕事は少ない。
ツアーが始まった、初日は流石にピリピリしていたが2日目からリハもリラックスしてきた。こういった明るいところ以外はファンに見られたくないグループなので撮りやすくなった。ツアーは3ヶ月で周り切るため短期集中。彼らに残されたグループ活動の時間が少ないことを示してるとも言える。3日目の日曜日公演を終えるとスタッフたちはすぐに日本の東京公演の準備に移る。その間は2週間。メンバーたちは各々兵役前に兵役中にリリースするためのものを撮影したり収録したりしているが、そのほかの仕事が少ない分気が楽だ。直接公演をして自分たちのファンに会えた喜びも彼らを生き生きとさせている。ソウタさんはコンサートが大好きだと聞いていたが見違えるほどウキウキと過ごしている。睡魔に負けてメンバーに抱っこされながら帰ったりするのは変わらないが。編集作業にも慣れてきて私もちゃんとお家に帰れるようになった。
「ありがとう、明日はオフですよね。ゆっくり寝てください」
「リアちゃんは出社だよね」
「はい、ソウタさんの日本ソロ活動の会議です」
日本人というのは日本での労働が簡単だ。それはソウタさんもだが私も同じこと。というわけで、兵役でしばらくグループ活動がなくなるとソロ活動に移るがその中でもソウタさんの日本ソロ活動についていくのが最適解だと会社は思ったようだ。日本に出張で帰れるならありがたい。
「その後は?」
「一旦オフですね、会議のvlogも撮れるのと撮れないのがあるので、そろそろみなさんのソロはカメラ入れないですね」
金額やら規模やらコネクションやらが出てくると全てピー音になるのでそんなものは撮っても意味がない。というか、兵役を前にする男性アイドルってこんなにもファンのためにあれこれ用意してたんだなぁ。
「じゃあ明日の夜は迎えにいくからご飯行こうよ」
「いいですね」
会議が終わったら連絡すると言って車を降りようとすると、
「リアちゃん」
そう呼ばれて顔を上げるとキスをされた。びっくりして目を開けていると
「おやすみ、愛してるよ」
ドンヨンさんは石橋を叩いて渡る人だと思っていたけど、意外と大胆でちょっと短気。化粧をしていないこの顔も彼には可愛く写っているんだろう、愛おしそうに見つめられる。私はずっとこの人のペースに委ねているというより翻弄されている。
「おやすみ、なさい」
ひらひらと手を振るその顔は満足そうに笑っている。嫌いでなければ付き合ってみるのもありと言った推し、正解だったかもしれない。ドンヨンさんにされることで不快になったりすることはなく、ソウルで車も買えない私を送り迎えしたり帰れないほど疲弊すれば抱えて連れて帰ってくれる。少なくともここまで献身的に…アイドルにお世話されてていいのか?と不安になるが韓国での男性が年上の場合の恋人はこんなものだとドンヨンさんが言っていた。事実かは不明。
「日本のソロ活動全部一緒にいてくれるんでしょ?まじ心強い」
「私撮影しかしませんよ」
「ご飯も行こうよ!ラーメンとかさ」
「ソウタさん出身どこでしたっけ」
「千葉だよ」
「え、近い。私東京ですよ〜」
日本人というのは海外で会うと日本トークに花を咲かせる。千葉と東京、これはもう絶対に渋谷で遊んだことのある人間たちなのだから、ご飯屋さんも知ってるところ多いかもしれない。
「2人とも仲良くしすぎ」
地下駐車場で話していると見慣れた車の運転席の窓が開いていて、
「あっ、ドンヨン兄さんいいところに!俺も送ってって〜」
「ソウタの車そこにあるだろ」
「バレた、てか今日オフでしょ?あ、デートか」
「そうだよ、ソウタは1人寂しく帰って」
いつもは眠そうなソウタさんに肩貸して家まで連れて帰ってるドンヨンさんとは思えない発言だが、ソウタさんが
