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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

無人店

作者: 虹色蝙蝠

 この街は、一般的な住宅街だ。


 突出した名物もなく、だが、皆に好かれている。それなりに自然があり、それでいて大部分は一般的な住宅が並んでいる。夏になれば蝉の鳴き声があちこちから聞こえ、人通りはそれほどない。しかし、その街が静寂で包まれることはない。電車に乗れば、都会までは30分ほどで着く。公園に行けば子供の楽しげな声が聞こえ、駄菓子屋だって点在する。この街のどこの飲食店に行っても、人はいるものの、満席になっていることはない。少し田舎であると言えるようなこの街、夕貴町。


 しかし、一店だけ、どの店にも人がいるはずのこの街には、一店だけ、誰もいない店がある。


 古く濃い色ヒノキを使った一階建。

 決して大きくなく、屋根をはみ出るほどの大きさをした、店の名前を大きく書かれた看板。その看板にギリギリ届かない位置までの高さがある大きな扉。どんな時に行っても、どんなに人が来ようとも、その大きな扉の向こう側には、その店には人がいない。客どころか、店主のいない。そんな無人店。「藤原亭」。

 そんな少し奇妙な店がある。

 それだけが、ただ一つ、他の街とは違うところ。


 藤原亭は、いわば百貨店だ。食べ物、飲み物、文房具、生活必需品、様々なものを揃えている。いつ訪れたとしても、誰もいない。

 しかし、誰も訪れたことがないわけでもない。

 むしろ、定期的に訪れているのだ。この百貨店には、本当に様々なものがあり、それらは他では入手が面倒なものもあり、藤原亭に買い物をするものは多い。

 それでも、藤原亭は繁盛しない。それは、その店のルールが関係している。この店は一人までしか、入店してはいけないのだ。二人以上の入店は許可されない。だから、いつも店に入るときは誰もいない。静寂が店主とするような店である。

 何故そんなルールがあるのか、破ったらどうなるのか、この街のものは誰一人知らない。しかし、この街のもの全員が、【藤原亭に二人で入ってはいけない】という認識がある。

 馬鹿馬鹿しいと思うものも少なくないが、誰も二人で入ろうとしない。


 そしてもう一つ、万引きをすると、災難に見舞われる。かつて、高価なシャープペンシルを盗んだ中学生が、その中学生が持っていた全てのシャープペンシルが、盗んだシャープペンシル以外の全てのシャープペンシルが、体中を貫いて、自室で死亡していた。


 あまり広くない街で、その事実はすぐに広まり、それ以来、万引きは絶対に起きない。この街で不審死が起こった場合、藤原亭で万引きをしたとされる。


 そんな不思議な店が、夕貴町にはある。





 死にたい。僕が初めてそう思ったのは、中学一年生の頃だった。


 僕は小学生の頃、体力もあまりなく、運動神経もあまり良くなく、不器用で、それでも何か自分の自信になることが欲しくて、勉強を必死に頑張った。結果、僕は学年でもトップクラスの学力を保有し、中学受験にも挑めるくらいにまで成長できた。


 結果的には、受験は落ちてしまった。悔しかったけれど、悪い経験をしたとは思っていなかった。


 けれど、僕が受験に落ちたことを知った同級生は、そう思ってはくれなかった。僕が受験に落ちたことを「努力不足」「頑張っても達成できない落ちこぼれ」と罵った。

 正直、不愉快ではあったが、それは僕が経験したことであり、僕がどう思うかが重要なことだから、僕はそれに言い返さなかった。


 けれど、揶揄ってきた奴は、それがどうしても許せなかったらしい。

 勉強ばかりで、ろくに人とのコミュニケーションをしてこなかったから、何か誤解を生んでしまったのかもしれない。僕は最初、そう思ってた。


 けれど、僕がどれだけ言葉を尽くしても、僕がどれだけ悪意のなさを伝えても、彼らの行動は収まるどころか、さらにエスカレートした。おそらく、僕のその行動そのものが、ただひたすらに、不愉快だったのだろう。思い通りにいかない僕が嫌で嫌で仕方がなかったのだろう。


 僕が進学した中学校は地域の人が集まる都立中学だったから、同じ小学校の生徒たちが集まった。

 当然、僕を憎く思う彼ら彼女らも、僕と同じ教室で教卓を囲むことになった。

 僕は中学の中でもトップクラスの学力を保有していた。 これは僕が自力で、努力で身につけた、僕の力だ。僕の自慢だ。

 それが、これだけ嫌になったのは、死にたくなるくらい嫌になったのは、このくらいの時期からだっただろうか。

 

