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断罪無視して世界を揺らす -悪役令嬢は歌いたいだけー  作者: 南蛇井


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Stage5:勝敗判定

 沈黙。


 光紋が消えたあとも、誰もすぐには動けなかった。


 白光は薄れ、波動の残響だけが講堂の空気を震わせている。


 クラウスは膝をついたまま、荒い呼吸を整えていた。


 術式は崩れていない。


 制御も破綻していない。


 だが、舞台の中心はもう彼ではなかった。


 


 天井の増幅水晶が、遅れて脈打つ。


 ――カン、と高い共鳴音。


 計測盤の針がようやく停止する。


 


 監察官が前へ出た。


 無機質な声で告げる。


「共鳴値、測定完了」


 


 空気が張りつめる。


 


「従来方式――三拍詠唱型」


 記録盤が白く光る。


「安定高出力。平均値は歴代上位」


 貴族席に安堵の息。


 やはり正統は強い。


 体系は完成されている。


 


 だが、監察官は続ける。


 


「対して、非詠唱共鳴型――」


 


 一瞬、間が落ちる。


 


「一時的爆発的上昇を確認」


 


 記録盤の中央に、波形が映し出される。


 なだらかな三拍の山の上に、


 突き刺さるような鋭い頂点。


 


「最大共鳴値、基準値超過」


 


 ざわめきが広がる。


 


「勝敗基準は最大共鳴値」


 


 講堂の全員が、息を止める。


 


 そして、宣告。


 


「勝者――アリア」


 


 一瞬の空白。


 


 次の瞬間。


 


「うおおおおお!!」


 


 学生層が立ち上がる。


 四拍の手拍子が自然発生する。


 裏拍が跳ねる。


 声が重なる。


 


 熱狂。


 


 理論ではない。


 感情の奔流。


 


 クラウスは顔を上げ、静かにアリアを見る。


 敗北の悔しさよりも先に、理解不能という色が浮かんでいる。


「……最大値、か」


 彼は呟く。


 安定ではなく、爆発。


 持続ではなく、瞬間。


 


 保守派貴族は青ざめていた。


「最大値主義など危険だ……」


「暴走と紙一重だぞ」


「体系に組み込めぬ力は制御不能だ」


 


 だが、その声は歓声に飲まれる。


 


 学院上層部は動かない。


 学院長はただ、水晶を見上げていた。


 


(安定を超えた)


(しかも、術式なしで)


 


 沈黙は、計算の沈黙だ。


 喜びでも怒りでもない。


 評価。


 分類。


 対策。


 


 アリアは肩で息をしながら、観客を見る。


 汗が頬を伝う。


 胸が上下する。


 


「……楽しかった?」


 


 その問いに、さらに歓声が返る。


 


 彼女は笑う。


 


 勝った実感は薄い。


 だが、確信はある。


 


 共鳴は、選ばれた者だけのものではない。


 


 その証明は、数値として刻まれた。


 


 天井の増幅水晶が、まだわずかに震えている。


 まるで、この世界の常識そのものが、

 揺さぶられた余波を抱えているかのように。

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