「デートできる時間なんか限られてるからね、俺は帰ります。独り身は寂しく、家に帰ります」
ソウタさん本当に彼女いないんだなと思いなら、別れてドンヨンさんの車に乗る。
「ソウタとは日本語で会話するんだね、僕と話す時は完全に韓国語なのに」
「意思が伝わりやすい言語を選んでるだけですよ」
「僕だって日本語はそれなりに得意なのにな」
ドンヨンさんは日本語を頭駆け巡らせて話すけど、私はもう韓国語の会話に慣れている。疲れることも困ることも少ない。ドンヨンさんがテレビ番組で仲良くなったシェフのレストランに行く。はい、もう私が払いますとは言えない価格帯。個室だから服装は気にしなくていいって言われたけど多分それはあなたがVIPだからであって、個室じゃないフロアは綺麗な服装の人ばっかりだ。
「シェフはイタリアンなんだけどさ、この前うちでパスタ食べたよね。あれもシェフがレシピ送ってくれたやつ」
「あ〜、だからよくわからない調味料が何個かあったんですね」
韓国に来てから自炊をしたのは数回。基本的な調味料以外はわからない。そんな私の発言に自炊というかシェフにレシピを聞くような男ドンヨンさんは鼻で笑った。
「あ、態度悪い」
「可愛いなって思っただけだよ。どこまでも僕がやるから出来なくていいし」
だがここまで何もかもドンヨンさんに世話を焼かれるのはまずいと思いまして、私vlogの枠を超えて、目指せそれなりのご飯レシピ見ずに作れる人という料理挑戦をすることにした。
「ご飯は炊けたのに、キムチチゲが薄い…」
夜勤明けにドンヨンさんが仕事でいないお家のキッチンを借りて作ってみたものの、舌もバカなもので何の調味料が足りないのかわからない。すでに心はもうキッチンはドンヨンさんに任せるべきと折れている。動画は没だ。食べる気力も失せ蓋をして寝ることにした。
アラームもなしに朝の陽が入り起きる。今日は夕方の便で日本へコンサートのために渡航する日だ。荷物はすでに会社にあり、パスポートを持って出社すれば良い。まだ午前、時間はある。あのおいしくないキムチチゲを片付けなければ、そう思ってリビングへ行くと、
「おはよう」
「おはようございます、帰ってきてたん、え、食べないでくださいよ!」
あのまずいキムチチゲをドンヨンさんが食べている。
「なんで〜、リアちゃんが作ってくれたのに」
「不味いから!」
「ニンニクと顆粒だし足したら整ったよ」
食べてみなよとスプーンを差し出されて、食べてみる。美味しい。やはり韓国料理のニンニクの量はチキらずにたくさん入れないとダメなのか。あと顆粒だしも少なかったのか。
「ドンヨンさん何時に帰ってきたんですか?」
「ついさっき、飛行機まで時間あるしどこか行く?」
ついさっきまで仕事してた人のセリフではない。
「寝た方がいいですよ、日本ついたらツアーもあるけどテレビ出演もあるし、日本語話せるのはソウタさんとドンヨンさんしかいないから」
「日本に行くと緊張するんだ、自分が話してる日本語が間違ってないかって」
簡単なフレーズは結構すぐに出てくるけど、ドンヨンさんと日本語で何ラリーも会話したことはない。
「必ず話せないといけないわけじゃないのに、日本語を勉強して日本のファンに日本語でコメントして、すごいことですよ」
そう日本語で伝えてみると、
「でも、君もソウタも僕たちの日本のファンも韓国語上手いジャン。僕よりもずっと努力してる」
メソメソと話しているが、この理解度にこの返事、ネイティブといっても間違いない。
「好きな人が外国人だとその言語が上手くなるんですよ。その人と話したいから。私の場合は推しでした。日本のファンもきっと、話したいと思って努力してるし、ドンヨンさんが日本語で話したいと思ってくれたことも愛だと思って嬉しいと思います」
「日本のファンって義理堅いから、どの現場も駆けつけてくれるんだ」