 友達もいない。先生とも話せない。家族ともろくに話せない。両親は僕が嫌いというわけじゃないことはわかっている。


 けれど、一歩壁を作る僕を尊重してくれている。僕はそんな両親に甘えて、いざってときに何も伝えられない。

 話したいことが、助けを求めることが、どうしてもできない。助けて欲しいのに、助けを求められない。クラスの人の中の誰かも、先生も、お父さんもお母さんも、絶対に助けてくれるのに。






 「いってらっしゃい」


 履き慣れないローファーを履き終え、ドアノブに手をかける僕に、母は優しく、それでいて悲しそうにそう言った。


 「・・・・いってきます」


 僕は母に向き直ることなく、弱々しく母に答える。


 最近の母の僕を出迎える声は、どこか弱々しい。

 その理由を、僕はわかっている。


 夕飯を片付け、作業がひと段落ついた母は、大して面白くもないバラエティ番組をソファーに座りながら見ている僕の隣に座り、神妙な顔で尋ねられたことがある。その様子から、雑談や単純な質問ではないということは容易にはかることができた。


 「最近、楽しい?」


 僕はその質問に、「うん」と答えた。

 そうはっきり答えた。答えたつもりだ。


 最近の母の様子から、そうできていないことは想像に難くない。


 母は全て知っているのだろうか。いや、正確には、何かを察しているのだろう。僕の様子のおかしさに。


 玄関を出て、後ろから扉の閉まる音が聞こえた瞬間、体が重くなった。しかし、学校に行かないわけにはいかない。

 僕は重い体を引きずって、いつも通う通学路を歩む。この風景も、そろそろ見慣れてきた。

 

 僕の横を、同じ制服の男子たちが通り過ぎていく。

 その様子は楽しげで、足取りも軽い。その顔には笑顔が溢れ、これからも、今日は楽しさでいっぱいなのだろう。

 その男子たちが通り過ぎて見えなくなると、周りには誰もいなくなる。僕は登校時間ギリギリに登校する。少しでも、教室にいる時間を減らしたい。そんな感情からくる行動だ。


 コツコツと僕の足音だけが、あたりに響く。


 「行きたくねぇ」


 僕は虚にそう呟く。



 教室の扉を横にスライドし、僕は教室に入る。


 僕が入ったからといって、クラスが変わるわけでもない。


 しかし、その中で、不自然に静まり返った場所があった。

 そこは、クラスでも中心の位置で、行儀悪く机に乗っていたり、他の生徒の椅子に足をかけてながら座っている生徒がいる。普段から素行は悪く、授業妨害、器物破損、クラスメイトへの暴言、傍若無人な振る舞い。彼らと仲の良かった他クラスの一人の生徒が窃盗を犯したという噂すらある。言わばクラスでも問題児たちのグループである。


 不自然な静けさから、僕は無意識に意識を向ける。


 僕の彼らを見る目を見つけるなり、グループの一人のその目は一瞬にして鋭くなり、聞こえはしないものの、その口はおそらく舌を打っていることがわかる。

 その人はすぐに他のグループに意識を直し、再び笑い出した。


 僕が何したってんだよ。


 スピーカーからチャイムが鳴り響く。


 僕はさらに重くなった足を動かし、問題児たちの方向へ向かう。


 問題児たちの方向に向かいたいから向かうわけではない。僕は、僕の机に向かいたいのだ。彼らが乗っている机の一つ。そのに向かいたいのだ。僕のカバンを置きたい。 ただそれだけだ。


