試練からの課題——新たな戦い方
夜空の下で考える敗北——次への布石
冷たい夜風が肌を撫でる。
家の外に出た俺は、星が瞬く夜空をただ見上げていた。
試練の戦いから数時間が経ち、痛みはようやく落ち着いてきた。
けれど、俺の中では 悔しさと疑問が渦巻いたまま だった。
バスガの拳——あの圧倒的なパワーと重み。
真正面からぶつかっても勝てないことは分かっていたが、それでも あれほどの力の差 を目の当たりにすると、胸が苦しくなる。
「……俺は完敗だった。」
誰に言うでもなく、ぽつりと呟く。
それでも、ここで何も得られずに終わるわけにはいかない。
俺は 次につなげるために、この戦いを振り返らなければならない。
戦いを分析する——敗北から学ぶ
戦士としての敗北は、学者としての失敗 と同じだ。
実験の失敗を解析し、そこから新たな成功の仮説を立てる。
「何がダメだったのか?」
「何が通用したのか?」
そう考えながら、戦いの記憶を遡る。
有効だった戦法——カウンターの精度
俺の戦い方は、バスガの圧倒的な力を正面から受けるのではなく、回避してカウンターを狙う ものだった。
バスガの動きに合わせて回避し、その勢いを利用して拳を打ち込む——これは成功した。
拳は確かに当たった。
狙いも悪くなかった。
しかし——
決定的な問題——攻撃力の不足
ダメージが通らなかった。
バスガは俺の攻撃を受けても ほぼノーダメージ だった。
一瞬ひるんだだけで、すぐに体勢を立て直し、余裕の笑みを浮かべていた。
そして、あの言葉——
「そんな攻撃、俺には効かねぇよ!」
まるで、俺の攻撃がまったく脅威になっていないかのような口ぶりだった。
俺は 避けることはできても、決定打を与えられない。
それが今回の敗因だった。
つまり——カウンター戦法を活かすためには、もっと強い一撃が必要になる。
俺は心の中で コーシーに呼びかける。
《コーシー、攻撃の威力を上げる方法について、何かアドバイスはあるか?》
少しの間、沈黙があった後、冷静な声が響く。
《解析中……》
しばらく待つと、コーシーの落ち着いた声が返ってきた。
《結論:物理攻撃の威力向上には、以下の要素が必要です。》
•魔力強化を使い、瞬間的に拳の威力を高める。
•ファイアボールを応用し、爆発力を拳に加える。
《物理攻撃の威力を向上させるには、以上の要素を練習する必要があります。》
鬼族のように生まれ持った膂力を持たない俺が 純粋な力比べ をしても勝てるはずがない。
ならば、俺にできることは 魔力を活かした攻撃強化 だ。
ただの拳では鬼族には通じない。
だが、そこに 魔力の衝撃を加えれば、破壊力は何倍にもなるはずだ。
ファイアボールは、魔力で可燃ガスを生成し、瞬間的に燃焼させる魔法だ。
この原理を応用し、拳の衝撃と同時に爆発を起こせば、ダメージは飛躍的に増加する。
俺は 実験の失敗から仮説を導き出す。
この方法を試し、強化すれば、次はバスガにもダメージを与えられるかもしれない。
そして——
拳を握りしめながら、俺は今日の戦いを思い返す。
試練の終盤、ゴウが放った雷魔法。
バスガの胸に雷が弾け、閃光が走ったあの瞬間——
バスガの動きが、一瞬 止まった。
雷の痺れによる硬直。
あの一瞬の隙があれば—— 俺のカウンターも決定打になり得るかもしれない。
もし俺が 雷魔法を習得し、カウンターのタイミングで当てられたなら?
バスガのような 力押しの戦士 に対して、一瞬でも動きを止められれば 大きな隙を生み出せる。
そして、その隙に 爆発力を最大まで高めた「ゼロ距離ファイアボール」 を叩き込めば——
「……かなりのダメージを与えられるかもしれない。」
俺の攻撃力不足を 魔法の組み合わせ で補う。
それが、俺が 鬼の戦士たちに対抗するための道 になるかもしれない。
雷と炎——新たな戦闘スタイル
戦いを振り返り、仮説を立てる。
•雷魔法を習得し、敵の動きを止める手段を得る。
•雷で作った隙に、ゼロ距離ファイアボールを叩き込む。
•魔力を拳に纏わせ、近距離戦でも有効な攻撃手段を作る。
バスガのような純粋なパワー型に 正面からぶつかっても勝てない。
ならば、俺は 俺に合った戦闘スタイル を磨き上げるしかない。
「雷と炎を組み合わせたカウンター……。」
魔法と体術を融合させた、新たな戦闘スタイル。
それを 実現できれば、俺はもっと戦えるようになるはずだ。
——この敗北を糧に
俺は拳を握りしめ、ゆっくりと深呼吸をした。
悔しさが胸を締めつける。
だが、悔しさだけで終わらせるつもりはない。
「負けは、次の成長のための材料になる。」
ガルドの言葉を思い出す。
この敗北を ただの敗北にするか、次への糧にするかは俺次第だ。
《目標が定まりましたね。では、次のステップに進みましょう。》
「……あぁ。コーシー、ありがとう。」
「次は——絶対に勝つ。」
静かに誓い、俺は 新たな訓練へ向けて歩き出した。
この村で、そしてこの世界で生き抜くために——。




