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断罪無視して世界を揺らす -悪役令嬢は歌いたいだけー  作者: 南蛇井


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Stage6:国家観測へ

 同時刻。


 王都の中心、そのさらに奥。


 王城最奥部――観測塔。


 厚い石壁に囲まれた円形の間に、巨大な水晶球が浮かんでいる。


 王国全土の魔力振動を捉える、国家級観測装置。


 その前で、白衣の観測官たちが一斉に息を呑んだ。


「……再び来ます」


 波形が立ち上がる。


 鋭い山。


 しかし前回のような乱雑な跳ねではない。


 明確な周期。


 四拍。


 裏拍強調。


 そして、三拍との重層干渉。


 


「干渉波、重畳確認」


「詠唱共鳴と非詠唱共鳴の同時発生……理論上、排他のはずでは?」


「不明です。ですが、今回は――」


 観測官の指が震える。


「再現しています」


 


 偶発ではない。


 事故ではない。


 意図的現象。


 


 観測塔の最上段。


 玉座のような高座に座る人物が、ゆっくりと目を開いた。


 


 静寂の王――レクイエム。


 


 音を持たぬ王。


 だが振動を統べる者。


 


 彼の瞳に、水晶球の波形が映る。


 白い三拍の山。


 その外側に重なる、未知の四拍波。


 


「……明確化したな」


 


 低く、冷たい声。


 


「前回は未登録周波数」


「今回は周期安定、再現性確認」


 側近が膝をつき報告する。


 


「分類を?」


 


 わずかな沈黙。


 その間に、波形がもう一度跳ねる。


 最大共鳴値。


 王都中心部にまで届く干渉振動。


 


 レクイエムの瞳が細まる。


 


「対象――」


 


 水晶球の中心に、少女の姿が映る。


 舞台中央で息を整えるアリア。


 


「危険振動体に再分類」


 


 観測室の空気が凍る。


 


 それは研究対象ではない。


 単なる異常でもない。


 


 国家管理対象。


 


 意味は三つ。


 


 第一。


 監視強化。


 学院内外に観測網を増設。


 振動発生時は即時報告。


 


 第二。


 理論解析命令。


 非詠唱共鳴の構造解明を急ぐ。


 軍事応用可能性も含め、極秘研究へ移行。


 


 第三。


 


 最悪の場合。


 


 抑制対象。


 


 側近が慎重に問う。


「排除ではなく?」


 


 レクイエムはわずかに首を振る。


 


「現時点では、価値がある」


 


 危険だが、可能性もある。


 秩序を壊す力は、同時に秩序を更新する力でもある。


 


 だが――


 


「暴走した場合は、即座に封鎖」


 


 静かな宣告。


 


 王城最奥で、分類が変わった。


 学院の勝敗は、もはや学生同士の競争ではない。


 


 国家安全保障レベル、引き上げ。


 


 水晶球の波形が、まだ微かに揺れている。


 


 四拍。


 


 それは祝祭のリズム。


 だが同時に、体制にとっては警鐘の鼓動。


 


 レクイエムは目を閉じる。


 


「観測を継続せよ」


 


 命令は短い。


 


 こうして、ひとりの少女のライブは、


 王国の中枢に正式記録された。


 


 ――危険振動体。


 


 その名とともに。

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