 慎重に、僕は自分の机に近づく。


 彼らの笑い声がはっきり聞こえてくる。僕はそれを尻目に、そっと机のフックにカバンをかける。


 「なに?」


 僕の机に乗っている生徒が、僕にそう威圧する。


 「あ・・・・」

 僕はそれに呆然とする。恐怖にも近いだろう。


 「いや・・・僕の机だから」


 「なに?邪魔っていいてぇの?」


 「あ、いや、そうじゃなくて・・・・」

 僕の声は、次第に震えていく。


 それに呼応するように、目の前の彼は声を上げる。

 「邪魔なんだろ?だったらそう言えよ」


 「邪魔なんてひでぇなぁ」

 周りの奴らが、目の前の彼の言葉に賛同という形でヤジを入れる。


 黙ってろよ。


 「俺のことが邪魔だっていいてぇんだろ!?俺を不愉快で消えて欲しいとでも思ってんのかよ!!偉そうにしやがって、舐めてんじゃねぇよ!!」

 目の前の彼が一気に声を荒げる。


 うるさいな。


 「舐めんじゃねぇ」

 「ひでぇこと言うなよ。可哀想だろ」

 「しゃしゃんなよガリ勉」

 周りの奴らが口々にヤジを入れる。


 クズどもが。


 「おい、やめろよ」


 他のクラスメイトが、目の前の男の肩を掴んだ。不穏な雰囲気を感じ取り、止めに入ってくれたのだろう。あれほどの声だ。クラス中に広がったのかもしれないが。


 「うるせぇ」


 先ほどまでとは打って変わって、目の前の男は静かに呟きながら、その手を振り払った。

 振り払う彼の腕は、振り払うと言うより、殴り飛ばすに近い。

 荒々しく、乱暴なものだった。


 振り払われたクラスメイトは、腕を押さえてその場にうずくまる。


 クラスの雰囲気が変わっていることを肌で感じる。

 止めに入ってくれたクラスメイト。僕は名前も覚えていない彼だけど、その彼は特別なのだ。

 クラスの中心で喧嘩が起きても、首を突っ込むものはいない。クラスを飛び出すもの、その場で泣き出しそうなもの、何も理解できずに呆然としているもの、その姿はそれぞれだ。


 僕の目の前の不良はうずくまる彼を薄く見下ろしている。


 クスクスと笑っている声が聞こえる。


 目の前の不良を囲む奴ら。ヤジを飛ばし、考えなしに行動する奴ら。


 黙ってろよ。

 うるさいな。

 クズどもが。


 こいつら、どいつもこいつも、全員、一人残らず、死んでしまえばいいのに。社会のために、僕のために。


 教室のドアがバン!!と開く音がクラスに響き渡る。


 「おい!!何やってんだ!!」

 そこには血相を描いた担任の先生の姿があった。


 先ほど教室を飛び出した生徒は、先生を呼びに行ったのか。


 先生はうずくまる生徒に駆け寄り、その生徒が抑える腕を診ている。


 僕はその隙に少し後ろに下がる。


 彼らに関わらない程度に。

 僕と彼らは違うと思える程度に。


 そこから先は、あまり聞いていなかった。先生の怒号と、それに反発する不良グループの声がうっすらと聞こえていた。

 うずくまっていた生徒は立ち上がって距離を取っていた。周りの生徒に心配され、少しぎこちない笑顔を浮かべながら、それに応対している。


 しかし、それは僕が一瞬目に映しただけだ。

 本当に見ていたのは。


 最初に僕を怒鳴った彼だ。


 不良グループの中でも唯一先生に反発することもなく、だからといって従うでもない。ただ黙り込んでいる彼の姿を、僕は凝視している。

 彼が生きていることを、憎たらしく、恨みがましく、思っている。


 何故、彼が生きているのだろう。


 今日も、こんなことが続くのだろう。

 明日も、明後日も、明明後日も、続く。

 昨日も、一昨日も、一昨昨日ま、続いたのだから。

 何故、僕が生きているのだろう。





 スピーカーからチャイムが鳴り響く。


 それを境に、クラスのあちこちで話し声が聞こえる。それを先生が宥め、本日最後の授業が終わりを告げる。


 あれから、不良グループは先生を警戒してか、僕にちょっかいをかけてくることはなかった。

 僕は休み時間は基本的に教室を出ているというのもあるのだろうが。


 授業が終わるのと同時に、ホームルームの準備に入る。


 先ほど僕に叫んだ彼、彼は一つ飛ばした右の席に座っている。そこから、何やら視線を感じる。

 授業が終わってから、いやさそれ以前から視線を感じる。1時間目の授業中から、視線を感じていた。今まで見ようとしていなかったが、僕は思わず少し視線をやると、その彼は睨んでいる。


 何が言いたいんだよ。


 朝のホームルーム前のあの騒動から、いつも以上に不良グループはクラスから距離を置かれていることがわかる。 今は一人でいる彼も、周りには人がおらず、そこを通りたいはずの生徒も少し回り道をしている。

 唐突に、その彼は立ち上がる。

 嫌な予感がする。

 案の定というべきか、彼はこちらに歩いてくる。それに気付かぬふりをしながら、席を立とうとすると。


 「おい」


 と、僕が席を離れることを遮る形で、少し距離がありながらも彼は声をかけてくる。


 「あ・・・え?」

 僕はそんな声にキョドキョドしながら、辛うじて彼の声に応える。


 「放課後、来い」


 「は?」


 恐怖と困惑から、思わず出てきたその言葉に彼は顔を歪める。


 「なに?」


 「あ・・・・いや、少し用事があって」

 「は?来いっつってんだよ。お前の都合でうだうだ言うなよ」

 「あ・・・いや・・・・・だから・・・」

 用事があることは嘘ではあるが、僕はその指示に絶対に従いたくない。彼が何を考えているのか、僕に走る由もないが、絶対に碌なことにならない。僕は恐怖を押し殺し、彼の顔をじっと見る。


