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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ガラスの繭から出たくないのに……

作者: しろかえで

しろかえでには不似合いな?R15です(^^;)

 小学4年の時、男子から“メガネザル”とはやされた。


 当時から近視で……丸っぽいメガネにツインお団子の私は、検索してみたメガネザルの画像そのものだった! その“メガネ”の中心にポツリとある黒点の瞳が凄くキモくてショックで……

「ああ!!私ってキモいんだ……」と泣けて来た。

 泣くとまずますメガネザルに似て来る気がして私は枕に顔を埋めてのたうち回り、挙句、布団を被って縮こまった。

 でも、そのまま一生過ごすわけには行かないから……

 私はガラスの繭を紡いだ。



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 小日向美空(こひなたみそら)ちゃんとは学区が違うので別々の小学校だったけど、お母さん同士が同じパート先で……中学で同じクラスになった時、美空ちゃんの方から声を掛けて来て……こんな私のお友達になってくれた。

 美空ちゃんはボーイッシュな見た目と人当たりが良くて明るいで性格で、クラスの中でも人気者!

 クラブは陸上部でトラックを走る姿も美しかった。

 そう、まるで!!小麦色に日焼けした笑顔のとっても素敵な美少年!!


 本人は「このあいだお母さんと()宿()()()()してたらスカウトされちゃった!お母さんと二人『えーっ!!』って叫んだら『息子さんには人を惹きつける魅力がある』って言われて更に『えーっ!!!』だよ! 失礼しちゃうよね!! 私はちょっとムクレたけど、お母さんはスカウトさんにお兄の写真見せてた。お兄は後ですっごく迷惑そうな顔してたけど……」なんてケラケラ笑ってたけど、私はそのスカウトさんの言葉にとても頷けた。

 だって美空ちゃんって私の理想の“男の子”なんだもん!!


 遠くから陸上部の練習を見ている私に気が付いて手を振ってくれた時の笑顔を……私は度々脳内再生した。

 机に向かって勉強している時やお布団に入ってウトウトし始めた時に……あの優しい笑顔で私の事をふんわり抱いてくれて……耳元で「大丈夫だよ」って囁いてくれる……


 私はその夢の世界で胸をときめかせ、とっても温かい美空ちゃんに体を預ける。


 我に返ると恥ずかしくて恥ずかしくて真っ赤っかになってしまうんだけど、やっぱり夢想は止められなかった。

 美空ちゃんにとって私は何人もいる友達の中の一人なんだろうけど……私にとっての美空ちゃんはたった一人のお友達で愛しい王子様なんだ!

 いつも不安に怯えてガラスの繭の中に閉じこもっている私を守ってくれる王子様!!

 そう夢想するだけで私は心安らかに寝入る事ができたんだ。



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 美空ちゃんとは中二の時は別々だったけど、中三ではまた同じクラスになれて……私は放課後だけではなく授業中も美空ちゃんを眺める事ができる様になった。

 こうして1年ぶりにずっと美空ちゃんを見る事ができて気が付いた。

 放課後の陸上部の練習はいつも熱心に打ち込んでいるけれど……授業中のふとした瞬間に、美空ちゃんの表情が曇り何か物思いに耽る。


 私はざわざわと胸が苦しくなる予感を……「きっと気のせい!」と無理に押し込めていたのだけど……


 ある雨の日


「今日は部活がお休みだから……内緒で寄り道をしよう!」と美空ちゃんが誘ってくれて私達は学校を出た。


「……そう言えば美空が大好きなお兄さんはスカウトされたの?すっごいイケメンだもんね?!♪」と話を振ったら……美空ちゃんは何も言わない。


 傘に当たる激しい雨の音で聞こえなかったのかな??

 なんて思いながらそっと隣の傘の中を窺うと美空ちゃんの頬に雨が当たっていた。


「アハハ!酷い降りだもんね」ともう一度言葉を継ごうとすると雨の筋が一つまた一つと……


 えっ?!


 美空ちゃんのただならぬ雰囲気に私は彼女の手を取り、夢中で“雨宿りできる”場所を探した。



 --------------------------------------------------------------------


 ちょうど時間が良かったのかフードコートはほぼ人が居なくて私は自販機で買ったココアを二つトレイに載せて美空ちゃんを座らせている席に戻る。


 美空ちゃんの前にココアを置いてあげたけど、美空ちゃんはまだ肩を震わせたままだ。


 どうすればいいんだろう??!!


 とにかく私のタオルハンカチを美空ちゃんの顔に当ててあげると、美空ちゃんはその上に自分の両手を重ねてしゃくり上げた。


「ゴメンね……私の方から誘っておいて……今日は(あなた)と思いっ切り遊んで……少しの間だけでも忘れようと思ったの! でも……」


 きっと美空ちゃんの身に物凄く大変な事が起きたんだ!!

 何とか力になってあげたいけど……相変らず“繭の中”に引きこもっている私には何の力も無い!! それでも!! 話を聞いてあげるくらいなら……


「ねえ美空! 私! 美空の親友だって思ってるから!! 話聞くよ! その上で私にもどうにもできない事なら……美空はイヤなのかもしれないけど、美空が大好きな尚武(しょうぶ)お兄さんに相談しよ!」


 その言葉に美空ちゃんはワーッ!と泣き伏した。

 とっさにココアのカップを二つとも掴み上げたので事なきを得たのだけど……私も両手にカップを掴んだままでオロオロしている。


「私、お兄が好きで!好きで!大好きだから!!!……」


 美空ちゃんの涙声が私の胸を突き刺し、何とも言えない感情が込み上げて来る!!


 ああ、

 きっと!!

 尚武お兄さんに知られたくない事なんだ!!


 しっかりしろ!!雛!!

 今度はお前が美空ちゃんを!!

 愛する人を!!

 守る番だろ?!!


 心の中で自分を叱咤する。


 もうガラスの繭の中に居てはダメなんだ!!


 美空ちゃんの為に!!

 出来る事をやらなきゃ!!


「……お兄求められて、拒むどころか求めてしまったの……

 だから、きっとまた拒めない!!

 それが怖いの!! 

 こんな事して

 もし!!

 ()()()()()()……

 お母さんになんて言おう??!!」.


 美空ちゃんの口から漏れ出るひと言ひと言に……

 私は凍り付いた!!

 美空ちゃんと同じくらいに綺麗な尚武お兄さんの顔が浮かぶ。


 えっ?!えっ?!


 この二人が??!!


 脳裏に“禁断の映像”が浮かびそうになって慌てて黒く塗り潰したら……

 両手の紙コップが弾け、“ココアの海”が美空ちゃんへ押し寄せてゆく!!


 ガコン!とトレイの壁を打ち込んでそれを堰き止めた時、

 ガラスの繭が砕けて

 その破片は私に向かう無数の刃となる。


 心は血を流しその痛みに悲鳴を上げながらも……

「美空は悪くない!!絶対悪くない!!とにかく今日は!!私のウチに泊まろ!!」

 って必死になって叫んでいた。




                             おしまい



本当は可愛いお話にするつもりだったのに……(*_*)



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