自己紹介 -1-
「じゃあ自己紹介しよう! 俺から!」
始めてしまえばこっちのもの。ここから先は自己紹介編だ。
「俺は「神薙浬杜くん」……趣味は「読書だねぇ」……特技は「料理ね」……「えっと……十八歳の明後日から大学一年生です」……ちょっとまっ——「胸囲は八十四センチ」俺すら知らない情報なんだけど!!」
名前、趣味、特技、年齢、そして謎に胸囲。自己紹介の全てを代弁され、思わずツッコミを入れてしまう。
ほら、またバチバチ火花散ってるよ。かなり特殊な情報を知ってたからか、翆だけが澄まし顔をしている。
皆は俺のことを知っている。この自己紹介で知ってほしいのは彼女達同士だから、俺のことはいいか。
それから、それぞれ自己紹介の時間が始まった。
「私は橘柚希です。社会人二年目の二十一歳で、今は諸事情でフリーターしてます」
「アタシは一ノ瀬梓、二十歳の大学三年生だよ~」
「牧野凛、十八歳で明後日から大学生よ」
「えっと……結城摩耶です! 十七歳の高校三年生で、吹奏楽が好きです!」
「天羽翆。十六歳、高校二年生」
ちょっと待って? それだけ?
自己紹介って趣味や特技とかも基本項目の一つじゃないの? +αで胸囲を伝えた俺が——正確には俺ではないが——恥ずかしくなる。
いいや、俺はどうでもいいんだ。このままではせっかくの親睦会が無意味になってしまう。彼女達が交流を深められるような話題を——。
「あの~、リトくん? 実は私達、引っ越す前に集まって自己紹介とかしたんだよね」
「……え?」
「ちなみにLIMEも交換済みだよん」
梓さんが見せてきたスマホの画面にはLIME——一般的なSNSだ——のグループ。
グループ名は【夢友】。しっかりと五人入っていて、少しだけ会話の内容が見える。
「……えぇ?」
もちろん初耳。アパートに引っ越してくるまで、全員が揃ったのは二回しかない。
両方共、俺の実家。一回目は二か月前、皆が訪ねてきた日。二回目は一か月前、全員の両親が集まった日。
その両方で彼女達と接することはあまりなかった。できる雰囲気じゃなかったし、時間もなかった。
が、彼女達が既に交流を深めていたのは良いことだ。
「リトと交換したい」
胸元にスマホを取り出して伺うように首を傾げる翆。
俺はスマホを取り出してLIMEのQRコードを表示。テーブルに置くと、皆はガタッとテーブルに足をつぶけながらも動きを見せた。
「「「「「……!」」」」」
「……」
LIMEを交換し終える。皆はそれぞれ自分のスマホの画面を、目をキラキラさせて見つめていた。