えぇ、私も推しの現場の8割はいます。2割は体調不良、飛行機飛ばなかった、会場がドバイでどうしてもいけなかったが理由だ。ドンヨンさんにもこういったどこにでもいるファンがいるのだろう。
「韓国でデビューした最初、まだ人気もなく曲も流行らなくて上手く行かなかった時も日本のファンは迎えてくれて、東京ドームにも立たせてくれた。アイドルとしての成功を支えてくれたのは低迷してたあの時のファンだ」
これ新規だったら聞きたくない言葉だな。出会うタイミングが遅かっただけで、あの時に出会っていたらもちろんその1人になってたつもりなのに、出会えなかったから人気になってから推してることもあるのに、と。まぁ、古参にはあの時を支えた感謝はある。韓国のアイドルは売れなければ契約満了前に解散することもあるから、解散しない程度には人気や売上がなければいけない。
「でも日本語を勉強したきっかけはソウタがわからない韓国語を日本語で言っても誰もわからなくてソウタが可哀想だったんだ」
「チンフィさんも似たことになりませんか?」
「チンフィはジフンが高校で中国語取ってたから」
外国人メンバーのフォローは2人がやっていたのか。
「え、ジフンさん中国語話せるんですか?」
「中国でのイベントでもない限り自分から話さないけどね。チンフィ曰く上手いよ」
アイドルって母国語以外も覚えてコメントして本当に素晴らしい。オタクが頑張るところなのに、と思いつつもアイドルが話してくれたらありがたい。なんて話しているとドンヨンさんがあくびをする。
「ほら〜眠かったんでしょ。シャワー浴びて寝てください!」
「じゃあ一緒に寝ようよ」
「私は起きたばっかりなので!自分の動画編集してます!」
シャワー浴びたら眠気消えたとか嘘つくドンヨンさんに見られながら動画を編集する。大体の編集が終わって顔を上げるとドンヨンさんが机に伏せて寝ていた。寝顔も綺麗だな。同じ皮膚科通ってるとは思えない肌の綺麗さ。アイドルは素質がないとなれないとすっぴんからも思わせてくる。吸い込まれるように頬に触れると
「寝込みを襲わなくてもいつでも大歓迎なんだけど」
パチリと目を覚ましたドンヨンさんと目が合う。起こしてしまった。
「ごめんなさい」
「うたた寝だったから、別にいいよ」
ドンヨンさんがそろそろお昼の時間だねといいながらキッチンに立つ。まだキムチチゲがあるので、それと何かを合わせてお昼にするようだ。
「サムギョプサルしちゃう?」
ミールパックになっているサムギョプサルセットを見せてきた。今からお昼食べても、お風呂入って匂い落とせるし、いいね!と親指を立てると、ドンヨンさんは手際良く準備を始めた。
空港で私たちスタッフは荷物のチェックをする。先に空輸で送っているものもあるが、何着かの衣装は同じ飛行機で預け荷物として運ぶからだ。それに私の撮影用カメラも同じだ。カメラを回すのはコンサートのバックステージと、隙間に撮るコンサート開催地の息抜きのようなシーンだけ、会社内であれこれとるよりは楽な仕事だ。荷物を預け終われば搭乗までは自由時間。
「免税品見ても買う金はないけど」
チーム長に誘われて搭乗口近くのカフェにはいる。シャインマスカットタルトといちごタルト、どれも美味しそう。
「軽食しか出ないんだから食べちゃいなさい」
チーム長がカードを出してウィンクしてくれたので、シャインマスカットタルトを頼む。優しい上司に感謝。
「よくね、契約を更新した後のアイドルを競争から降りた競走馬って揶揄したりするの」
何の話だろうと思いながらコーヒーを飲み相槌を打つ。
「次代に賞状も何もかもあけ渡すべきで、残りの時間はファンとの約束のためにあると」
BLACKSHINEはコンサートでこう言う、
『永遠がないなら、俺たちが永遠になろう』
