初めての炎――儚く揺れる小さな火
魔法の修行を始めて、1ヶ月が経った。
毎日欠かさず魔力の制御を練習し、試行錯誤を繰り返している。最初の頃は、まったく手応えがなかった。魔力を感知しようとしても、その流れを掴めない。手のひらに意識を集中させても、そこには何の変化も起こらない。ただの静寂だけが広がっていた。
それでも俺は諦めなかった。
最初に成功したのは、**「火花を持続させること」**だった。
最初のうちは、指先にほんの一瞬だけ火花が弾けるだけだった。まるで線香花火の最後の燃え尽きる瞬間のように、か細く、儚い。
指先に火花を灯せるようになった。しかし、火花はほんの一瞬しか持たない。
──次のステップは、「火花を持続させること」。
魔法の書にはこう書かれている。
「火の魔法は、魔力を熱エネルギーに変換し、それを安定して燃焼させる技術である。」
だが、実際にやってみると、それがどれほど難しいことか痛感させられる。
何度やっても火花はすぐに消える。
ほんのわずかな間、指先に火花が現れても、あっという間に消えてしまう。
魔力を持続的に供給することが、思った以上に難しいのだ。
魔法の発動には、魔力を安定して流し続けることが不可欠だ。
そのために、俺は魔力を感知し、制御する練習を「瞑想」という形で行うことにした。
目を閉じ、深く息を吸い込む。
体の内側に意識を集中し、魔力の流れを探る。
──魔力は、水のように流れている。
最初の頃は、それを感知することすらできなかった。しかし、日々の訓練の中で、ゆっくりと体の中を流れる微細な波のようなものを感じ取れるようになってきた。
まるで、湖の水面にそっと指を触れ、その奥深くの流れを探るような感覚。
だが、この魔力の流れをコントロールするのが難しい。
魔力は静かに流れているが、少しでも乱すと一気に消えてしまう。力を入れすぎると暴れ、逆に弱すぎると何も起こらない。
「魔力を感じ、一定の流れを保つ……それが鍵だ。」
俺は最初、10分間魔力を感じて瞑想し、ほんの一瞬だけ魔力を流す練習から始めた。
最初の目標は、「魔力を指先に集め、1秒間だけ火花を持続させること」。
──だが、思うようにいかない。
火花は一瞬ですぐに消え、魔力の流れもすぐに途絶える。
しかし、焦ってはいけない。
前世の研究でも、1つの理論を証明するために何百回も実験を繰り返した。今回も同じだ。積み重ねることで、必ず前へ進める。
魔力瞑想を始めてから火花を少しずつ持続が可能になった。
1秒、2秒……
「……できた。」
それが、俺が初めて火花を持続できた瞬間だった。
だが、まだまだ不安定だった。魔力の流れが乱れると、火花はすぐに消えてしまう。魔力を安定して送り続けることが、これほど難しいとは思わなかった。
「もっと安定させなければ……。」
俺はさらに魔力瞑想を続けた。魔力の流れを体に馴染ませ、無意識でも魔力を送り続けられるようにする。そして、数日が経った頃には──
火花を1分ほど持続させることに成功した。
指先に線香花火のような火花がパチパチと輝き続ける。
小さな光ではあるが、確かにそこに「魔法」が存在していた。
しかし、火花は火ではない。
──次の目標は、「火そのもの」を生み出すこと。
俺はさらなる試行錯誤を続けた。
火花の持続には成功したが、それを火へと変換することができない。
「火とは何か?」
俺は科学者としての視点から考えた。
火が燃え続けるには、燃料と熱エネルギーの持続的な供給が必要だ。
魔力を「熱」へと変換し、持続的にエネルギーを送り込むことができれば……。
俺は深く息を吸い込み、魔力瞑想を始めた。
そして全身に感じる魔力を指先に集中させた。
呼吸を整え、魔力を圧縮し、熱のイメージを強く思い描く。
──燃えろ……!
その瞬間、
パッと小さな火が生まれた。
「……っ!」
指先に、かすかな火が灯る。
まるでマッチの火のように、か細く儚いものだった。
それはほんの一瞬だけ揺らめき、すぐに消えた。
だが、確かにそこに「火」が生まれていた。
ついに、俺は火を生み出せるようになったのだ。
「……できた!」
たった0.5秒ほどの出来事だった。だが、それでも俺にとっては大きな進歩だった。
火は生まれる。しかし、持続しない。
それはつまり、「魔力の流れを持続できていない」ということだ。
火を持続させるには、魔力の安定供給が必要不可欠。
それができなければ、火は一瞬で消えてしまう。
「……ここからが本当の勝負だな。」
俺は炎を持続させるための鍵を探るため、冷静に分析を始めた。
火の魔法の本質は、
「熱エネルギーの持続的な供給」にある。
1.魔力の安定供給 → 炎を燃焼させ続けるための「燃料」
2.熱エネルギーの変換効率 → 魔力をいかに効率よく熱に変換するか
現在の俺の問題は、「魔力の供給が一瞬で途絶えてしまうこと」。
つまり、魔力をもっとスムーズに流し続ける技術を習得しなければならない。
「魔力の流れを整え、一定のペースで送り続ける……それが次の課題か。」
俺は拳を握りしめた。
マッチの火程度の炎を出せるようになった。
だが、それはまだ「火の魔法」と呼べるレベルではない。
次の目標は、「炎を持続させること」。
火の魔法の基本は、「燃え続ける火を作る」こと。
そのためには、魔力を乱さず、一定の流れで送り続ける技術が必要になる。
「次は、炎を1秒以上持続させることを目標にしよう。」
俺は再び瞑想を始めた。
呼吸を整え、魔力の流れを探る。
──次の一歩を踏み出すために。
ここからが、本番だ。