 彼の顔は不愉快や怒りを包み隠さない。


 うざってぇな。


 「だから!」

 少し声を荒げそうになる寸前で、教室の扉が開く音がする。僕も彼もそちらに意識を向けると、担任の先生が教室に入ってくる。

 クラスの生徒たちがゾロゾロと自分たちの席に向かい、着席していく。


 「だる。とりあえず来い」


 「だから用事が」


 こちらの声を聞くことなく、彼は体の向きを180°回転させ、自分の席に向かう。


 「ホームルームを始めまーす」


 先生の声で、釈然としない気持ちを抱きながらも、僕は席に座る。


 うっすらと、進行を聞く。


 ホームルームが終わると同時に、僕は席を立とうと机に手をかける。しかし、その手は他の誰かにがっしりと掴まれた。力強く、腕が砕けてしまいいそうだ。


 「何帰ろうとしてんだよ」


 彼だ。






 「お前、なんなの?」


 第一校舎と第二校舎の間の渡り廊下の下。ポイ捨てされたであろうペットボトルやお菓子のチリゴミが散らかり、誰が見ても小汚いと思うような場所に僕はいた。

 薄暗く、土から這い出てくる虫も多い。


 もちろん、誰も来ない。普段なら。


 僕は先ほど騒いだ彼に、強制的にここに連れてこられた。彼のグループの奴らによって。連れてこられた。


 彼は何がしたいのか。僕に何を思っているのか。全くわからない。わかりたくもない。


 「何も・・・ないけど」

 「は?」


 あからさまに不愉快さを醸し出す彼。


 「何言ってんだよ」

 「頭おかしいんじゃねぇ?」

 「やばいやつやん」

 横の奴らがクスクスと笑いながら呟く。


 「そんな態度とっといて、何もないなんて。舐めてんのかよ」


 そんな奴らとは打って変わって、一貫して不愉快そうに言い放つ彼。


 「僕は、君が嫌いなわけでも、嫌がらせをしたいわけでもな」


 僕の言葉が途切れる。


 彼は僕の腹を蹴り飛ばした。


 彼からすれば、大した力を入れていないのかもしれないが、腹を抉られるような痛みが僕を襲う。


 喉から息が出てこない。

 腹が痛い。苦しい。


 僕はその場にうずくまる。


 「ブッハハハハハハ」

 「ダッサ!!」


 横の奴らが僕を笑う。

 パシャパシャと機械音が聞こえる。


 引っ込んでろ。


 「だから!!そんなの通用すると思うなよ!!いつもいつも舐めた態度とりやがって!!いつもいつもスカした態度とりやがって!!そんなに惨めかよ!!俺らがそんなダセェかよ!!見下してんだねぇ!!テメェの何がそんなに偉いんだよ!!ただ言われるがまま勉強してるテメェのどこが偉いんだよ!!奴隷が勘違いしてんじゃねぇよ!!何も偉くねぇよ!!何も凄くねぇよ!!そんなの何にもならねぇよ!!何なんだよ!!何なんだよ!!!!」


 まるで自分を痛ぶるように、まるで自分を殺そうとしているように、彼は荒々しく叫ぶ。

 彼はその痛みをぶつけるように、彼はその辛さを押し付けるように、なすりつけるように、僕に叫ぶ。


 勘違いしてんじゃねぇよ。


 彼は僕の頭を乱暴に掴み、地面に押し付ける。


 呼吸しようと必死の僕の顔は、口は、広く空いていた。その口に土が、その中の虫が入ってくる。ぐちゃぐちゃと、ザワザワと入ってくる。


 気持ち悪い。

 気持ち悪い。

 気持ち悪い。

 気持ち悪い。


 多分、明日も明後日も、これは続く。

 今日も昨日も一昨日も、続いたのだから。






 ある日のホームルームが終わると同時に、僕は机の横にかかっているカバンを取り、教室を後にする。いつもよりも足は重いが、いつもよりも足早に、教室を出る。

 明日が休みならばいいのに。


 これからのことを、彼のことを考えると、嫌気がさす。


 教室を出るとき、視線を感じたような気がした。


 当然、彼からの視線だろう。今日も呼び出された。


 やめろよ。


 下駄箱から靴を取り出し、かかとを踏みながは校門を出る。


 いつものことだ。校門を出ると、終わったと、少し安心する。


 だが、今日ばっかりは安心してはいけなかった。


 「おい」


 聞き覚えのある荒々しい声が、今日何度も聞いたセリフが後ろから聞こえる。


 失せろよ。


 「何帰ろうとしてんだよ。来いっつったろ」


 少し振り返って、僕は彼の顔を見る。


 怒りは感じる。不愉快さも感じる。


 彼は何を考えているのだろう。わからない。彼は何をしたいのだろう。


 関わるな。

 僕が何したってんだよ。


 「用事がある」


 再び前へ向き直り、僕はこの先の通学路を歩み続ける。

 