韓国人だけのグループでも契約の更新を全員で迎えることは難しい。そこに日本人と中国人のメンバーがおり、ファンとメンバーの関係が構築されていようと政治や国際情勢によっては外国人メンバーが残り続けることが難しくなったりする。それにアイドルでいるということは表に出続けるということ、多額の収入だって入り続けると確約されたものではない。ファンは好きにやめられるが、契約を更新すれば彼らは簡単にやめられない。それに、人気は永遠に続くものではない。それでも、永遠でいようとするのは、それだけファンとアイドルとしての関係が良好だからだろう。
『僕たちはこの東京ドームにカナラズ、ミンナで戻ってキマス!』
全員と目を合わせて、ドンヨンさんが日本ツアー最終地の東京ドーム最終日にそう宣言した。
『みんな長く待たせちゃうけど、メンバーのソロ活動もあるし、グループの方はちょっとだけ待っててね』
舞台袖から見える客席は大号泣で全員をもれなく泣いているし、メンバーも泣いている。東京ドームは韓国のアイドルたちにとってここに立てることは自分たちが人気アイドルであるという証明だと言っていた。彼らはずっと、最前線で競走馬として走り続ける道を選んだ。
東京ドーム公演の後、韓国で弁護士を交えての契約更新が行われた。全員が今の事務所に所属し続けるという快挙とともに、メンバーが提示したのは全員の兵役が終わった後に必ずグループとしてカムバックして曲を出すこと。みんなでドンヨンさんの家に寝に帰ったり、仲が良いとは思っていたが、大きな衝突もなく、事務所とも良好に契約を更新出来るなんて。
「来年、多分ちょっとざわつくよ」
会社から帰る途中、ドンヨンさんが車の中で言う。意味がわからずにドンヨンさんをみると
「チンフィの彼女、中国の大企業のお嬢様なんだ。そして28歳。もう向こうの親が待てないって」
30歳になる前に必ず結婚しろということだろう。聞いた話、婚約は済ませているらしい。事務所との契約更新にもプライベートに口出ししないとわざわざ明記させたと聞いていたが、そういうことか。
「それは流石に大荒れしそうですねぇ」
「それでもチンフィのいないグループは考えられない」
全員が契約を更新する、華々しい話の裏には、将来を見据えた決断もある。
「彼女をずっと彼女にしておくのは、心臓に悪いしね。待たせすぎて別れたら話にならないし」
「女性にはタイムリミットがありますしね」
結婚だけならばいいけれど、出産を望むなら早い方がいい。とはいえ晩婚化している昨今、自分の周りで結婚した人はそう多くない。
「リアちゃんは僕の兵役、待てる?」
ただの疑問にしては少し重い、そんな会話。
「兵役ってやめれないし、待つしかないじゃないですか」
車が家に着く、慣れた足取りでドンヨンさんの家にはいる。テレビをつけると速報扱いで、BLACKSHINE契約満了前に全員事務所と契約更新とアナウンサーが伝えている。KPOP界の帝王はレベルが違うな。彼らが稼ぐ外貨は他のアイドルの比ではないだろう。
「早く寝ましょう、明日がオフとはいえ明後日からはアンコールコンサートの練習ありますし」
なぜこんなにも早く契約を更新したのか、それは兵役前最後のコンサートでこれが最後ではないとファンに伝えたかったからだ。
「リアちゃん一緒に寝ようよ〜」
「いいですけど私昼まで起きませんよ」
「いいよ!僕も昼まで寝るから!」
兵役を待てるのか、ドンヨンさんはそう聞いてきたけど、ドンヨンさんといるのは落ち着くし安心できるし、居心地が良い。だけど、それは恋人という関係で合っているのか不安にも思う。好きという気持ちが推しへのそれとは異なっていて、これが好きという気持ちなのかいまだに確信は持てない。
「最近は君の推しは何にもないの?」
