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合法的な五股 -1-


「大切なお話があります」


 その日の夜。部屋の中心にあるテーブルを囲む部屋着の美少女達。


 奥に柚希さん、

 右に梓さんと凛、

 左に摩耶と翆。


 そして、手前に寝起きの俺。


 二度寝から目覚めてすぐにテーブル前に座るよう促され、今に至る。


 鍵は閉まっていたはずなのに部屋にいることは後で問いただすとして。大切な話がある、というのは好都合だ。


「ちょっと最近色々なことがあって混乱していると思うので、親睦会を兼ねて決め事をしようということになりました」


「……決め事?」


「そ、決め事。アタシ達の関係って曖昧あいまいだからさ」


 梓さんの言う通り、俺達の関係は曖昧だ。つまりそれらをまとめよう、ということだろうか。


「リトくんに確認したいことがあるの。私達は約十年間、特定の曜日に夢の中でリトくんと過ごす夢を見てた」


 これは夢の内容を確認し合った日に分かったこと。それの確認。


「その中で……え、えっと。寝食を共にすると言いますか、同じ釜の飯を食うと言いますか……そんな関係に発展しましてですね?」


「なんで遠回しなのよ」


 照れ臭そうに言う柚希さんに凛が横槍を入れる。


 これは二度寝する前、俺が話さないといけないと決めたことと同じ内容だ。俺が気になってるのと同じように、皆も気になって当然のこと。


「ここにいる全員、夢の中でリトと付き合ってた。これは——五股よ」


 物事をはっきりと言う凛の性格は現実でも健在。


 五股という恐ろしい単語に胸がキュッと締まる。


「で、でも……夢の中ですし」


 フォローを入れてくれたのは摩耶。普段からこじんまりしているのが凛の威圧感でさらに萎縮している。


「夢の中でも翆の想いは変わらない」


 淡々とした声調せいちょうで言う翆が、ゆっくりと俺に視線を移す。


「リトは、どう?」


 俺の気持ち。


 夢の中で皆と付き合った記憶がある。確かに俺は皆のことが好きで、恋愛関係に発展した。それは嘘の気持ちではない。


 ただ誰か一人といる時、他の四人は頭から抜け去ってしまっていた。夢の世界には俺と誰か一人しか存在しない。


 現実は全員存在している。そんな中で俺の気持ちを伝えるのなら——。


「お、キタキタ」


 気持ちを伝えようとするのを遮るようにインターホンが鳴り、梓さんが立ち上がる。


「はーい! お願いしますー」


 カメラ付きインターホンで話して解錠ボタンを押すと、玄関に繋がる廊下に姿を消す。しばらくして、手に四角形の薄い箱とビニール袋を持って戻ってきた。


「はい、どいてどいて!」


 テーブルの上に置かれた四角形の薄い箱にはチェーンのピザ屋のロゴ。ビニール袋の中にはペットボトルの飲み物が入っていて、手際よくテーブルの上に並べられた。


「いただきまーす!」


 困惑している俺達を気にせず、梓さんは箱を開けてピザを口に含んだ。



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