表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
断罪無視して世界を揺らす -悪役令嬢は歌いたいだけー  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/41

Phase3:旧音律魔法との決定的な違い

 学院・音律研究室。


 壁一面に展開された観測式が、淡く光っている。


 水晶板に刻まれた波形は、昨日までの常識を嘲笑うかのようだった。


「もう一度再生しろ」


 老教授の声が震える。


 助手が魔力を流す。


 空間に投影されたのは、二種類の振動図。


■ 旧音律魔法


 第一波形。


 美しい。


 幾何学的で、均整が取れている。


 一、二、三。


 一、二、三。


 三拍基調。


 詠唱句に合わせて導線が伸び、

 術者の胸から観客席へと魔力が流れる。


 明確な始点。


 明確な終点。


 供給は一方向。


 個 → 観客。


 秩序。


 制御。


 再現性。


 それが旧音律魔法の誇りだった。


■ アリアの歌


 第二波形。


 ざわ、と研究室の空気が変わる。


 乱れている。


 不規則に見える。


 だが崩れてはいない。


 四拍のリズムが底に流れ、

 その上に自由な旋律が乗る。


 詠唱句はない。


 術式準拠の構造もない。


 観測士が呟く。


「導線が……存在しない?」


 通常、術者の胸部から細い光線が伸びる。


 だがこの波形には、始点がない。


 終点もない。


 代わりに――


 観客席側に、無数の微小振動が発生している。


 点、点、点。


 平民生徒の席からも。


 魔力値“零”判定の席からも。


 揺れている。


「供給方向が逆だ」


 若い研究員が息を呑む。


 観客 → 共鳴的増幅。


 術者が押し出すのではない。


 観客が揺れ、

 揺れが重なり、

 中央で一つの波になる。


 そして、その波にアリアの声が乗る。


 魔力は、押し出されていない。


 集められてもいない。


 ただ――


 浮いている。


■ 重要発見


 老教授が震える指で水晶板を叩く。


「生成値は?」


「検出されていません」


「では増幅値は?」


「……増えています」


 室内が凍りつく。


 魔力は生成されていない。


 誰も新たに作っていない。


 だが総量は増えている。


 ありえない。


 理論では、魔力は保存される。


 消費か、変換か。


 どちらかだ。


 だがこれは違う。


 観測士が、かすれた声で言う。


「浮遊魔力……」


 誰もその言葉を肯定しない。


 だが否定もできない。


 共鳴が一定値を超えたとき、

 空間そのものが振動を保持している。


 魔力が“生成”されたのではない。


 揺れが重なり、

 消えずに残っている。


 浮いている。


 それは制御不能の萌芽。


■ 外部の気配


 研究報告書が封緘される。


 宛先は王城。


 静寂の王レクイエムの元へ。


 題目は簡潔だった。


「非詠唱共鳴現象について」


 老教授は窓の外を見る。


 中庭で、アリアがまた手を叩いている。


 四拍。


 自然な拍。


 生徒たちの身体が揺れる。


「これは……学術問題では済まぬ」


 もし理論が確立されれば。


 魔力を持たぬ者も、力を得る。


 身分制度は揺らぐ。


 聖女の独占は崩れる。


 国家の根幹が、音から崩れる。


■ 一方その頃


 当の本人は。


「え、そんな大ごとになってるの?」


 まったく知らない顔で、次の曲の構成を考えていた。


(四拍は安定してきた。次は裏拍入れよっかな)


 彼女にとっては、ただのライブ。


 だが研究室では、結論が出つつあった。


 これは異端ではない。


 これは偶発でもない。


 体系外の第二音律。


 国家級問題。


 そして――


 革命の、理論的証明。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