「ドンヨンさんたちと違って中小企業のアイドルなんでね、カムバまで時間かかるんですよ」
なんてない話をしながら同じベッドで向き合う。着慣れたパジャマはドンヨンさんがお揃いで用意したもので、多分私1人なら絶対買わないもふもふのアレ。これを買う金は推しのCD代になるので。私はドンヨンさんのおかげでまともな生活をしている気がする。
アンコールコンサートが終わり、BLACKSHINEとして一息ついた頃、ネットを開くとありえないほど画質の悪い写真が出回っていた。大元の投稿はタイ語で、ドンヨン、女優キムジュウンと夜の街へ。と言った具合。画質は悪いが、この男の服はドンヨンさんが持っている服だし、これは手を繋いでいるのでは?2枚目は繋いでなさそう。でもこれ、明らかに2人で出かけてるよね。そう気づくとだんだん呼吸が浅くなっていくのがわかる。会社にいるというのに、視界が暗くなってきた。落ち着け私。
「リアちゃん!」
椅子から崩れ落ちていく私を起こしたのはソウタさんだった。
「顔色悪いよ、医務室行く?」
あ、今日ソロデビューの会議か、てことはドンヨンさんも会社にいる?どうしよう。
「か、帰ります。タクシー呼ぶんで、下まで一緒に来てもらってもいいですか」
「本当に帰る?医務室行かなくていい?」
ソウタさんが私の顔を覗き込む。なんだか今度は泣きそうだ。涙が溜まり始めた私の顔を見てソウタさんがまた慌てる。
「リアちゃん、大丈夫?」
「帰り、ます」
そう繰り返すとわかったと言って下までついてきてくれた、タクシーを呼ぼうとスマホを出すと、
「送って戻ってくるくらいの時間はあるから、どっちの家に帰る?」
「自分の家に」
ソウタさんは自分の車に私を乗せるとそのまま走らせてくれた。タクシーを待つよりも、早くここから出たかった。ドンヨンさんと顔を合わせたくなかった。
ソウタさんに送ってもらい家に入る。どうしたらいいのか、わからないのに、またスマホを開いた。あぁ、他にも写真出てきてる。この格好してたのいつだろう。全然気付かなかったな。高画質化された写真も出回り始めて、やはりドンヨンさんだとわかり落ち込む。キムジュウンと検索をかけるとさっぱりした薄顔美人が出てきた。私とタイプ違くない?なんなの?そりゃ、こんなくたびれで世話のかかるインフルエンサー会社員よりも綺麗で活躍してる女優の方がいいよ。そりゃそうだよ。でもそうだとしても、乗り換えるなら言って欲しかった。好きじゃないなくなったなら、そう言って欲しかった。仕事上、平日と土日の境目が曖昧で今が何曜日かも、何時かもわからないままユカに電話をかけた。
「どしたー?」
そんな軽い返事に、なんだかホッとして韓国にまだ私は1人じゃないって思えて、そしたら涙が止まらなくなった。何も言わず嗚咽を漏らす私にユカは
「どうした?ちょっと今どこ?」
「じぶんち…」
「今から行くわ、泣くな泣くな」
電話が切れた。ユカが来る前に、まだネットを開いてしまう。BLACKSHINEはKPOP界の帝王、そのメンバーの熱愛疑惑、ネットは大いに荒れている。女優あんなに綺麗なのに、もう叩かれてる。私がバレたらもっとすごいことになってたんだろうな。人目があるところで手を繋いだりしたことなかったな。この女優の手は繋ぐのにな。ドンヨンさんとこの女優の人、同じ歳かぁ。あんまり世話焼かれるタイプの人に見えないけどなぁ。暗くなったスマホの画面に映る自分が酷くブサイクで、それも悲しくなった。家の鍵のパスワードを打ち込む音が聞こえてきた。
「大丈夫??!?」
ユカだった。ユカの顔を見たらまた涙が溢れてきた。
「ドンヨンさんが、女優と撮られた〜!!!!」
「はぁ?」
「どっちが浮気相手?絶対私じゃん」
ダーッと流れる涙をハンカチで拭いてくれるが追いついていない。ハンカチびしょ濡れじゃん。