 「待てっつってんだよ!!」


 ドンドンと足音を立てながらこちらに近づいてくる。


 耐えられるか。


 僕は背負っているカバンを彼に投げつけ、走り出す。


 「くっそ。逃げんな!!!」


 町中に響き渡らんとするような彼の怒号が僕を襲う。

 しかし、それに構っていられない。


 僕は必死に彼から逃げる。


 僕の運動神経では、そのうち追いつかれる。そんなことはわかっているが、僕は考えもなし、彼から逃げる。形もぐちゃぐちゃで、カッコの悪い姿だろう。逃げている姿なのだから、仕方がないだろう。


 お父さん、お母さん、かばん、買ってもらったのに、乱暴にしてごめんなさい。


 逃げたからには、追いつかれるわけにはいかない。


 住宅街の入り組んだ道を利用して、僕は彼から距離を取る。けれど、足音はどこへ行っても途切れない。


 どこへ行っても聞こえ続ける。


 やめてくれよ。

 頼むから。

 本当に。

 消えてくれ。

 僕に関わるな。

 やめろ。

 やめろ。

 やめろ。


 ふと、後ろを振り向く。


 その瞬間、見計らったように、ちょうど、彼が曲がり角から出てくる。

 足音を立てて、走ってくる。


 追ってくるな。

 関わるな。

 「やめろ」

 消えてくれ。

 黙ってくれ。

 頼むから


 彼を巻くための何かを、あたりを見渡し探す。


 すると、ある店が見えた。藤原亭。


 この街の住人なら誰もが知っているこの店。なんである百貨店で有名な、店員が誰もいない無人店。


 いつからあって、誰が建てたのかなんて誰も知らない。不可思議で、幻想的な店で。それは少し不気味でもあると、僕は思っている。


 僕は直感的に、店に飛び込む。中はあまり広くないが、棚や商品が数多く並んでいる。


 もう、ここしかない。ここに隠れるしかないんだ。


 僕は隙間のあった少し大きめな棚に隠れる。ちゃんと扉は閉めてある。

 もしかしたら、気づいていないかもしれない。


 バタンと、扉の開く音がする。その荒々しさ、間違いなく彼だ。

 

 少し物陰から覗き、彼の姿を確認する。


 くるな。

 近寄るな。

 関わるな。

 失せろ。

 黙ってろ。

 見るな。

 喋るな。

 「やめろ」

 やめろ。

 やめろ。

 「頼むから」

 やめろ。

 僕に。

 僕に。

 「あーもう」

 どっかに消えてくれないかな。

 あいつなんか。

 僕のために。

 社会のために。

 死んでくれ。


 僕は一つ、忘れていることがあった。


 僕がこの店を不気味であると思っている理由の一つは、先ほど言った不可思議な様子だ。


 だがまだ、理由があった。


 その理由とは、この店のルール。【藤原亭に二人で入ってはいけない】というもの。


 僕はまるで覚えていなかった。

 それは、彼も同じだったのだろう。または、それをくだらないと、馬鹿馬鹿しいと思っていたのかもしれない。


 彼は、藤原亭の門を足で潜った。


 はずなのだ。間違いなく、潜ったはずだ。


 しかし、何も聞こえない。


 先ほどまでの荒々しい足音は聞こえない。


 そして、物陰から見ていたはずの彼の姿は、跡形もなく消えた。


 まるでそこにいなかったように。


一瞬で、店の床を踏み出す前に。  

     

 消えた。

 消えた。

 「消えた」

 消えた。

 消えてくれた。

 やっと。

 消えてくれたんだ。

 やっと。

 終わったんだ。

 消えた。

 「消えてくれた」

 「死んでくれた」


 「ッハハ」


 僕は乾いた笑いをこぼす。

 久しぶりに笑ったな。

 笑えるじゃん。僕。


 「アッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ。やったぁぁぁぁぁぁぁ。あーーーーあ。アッハハハ。フフフハハハハハハハハハハハ。よっしゃぁぁぁぁぁぁ!!!やっと消えた!!消えてくれた!!!やっと終わった!!あーーーーーーーはははははは。あーーーもーーーーうざかったぁぁぁぁ。二度と目の前に現れんなぁ。もうこの世にいないけどぅアハハハハハハハハハハハァ。おーーーーーーーわり!!!ブッフフフハハハハハハハハハハハ!!」


