5 うんこ作戦
「俺、いろいろ考えるんだけど」
ぽーん、
「ほ――」
ぽーん。
「考えるのも遅い」
ものすごく天気の良い、秋の午後だった。
ナイアルのうちでも、屋上に毛布を干しまくっている。その“毛布の壁”に四方を囲まれた中で、ナイアルとウラは羽まりを投げ合う。少々手元が狂ったって大丈夫、毛布が打ち返してくれる。
「だから考えてる最中に侍従が言うんだよー、ぼーっとされて大丈夫ですかって」
ぽーん、
「気が散っちゃって、よけい考えがまとまんないよ」
「お付きはその辺に、うじゃうじゃしてんのか」
ぽーん……。
「割とね。あ、ごめん」
ナイアルの手からだいぶ離れた所へ飛んだまりが、毛布にはね返されて弾む。
「そういう時は、うんこ作戦で行け」
「何それ!」
ウラの双眸がぎらぎらっと輝く。
羽まりをぱしっと掴んで、ナイアルは不敵に笑った。ここは、歯がきらめくところである。
「お前、うんこ長いか?」
「うーんとね……。けさのは、この位だったよ!」
ウラは、両手の人差し指を平行に立てた。
肩幅だなんて、だいぶ盛りすぎである。
「いや、ブツの長さでなくて、かける時間がよ。早く出ろって急かされるほうか?」
「全然!」
「じゃあこれからは、便所で極力ゆっくりするようにしろよ。周囲に、うんこが長いやつなんだと思い込ませるのだ」
「へえ??」
「そんで考え事したくなったら、ちょいとお手洗いにって言やいいさ。お付きどもは、あ~お長くなりますのね、と思うだろ? 誰にも邪魔されん静かなる手洗いにて、じっくり熟考すりゃあいい」
「うおお、そっかあ! だからうんこ作戦!!」
ウラは両手こぶしを握り締めて、興奮している。
「臭くなりそうだぁぁ」
「いや、別に本当にうんこする必要はないんだぞ?」
一瞬静止したウラが、またしても感心するように頭を振る。
「そうか、ふりだけで良いんだね……。ナイアルって本当に色んなことを考えつくんだな。考えるのがくるくる速いんだ、うちの妹みたいだ」
「あれ、お前、妹いんの?」
ウラは自分の家族のことを、めったに話さない。
「うん。俺よりずうっと頭がよくって、すごくかわいいんだ」
ちょっと胸を張っている。
「ほ――。自分の妹が世界一の美女ってんなら、めでたいよな」
などと言いつつ、ナイアルは内心うちの姉ちゃんもなかなかいかしている、と本気で思っている。何しろ自分とそっくり同じ顔なのだから。
「あ、二番目かな」
「? 一番は誰だ、母ちゃんとか抜かすなよ」
ふるふるふるっと首を振って笑って、でもウラは答えなかった。
ぽーん、秋の青空に白い羽まりが跳ぶ。