「これ打ち上げとかじゃないの?」
「そんなスケジュール聞いてない」
個人の仕事は全部把握しているわけじゃない。撮影に必要な仕事しか知らない。知らないけど知らないもん。
「画質も荒いし、ワンチャン別の人かも」
「オタクが推しを間違える?見てよこのオタク、7年もドンヨンさんのオタクしてる人がキレてる」
オタクとは後ろ姿、ダンスのシルエット、歌い出しの息の吸い方、このどれか一つですら推しか推しでないかが分かる生き物なのだ。7年もドンヨンさんを追いかけたオタクが憤慨している、それすなわち写真の男はドンヨンさんだ。泣きすぎて眠くなってきた。というか働きすぎて元から眠かった。
「お、何?眠いの」
「疲れちゃった」
疲れた疲れたと言いながら、ユカに支えられてベッドに行く。自分だけのベッド。
「好きな人が浮気したかもしれないんだから、考えすぎて頭痛いでしょ。もう寝ちゃいな」
ユカの手が瞼を覆う。そのまま、意識が落ちていった。
起きたらユカは居なかった、代わりに今は会いたくない人がいた。
「起きた?」
…なんでこの人こんな爽やかなわけ?あなたのせいで過呼吸になりかけるわ、倒れかけるわ、涙止まらないわで大変だったんですけど、仕事途中で早退してるし。
「何しにきたんですか」
「ソウタから倒れそうだったから家まで送ったって」
心配で顔見にきたというその顔は確かに心配そうではある。多分ネットの記事もまだ知らないんだろう。
「本日は面会謝絶です。帰ってください」
起き上がって帰るように玄関まで押す。戸惑っているドンヨンさんをそのまま追い出そうとすると、
「なんで?彼女が体調悪いのになんで僕帰らされるの?」
なんて聞いてくるものだから、
「原因はあなたです、さようなら」
そのまま追い出した。何故問い詰めなかったのか、なんて簡単で、お前が浮気相手だよと聞くのも、好きな人が他にいると聞くのも怖かったからだ。ドンヨンさんが入ってこれないようにうち鍵も回す。
「死刑宣告の時間稼ぎみたい」
好きとは何か?なんて言ってたくせに、ドンヨンさんの好きの対象が自分じゃないかもしれないと思ったらこんなに怖くなるなんて、ドンヨンさんと居たいと思っていたのは私の方だったなんて、好きだったなんて、スマホを開く。
『大丈夫?』
『ソウタからだいぶ体調悪そうだったって聞いた、病院行く?』
『寝てる?』
『そっち行くね』
ドンヨンさんからの連絡、ベッドサイドにはスポーツドリンク。多分ドンヨンさんが買ってきてくれたんだろう。
『ネットの記事見たの?』
画面を開いたままにしていたら送られてきたメッセージ。既読をつけてしまった。どうしよう。頭痛くなってきた。そのまま画面を閉じた。
仕事というのは、簡単に休めるものではない。それに彼らはアンコールコンサートがおわり、彼らのアンコールコンサートまでの気持ちの入り用を最大限うつした映像を編集しなければならない。アンコールコンサート後にグループ活動はない。それはすなわち、新しい彼らの姿は今後公開されるアンコールコンサートまでのvlogたちに収めてある映像ということだ。ちゃんと綺麗に編集しなきゃ。ネットは今だにドンヨンさんへの批判の嵐だ。アンコールコンサートが終わってアイドルやめてアーティスト気取りか?と、言いたいことはわかる。逆に、ドンヨンさんももうアラサーなんだからそれくらい許せというコメントもある。批判が多いのは、このグループで黒に近い熱愛がバレたのはドンヨンさんが初めてだからだ。会社へ向かう足取りは重い。ドンヨンさんのスケジュールは知らないが、今日は最年少メンバーのラジオ収録について行く予定だ。会わない会わない。
「こんにちは、そろそろ出ますか?」
「姉さん、そろそろ時間ですね」