 彼がいない。これほど、笑えることなんて、幸せなことなんてない。


 もう名前も思い出せない彼。


 「ありがとう。君が死んでくれて、僕は本当に幸せだよ」






 「何かいいことあったの?」


 夕飯を片付け、作業がひと段落ついた母は、好きなバラエティ番組をソファーに座りながら見ている僕の隣に座り、久しく見せなかった明るい表情を浮かべながら、僕に尋ねた。


 「うん」


 僕ははっきりと答えた。

 明るく、溌剌とした、喉の奥からスッと出た声だ。


 「ならよかった。最近元気なくて、心配だったんだけど・・・・・・それならよかった」


 母は次の作業へと移るためか、ソファーを立ち上がり、リビングを出る。


 僕も良かったよ。僕も嬉しい。

 お母さんが嬉しそうで。


 「寝るかぁ」


 僕も母を追う形でリビングを出て、階段を上がる。その足はとても軽い。


 僕は自室の扉を開け、ベットに仰向けになるように飛び込む。


 僕はベットの上で虚に天井を見上げる。いつも以上に、ベットが柔らかく、心地いい。


 あれから僕は、一応誰にも見つからないように家に帰った。


 彼を探して騒がしくなると思っていたのだが、案外、そうでもないようだ。彼の日頃の生活が伺える。


 一旦、整理してみよう。僕が藤原亭に入り、その後、彼が店に入った瞬間、まさにその瞬間に、彼は消えた。


 藤原亭のあのルール。【藤原亭には二人で入ってはいけない】。

 原理はわからないが、理由はわかった。

 消えてしまうから。

 後から入った彼が消えた。それが何よりも証拠だろう。超常的ではあるが、実際に見てしまっては、信じるしかあるまい。

 こんなにも現実からかけ離れた現象が、現実にあるなんて。

 今でも、心臓の鼓動の激しさは止まることを知らない。

 これがあれば、彼だけじゃない。

 あいつらも、高みの見物決め込んでたあのクソ野郎どもも、消せる。

 そうとなれば、明日にも実行しよう。

 「今日、眠れるかなぁ・・・・」



 僕は、いつもよりも、勢いよく教室の扉を開ける。昨日はあまりよく眠れなかったが、これほど足取りが軽い登校も久しい。


 僕がどれだけ、彼に囚わられていたのか、やっと自覚できた。


 いや、僕はまだ囚われている。彼だけじゃまだ、足りない。奴らも、消さないと、僕はまだ不自由なままだ。しかしそれも、これから頑張ろう。


 クラスに入って、少しばかしの違和感に気づく。

 

 僕とは真逆に、クラスはいつもより、静けさがあった。何があったのだろう。いつも騒がしいはずの奴らすら、周りより、周りと比べても異常なほどに、寂しげであった。


 僕は早々に席につき、うつ伏せになりながら少し聞き耳を立ててみる。

 この体制は、寝ていると思わせながら、実は起きていて、聞き耳を立てていることを悟られずに近くの人の話を聞けるという、画期的な発想だ。僕発案。


 すると、忘れていた彼の名前が出てきた。


 ああ、そんな名前だっけか。


 どうやら、彼が昨日、放課後になってから行方不明になっているらしい。

 

 普段からの素行の悪さから、家出と考えられることが主であるらしいが、何か事件に巻き込まれたり、手を出してはならない人間たちに手を出したなんていうものもいるらしい。多少警察も動いているようで、いつもつるんでいる奴らも、警察からの調査を受けたとか。


 彼の失踪に関して、クラスの生徒たちの反応は千差万別。


 大してなんとも思っていないような、少し変わったことがあったから話題にしているといったものや、逆に彼の身の安全を本気で心配するもの、何か危険なものがこの街にあることへの不安などがある。問題の奴らは、一緒にはいるものの、何か話し出してもすぐに会話が途切れ、その空気に耐えられず誰かが口を開く。しかしまた途切れる。その繰り返しといったもので、その中で誰も、彼の話をしようとはしなかった。


 すると、僕へ一筋の視線を感じる。


 腕の間から、視線の主と思われる奴らへと視線を向ける。


 案の定、奴らが僕をみている。


 あの目は、疑心と言ったところだろう。僕を、怪しんでいるのか?


 まあ、どうでもいい。どうせ奴らも、近々いなくなる。消えてくれるのだから。


 すると、その奴らの一人が、こちらに歩き寄ってくる。


 その様子は、不安や恐怖が勝ち、少し震えている。その中に、怒りとも取れるものが、少し伺える。


 「おい」

 「ん?」


 聞き慣れたそのセリフ。

 虫唾が走る。

 しかし、それを隠しながら、僕はムクっと起き上がり、応答する。


 「お前、何か知ってんだろ?」


 「何を?」


 なるべく何も知らないように、とぼける僕。


 「何って・・・・あいつがいなくなったんだよ!いつもあいつ、放課後はお前と一緒にいたろ!理由は知らねえが、テメェが!!」


 そこから先は、僕には聞こえなかった。


 理由は知らない?

