五人の美少女達 -3-
聞いてみると、彼女達は口を揃えて"なんとなく行かないといけない気がした"と言った。
最初は驚きを隠せなかった。夢の中の、架空の人物だと思っていた女性達が現実に現れるだけでなく、五人で実家に訪れてきたのだから。
そして唯一の問題がある。
「……夢で皆と付き合ってたんだけど」
それは、夢の中で皆と交際していたこと。
いや、一つ言い訳させてほしい。夢の中だからと五股していたわけではなく、夢の中では彼女達と楽しく過ごすことしか考えていなかった。
柚希さんと一緒にいる時間、他の四人のことは頭に出てこないのだ。それは別の誰かでも同じ。夢の中の俺は、確かに一途だ。
「こういう場合はどうすればいいんだろう?」
彼女達と夢の内容をすり合わせた時、多少忘れていることはあっても内容はほぼ同じだった。
その時、恋人であることは誰も触れなかった。初めて現実で会ったこともあり、夢の中では付き合ってたという曖昧な関係だったのもあるだろう。
それは、二か月経った今でも変わっていない。
「……ちゃんとはっきりさせないと」
彼女達との関係をはっきりさせないといけない理由がある。
それは俺を含めた皆の両親が、僕達の関係に干渉したからだ。
皆の両親は俺達の曖昧な関係性を認知していた。それもおかしな話だが、詳しくは教えてもらえなかった。
現在住んでいる新築のアパートは翆の両親が所有している不動産。
これまたおかしな話がある。
俺と凛は同じ大学に進学するし、
その大学は梓さんが在籍してるし、
柚希さんの職場は近いし、
摩耶と翆がそれぞれ在籍してる高校からも近い。
あまりに都合の良い非現実的な現象。ただ実際にこうなっている以上、俺達は受け入れるしかなかった。
「……どうして、こうなったんだ?」
これは一か月前、俺の実家に皆と両親が集まった時に決まった話。
俺は五人の誰かと結婚しなければならない。そして、五人は俺と結婚しなければならない。
初めて聞かされた時、何を言っているのか理解できなかった。
そんな突拍子もない話を受け入れられるわけもなく、有耶無耶になっている。
このアパートに引っ越してきたのはつい最近。そして明後日の月曜日には大学の入学式だ。
「今日、皆と話そう」
俺はそう心に決めて、二度寝することにした。