ヒョンビンさんは、唯一私より年下のメンバーなので韓国の礼儀に従い私のことを姉さんと呼ぶし、敬語を使う。2人で地下駐車場へ行くとちょうど出勤してきたドンヨンさんが車から降りてきた。思わずヒョンビンさんの後ろに隠れる。
「リアちゃん」
前に皮膚科で聞いた低い声で名前を呼ばれた。返事をしないで通り過ぎようとすると腕を掴まれた。
「ぎゃっ、」
「なんで既読つけないの?説明くらいさせてよ」
「…」
「ヒョンビン、後でジュンギさんに向かってもらうから、カメラ持って1人で行って」
「ちょっ、私の仕事を勝手に」
「チーム長に話してある、今日は僕のソロアルバムの収録撮影についてきて」
「なっ、聞いてない!」
ドンヨンさんはヒョンビンさんに私の持っていたカメラを押し付けると私の腕を掴んで社内へ歩いて行く。
「やだ!」
「話くらい聞いてくれたっていいだろ!」
ドンヨンさんが大きい声を出したのを聞いたのはこれが初めてだった。ビックリして固まっていたら、ドンヨンさんがため息をついて頭を掻く。
「この後、あのネット記事へのお知らせも出すし、僕の説明も聞いて欲しい」
手を引かれて会議室に入る。中にはチーム長がいた。
「お疲れ様、ジュンギ向わせたわよ」
「ありがとうございますチーム長」
座る様に促されて席に着く。この会議に私は必要あるのかと思いながらもどちらかが口を開くのを待つ。
「ジュウンはいとこです」
いとこ?従兄弟?従姉妹?親戚?
「父方のいとこです。ジュウンは僕がデビューした時にはすでに女優として成功してたので、あやかる様なことしたくなくて公表してなかったんです」
ドンヨンさんはそう言うとスマホを出した。開いたのはジュウンさんのインスタだ。そこには、ドンヨンさんとジュウンさん、そして同じく俳優をしているジュウンさんのお兄さんの写真が上がっている。キムファミリー、みんな芸能界を生き残ろうと書かれている。ハッシュタグには、ドンヨンは従兄弟の文字。
「わぁ…」
「わぁじゃないよ、メッセージ見ないし」
そしてドンヨンさんは自分のインスタを開く。投稿写真は、幼少期のジュウンさんに泣かされてるドンヨンさん。近所に住み兄弟の様に育った同じ年の大女優ジュウンの怖い一面。なんてコメントをつけて、
「これで投稿しますね?」
「いいわよ、私もデマと誹謗中傷は訴えると公示出すわ」
チーム長はそういうと会議室を出た。ドンヨンさんは、私を正面に向き合わせると
「僕に何か言うことは?」
その顔は笑っているのに怖い。
「ごめんなさい」
ドンヨンさんの手が私の頬に触れる。
「僕が浮気すると思った?ちゃんと好きだって伝えてきたつもりだったんだけどな」
そう言ってるのにその顔は笑顔で意味がわからず見つめていると
「リアちゃん、僕のこと好き?」
優しい目が私を見つめる。試してと言った時の顔とは違って、少し自信のある様な表情。
「好きです」
私がそう言うが先か、ドンヨンさんが私を抱きしめた。推しが、嫌いじゃなければ付き合っちゃえばいいと言った。
「まさかさ〜、兵役終わったらすぐに入籍するとは」
オンラインサイン会に参加すると推しはそう言ってうんうんと頷いている。
「背中押した私に感謝して?」
「本当にありがとうございます。今後もサイン会は全参加させていただきます」
「あ、コンサートの公示みた?結婚式被らないようにね!」
「うん、招待状事務所に送ってもいい?」
私がそう聞くと推しは少し考えてから、
「祝歌歌っていいの?」
私は大きく頷く。あなたを追いかけて韓国に来なければ、あの事務所にインターンに行くこともなく、ドンヨンさんと出会うこともなかったし、あなたが付き合ってみればいいと背中を押さなければ、すぐに付き合うこともなかった。
「やはり推しって最高。絶対祝歌歌ってね」
私がそう言うと、推しは嬉しそうに笑ってくれた。