 何を言っている。

 お前もいたろ。

 あそこにいたろ。

 いつもいたろ。

 お前も同罪なんだよ。

 勘違いするなよ。

 被害者ぶるな。

 加害者なんだよ。

 クズが。

 気持ち悪い。

 気持ち悪い。

 気持ち悪い。

 消してやる。

 消してやる。


 まずはお前だ。

 消してやる。


 「今日、放課後、来い」


 僕は、彼が言っていた、僕にいつも言っていたことを、それを返すように、目の前の奴に言い放つ。


 「は?」


 目の前の奴の怒りに歪んだ顔に、困惑が混じる。


 このままでは、きてくれないかもしれないな。どうしたものか。


 「あいつの行方、教えてやる」

 こういえば、ついてくんだろ。


 「お前、やっぱり何か知って!!」


 奴はグイッと、僕の胸ぐらを掴む。


 「騒ぐと教えてやれねぇぞ」

 「ぐっ、んんん、クソッ!!」


 僕の襟を乱暴に離し、僕に背を向ける奴。


 楽しみだ。






 「おい」


 つくづく、彼と同じなのだろうと思える。

 奴はまた、彼と同じセリフを僕の前で吐いた。


 気持ち悪い。


 「こっちだよ」


 「さっさと教えろ」


 僕の言葉を聞いているのかどうかはわからないが、僕の言葉に従わず、乱暴に尋ねる奴。


 「これから教える」

 「だから!今教えろ!!」


 「こなきゃ教えない」


 僕の言葉に痺れを切らし、奴は拳を固める。


 想定通り、彼は僕に殴りかかる。怒りに身を任せた、ひどく不恰好な体制だ。

 僕はその拳を交わし、交わし際に僕のカバンを思い切りぶつける。

 それにより、奴はよろける。


 その隙に、僕は全力で逃げる。

 昨日と同じ、まるで同じだ。

 しかし、決定的に違う。

 こんなにも、軽い。

 予想していたこととはいえ、昨日だったら、拳を避けるなんて、僕には絶対にできないことだ。足取りもとても軽く、昨日よりも早い。昨日と違い、追ってくる奴の声もろくに聞こえない。それだけ距離が離れているのだろう。


 道を入りくみ、昨日と同じ道を通る。


 走る速度は全速力で問題ない。

 彼はちゃんとついてきている。彼の怒号で、彼がついてきていることは容易に測れる。


 そういえば、昨日の彼の怒号は、ここらの住人にはバレているだろう。もしかしたら、僕の行動がバレてしまうかもしれない。証拠がないから、これからの人生に影響は与えないが、面倒なことになることは避けたい。明日からはもっと穏健な方法で連れてこよう。


 はあはあと、息が荒くなる。


 藤原亭の前で、少し僕は膝に手をつく。


 今まで走ってきた道を振り向く。


 奴がものすごい剣幕で、こちらに走ってくる。


 僕は藤原亭の扉を開き、その門をくぐる。念の為、扉を閉めて。


 奴は扉のドアノブに手をかけ、バン!と扉を開ける。


 「いい加減!!教えろ!!」


 叫びながら、歩みを止めない。


 扉を超え、この店に入る刹那。


 奴は僕の前から消えた。僕の前からいなくなった。


 そこにはもともと、誰もいなかったように。


 「やったぁ」


 実は筋肉痛だった足から力を抜いて、僕はその場に座り込む。


 ギシギシと音を立てながら、床が少し歪むことを感じる。

 

 実験完了。


 昨日と同じやり方で、奴を消すことができた。彼と同じ。


 また一つ、解放された。


 僕はその場から立ち上がる。


 今日は疲れた。早く帰ってベットに入りたい。


 すると、起き上がったすえに頭がある位置のちょうど横に、ドクロが見えた。


 「うわぁぁぁっ!!」


 僕はそれに驚き、横に飛び上がった。


 そこから後ろの戸棚にぶつかり、商品がいくつかぐちゃぐちゃと音をたてて落ちてくる。

 肉肉しく、おどろおどろしい。まるで、人の内臓のような、人の血肉のような。


 いや、違う。内臓だ。血肉だ。それは赤黒い液体に包まれ、気色の悪い感触がある。嫌な匂いが、けれど馴染みがある、僕が最近、自身の体から感じていたような匂いが、感触がある。


