外部エネルギーと呼吸――新たな魔力制御
火を灯し続けるには、魔力を持続的に送り込む必要がある。
コーシーの指摘に従い、俺は魔力を「呼吸」に合わせて流す訓練を始めることにした。
呼吸を整え、魔力を安定したリズムで流し続けることで、炎の持続時間を伸ばすことができるかもしれない。
① まず、深く息を吸い込むと同時に、周囲の魔力が体内に流れ込むイメージを持つ。
② 次に、ゆっくりと息を吐きながら、その魔力を指先へ送り出す。
③ そして、魔力が炎として形を成すのを意識する。
俺は地面に座り、ゆっくりと目を閉じる。
深く、深く、息を吸い込む。
──空気が体内に満ちると同時に、魔力が俺の中に流れ込んでくる感覚があった。
今までの魔力操作は、自分の体内にあるものだけを使おうとしていた。だが、今は違う。俺の魔力は、外部の魔力と繋がっている。
吐く息に合わせて、魔力を指先へと送り出す。
──パチッ!
火花が弾け、瞬間的に炎が灯る。
だが、今までと違う。
炎が持続している……!
俺は驚きながらも、意識を集中させる。
炎は5秒程、俺の指先でゆらめき続けた。
俺は指先の炎をじっと見つめた。
「成功した……?」
火は確かに持続した。
だが、どこか違和感がある。
炎の揺らめきが、これまでとは異なる動きをしているように感じる。
「これは……少し俺のイメージしている炎と違う?」
外部の魔力を取り込むイメージで炎を灯したことで、俺はこれまでとは違う「何か」を感じていた。
魔力の流れが、俺の意識を超えたところで動いているような……。
「まるで、炎が俺の意志とは別の法則に従っているような感覚がする。」
「俺が炎を作ったんじゃなくて、炎が勝手に生まれた……?」
その瞬間、俺の背筋に冷たいものが走った。
もし魔力が外部から流れ込んでくるのなら、それを制御できなければ暴走する可能性もあるのではないか?
「コーシー、この違和感の正体はなんだ?」
俺の問いに、コーシーが冷静に答える。
『解析結果:ヒカルは現在、「外部魔力」を利用して炎を生み出しています。これは、体内魔力とは異なる特性を持ちます。』
「外部魔力の特性……?」
『はい。ヒカルの意識が外部の魔力と直接結びついたことで、魔法の発動が変化しました。外部魔力は環境の影響を受けやすいので制御が難しくなります。』
「つまり、外部の魔力を取り込めば環境に合わせて魔法を制御する技術が必要になる、ということか……。」
俺は拳を握る。
魔法を科学的に解析し、法則を見つけようとしていた。だが、ここに来て、魔法の本質が「自分の力だけではない」ことを思い知らされた。
「……難しい……でも……実に面白い」
もしこの世界の魔法が、「外部のエネルギーとの調和」で成り立っているとすれば……
俺はまだ、魔法の入り口に立ったばかりなのかもしれない。
外部の魔力を利用して炎を起こすのは誰かに炎を持続させてもらう感覚に似ている。
炎を5秒持続させることには成功した。
しかし、それは俺の意志だけで生まれたものではない。
俺が直接支配しているというより、何かと共鳴しているような……。
炎を5秒持続させることには成功した。
しかし、それは俺の意志だけで生まれたものではない。
外部の魔力を取り込むことで、炎はより持続しやすくなった。だが、それは同時に、不安定な要素を持つことを意味している。
──もし、外部の魔力が暴走したら?
──もし、環境によって炎の性質が変化してしまったら?
俺は、自分がまだ魔法の「本当の制御」に到達していないことを痛感した。
次の課題は、「外部魔力を完全に制御し、自分の意志通りに魔法を発動させること」。
「コーシー、次の訓練方法を提案してくれ。」
『提案:外部魔力の流入と体内魔力のバランス制御訓練。 体内魔力を核として、外部魔力をそれに巻き込むイメージで魔法を発動させることが重要です。』
俺は深く息を吸い込む。
──今度は、俺が魔力を完全に制御する。
「よし、やるぞ。」
俺は炎を安定して維持するための、次なる訓練へと足を踏み出した。
魔法は単なる「能力」ではない。
それは、自分と外の世界との「繋がり」なのかもしれない。
今までの俺は、「魔法は個人の力で成り立っている」と考えていた。
しかし、実際には魔力は周囲の環境と相互に作用しながら動いている。
その事実を理解した今、俺の魔法の探求は新たなステージへと進み始めた。
「次は、魔力を完璧に制御する……。」
その決意を胸に、俺は炎を生み出す新たな訓練を開始した。
俺の目指すものは、科学と魔法の融合による「ルミナスコアの完成」。
それを実現するための鍵は、魔力の理論的制御にある。
──この世界の魔法を、俺は必ず解き明かしてみせる。




