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断罪無視して世界を揺らす -悪役令嬢は歌いたいだけー  作者: 南蛇井


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創造への転換Ⅰ.再会の舞台 ― 都市中央ホール

三文化融合都市の中心。


都市の中央にそびえる巨大ホールは、夜の光に包まれていた。

透明な外壁を通して、内部の照明が柔らかな光の層となり、まるで都市そのものが呼吸しているように見える。


今夜、ここでは――


「融合革命記念演奏」


が行われる。


革命から数か月。

三文化融合は制度として安定し、都市はかつてない秩序の中にあった。


舞台中央には、巨大な共鳴制御装置。

その周囲を取り囲むように、数百の演奏者が配置されている。


すべては計算されていた。


砂のリズム。

雪の弦。

海の低旋律。


三文化はもはや衝突しない。

完全分散演奏。


演奏は四拍アルゴリズムによって統制され、

振幅は安全域を超えないよう精密に制御されている。


破綻は起こらない。

暴走も起こらない。


革命は、ついに構造として完成した。


客席には数万人。

世界中の都市へと同時中継も行われている。


この夜は、

「革命の完成」を宣言する夜だった。


だが。


開演まであとわずかというとき、

ホール入口の警備が一瞬ざわめいた。


一人の人物が現れたからだ。


長い外套。

潮の匂いの残る髪。


港の小屋から、初めて都市へ戻った――


アリア。


観客席の一部がどよめく。


「あれ……」


「まさか」


「本物?」


噂は瞬く間に広がる。


「復帰なのか?」


「歌えるのか?」


「まだ声は――」


だがアリアはその声を気にする様子もなく、

静かに通路を歩いていく。


歩くたび、ざわめきが後ろへ波のように広がった。


誰もが知っている。

この都市の革命は、彼女から始まった。


そして今、

彼女はその完成の夜に現れた。


舞台袖。


演奏開始の最終確認が行われている。


指揮系統の中心に立つのは

リュミエール。


彼女はモニター越しに客席を確認していたが、

ふと視線を止める。


通路を歩く人物。


外套の影。

歩き方。


すぐに分かった。


アリア。


周囲のスタッフはざわめく。


「えっ……」


「本当に来たの?」


「連絡は?」


だがリュミエールだけは驚かなかった。


むしろ――

少しだけ微笑む。


彼女は舞台袖から一歩出て、

客席側の通路へ視線を向ける。


アリアも気づく。


二人の目が合う。


長い時間のあとに訪れた、

静かな再会。


リュミエールは小さく息をつき、

落ち着いた声で言った。


「来ると思ってました」


その声は、

責めるでもなく、

驚くでもなく、


ただ――


待っていた人の声だった。

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