 間違いない。血だ。


 僕は急いで周りを見渡す。


 見慣れた商品が、一つもない。


 人体の一部、動物の一部、黒い立方体、ガラス状の球体、何もわからないものばかり。


 ひとつたりとも、街で百貨店として名を馳せる店ではあるはずもないようなものたちが、商品棚に並んでいる。


 嫌な匂いがする。


 「おえぇぇぇえええ」


 僕はそれに耐えられず、胃の中の胃酸を吐き出す。


 それは惨めにも床に散らばり、その感触は喉に嫌に残る。


 痛い。


 「大丈夫かい?」


 横から声がした。


 怖い。


 すぐに振り向くと、先ほどまではいなかったはずの、ありはするものの、この店の性質上、役に立つはずもない店員の椅子に座っている男がその椅子に座っていた。


 「え?」


 僕は困惑のあまり、ただアホみたいに声を漏らしながら、眺めることしかできなかった。


 「さっきから様子がおかしいと思えば、商品は散らかすし、嘔吐はするし、君、大丈夫なのかと聞いているんだ。体調が悪いなら」

 「なんなんですか!!」


 耐えられない。


 僕は声を荒げて、その声を目の前の男にぶつける。


 「何って、私はただ」

 「ここはどこだ!!お前はなんなんだ!!」


 「君はなんなんだい。昨日の今日で一体全体。人間がここにくるなんて、イレギュラーもいいとこなのに。2日連続で人間がここにくるなんて」


 「・・・・はぁ?」


 僕はまた、困惑で声を漏らす。


 いや、恐怖で、声を漏らす。


 昨日も、僕以外の誰かが?


 もしかして、彼はここにきたのか?


 僕と共にこの店に入って、消えた後に?


 きえたら、ここにくる?


 いや、消えるじゃなくて、移動したのか?


 僕がここにいるってことは、つまり、昨日の彼のようになったのか?


 彼のように、消えたことになった?


 藤原亭のルール。【藤原亭には二人で入ってはいけない】。


 その理由は、片方が消えてしまうから。


 それは、後に入った方が消えるのではなく、完全にランダム。


 昨日僕が消えなかったのは、


 偶然。


 「嫌だ、、、、、、嫌だ、、、、、、、、嫌だ嫌だ嫌だ、、、、、、、なんで、、、、、!!」


 僕はたまらず、藤原亭を出る。


 周りの家々はひどく歪み、知っているようで、知らない街。

 日も赤く染まり、それは夕暮れなんてものではなく、業火のような激しく、怖い色。


 あちこちで、うめき声が聞こえる。笑い声が聞こえる。悲鳴が聞こえる。誰がいるのか?


 なんなんだ、なんで僕が。


 足が痛い。

 ひどく不恰好な走り方だ。

 そんなことはどうでもいい。


 なんで、なんでなんでなんで。クソクソクソクソクソクソ。


 「なんで僕がこんな目にあってんだ!!僕は悪くない!!なんで僕は幸せになれない!!僕は被害者だ!!僕を幸せにしろ!!なにやってんだよ!!僕を不幸にするな!!黙ってろ!!うるさい!!クズどもが!!うざってぇな!!引っ込んでよろ!!気持ち悪い!!やめよろ!!失せろ!!耐えられるか!!頼むから頼むから!!本当に、僕に関わるな、消えてくれ、黙ってろ、頼むから、近寄るな、関わるな、失せろ、黙ってろ、みるな、喋るな、やめろ、、誰か、、、、お願いだから、、、、、、、誰か」


 僕は走る足を止め、その場に座り込む。


 どうすればいいんだ。


 僕は・・・・・


 何を間違えた?


 僕はどうすれば・・・・・・・・


 べちゃっと、不気味な音が横から聞こえる。


 僕はそれに目を向ける。


 人間だと思った。

 まず真っ先に、人間だと思った。


 形はぐちゃぐちゃで、肉が爛れ、腕が頭からはえ、腹から足が生え、肉で這いずり回り、体が裂けて、そこに口がある。血を撒き散らし、異臭を放ち、うめき声を上げながら、ないはずの目で、こちらを見ている。


 人間の形なんて、微塵もしていない。

 それなのに、あれは間違いなく人間だ。


 逃げないと


 僕は立ち上がり逃げる体制に入ろうとする。


 しかし、それは叶わなかった。

 足に激痛が走る。


 気持ちの悪い、冷たい感触が足に走る。


 それは、左足のみでの話で、右足は、ただいつも当たり前にあったものがなくなったような喪失感と、今まで感じたこともないような激痛と共に感じていた。


 僕の右足が、なくなっていた。


 すぐそばには、目の前のあれがいた。


 いつのまに、ここまでいたのだろう。


 その人間が、僕の足を貪り食っている。


 「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」


 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。


 躙り寄る、人間。


 足をくった人間も、まだ足りないと、嘆いているようだ。


 二人の人間は同時に、口を開く。


 目の前の人間の歯に、血のついた跡が見えた。


 彼も、この人間に食べられたのだろうか。


 人間はそれぞれ僕の肩を、腰を、それぞれ噛みちぎる。

 

「嫌だ!!嫌だ嫌だ!!!嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!やめろ!!やめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろ!!!!!助け!!!!誰か!!!!!!!助けて!!助け!!!!助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助」

読んでくださり、ありがとうございます。


初書き小説ということもあり、つたない文章、矛盾等あるかもしれません。すいません。


文章構成力を鍛えるために始めた小説、しかしいつの間にか幼い頃から心に秘めた妄想を発散させるという部分も大いにあり、自身のエゴ的小説となっております。

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