8.ちんちんの生えたカツ丼
『そういえばミッチョンコ、あれからおしっこはしたの? あ、これはボクの言葉ね』
忘れてた!
「完っっっ全に忘れてた! 早くしないと! 早くどっかでしっこしないと漏れるよおおおおお!!!!」
『いやおかしいだろ。そういうもんじゃないだろ』
これどっちが喋ってるんだ?
『お前、ションベンが出る体なのか⋯⋯?』
これはチンコだな。こんなこと言われたの初めてだよ。普通はションベンが出ない体のほうがビックリされるからな。
「やっぱりこの世界の人はおしっこしないんですね」
『いや、100人に1人くらいはする』
じゃあまあまあ珍しいんだな。他の99人との違いはなんなんだろうか。
「公衆トイレとかないんですかね」
『みんなその辺にしてるよ、基本水だからな』
あ、水なんだ。てか、水って概念もあるんだねこの世界。よかった。じゃあその辺で立ちションしよ。
ジョボジョボジョボジョボジョボ⋯⋯
水じゃない。なんかピンク色なんだけど、もしかして血尿? 薄い血尿か?
チンコが覗いてきた。チンコが俺のチンコを見ている。って言ったら多分ぶっ殺されるよな。言わないでおこう。
『お前それって⋯⋯』
チンコが驚いた様子で言った。
「なんですか?」
『ちょっとこのコップに入れてみてくれ』
そう言って紙コップを差し出した。基本的に飲み物がない世界なのになぜ紙コップがあるんだ。どういう世界なんだここは。検尿みたいだな。
『ゴクゴク、グビグビグビ⋯⋯っぷは!』
飲んだ!? 大丈夫かビッグマック!
『やっぱりそうだ! おいミッチョンコ! お前のションベンすげーぞ! 伝説の有害物質「健康ナルナール」だ! 1滴で人間1人殺せるんだ! お前すげーよ!』
そう言ってチンコはぶっ倒れた。やっぱりってことは最初から見当がついてたんだろ。なんでそれをグビグビ飲めるんだよ。致死量の何倍だよ。
『ミッチョンコ、救出してくれ〜』
あ、ビッグマック。
「ビッグマックに1滴でもおしっこがついてたら俺死ぬらしいけど、ついてる?」
『フグは自分の毒で死なないっていうし、大丈夫じゃない?』
俺はフグじゃないんだけどな⋯⋯
まあいいか、チンコが死んで機嫌もいいし、飲み込んでやるよ。
俺はチンコの喉ちんこのあたりに詰まっていたビッグマックをつまんで取り出した。
「真っピンクなんだけど、マジでこれ大丈夫なの?」
ってこの状態じゃ返事出来ないか。フグの話を信じて飲んでみるか。ゴクン。
『完☆全★復☆活!』
景気のいいビッグマックの声が辺りに響いた。俺の声なんだけどね。めっちゃ嬉しそうやん。なんか俺まで元気出てきたわ。
『久しぶりのミッチョンコの喉だからねぇ。やっぱここが1番落ち着くわぁ⋯⋯』
久しぶりって言ってもそんな何時間も経ってないけどね。でも喜んでもらえて良かった。ビッグマック昨日は俺の喉死ぬほど臭いって言ってたから自信失ってたんだよ。
『いや、死ぬほど臭いよ』
死ぬほど臭いんだ。
『んで、どうするの? 魔王倒しに行くつもり?』
いや、それはチンコに脅されてただけだから。モッチンコには申し訳ないけど、俺は命をかけてまで戦う気になれないよ。村長にも数時間泊めてもらっただけだからそこまで恩もないし、魔王を避けながら餅探しかなぁ。
『そうだね、それがいい』
ねぇビッグマック、このしっこどうしよう。
『1滴で人殺せる伝説の有害物質なんだし、護身用に持っといたら? 適当な入れ物に入れて』
だよね。
そういえば説明してなかったけど、この世界の地面はほとんどゴムみたいな素材で出来ている。村長の家の床は畳だった。日本だねぇ。
なのでさっきのしっこは床でまん丸の巨大水滴になってるよ。村に戻って入れ物もらってくるか。村人は半分以上死んだみたいだから、その人たちの家から拝借しよう。
なんか村出たり入ったりしてばっかだな。それがなんだって話かもだけど。なんかそうだなって思って。
村は相変わらず半壊滅状態。1軒1軒あたってみるか。よし、ここは死んでる。紙コップがあるくらいだし、水筒もあるはずだよな⋯⋯あった! 1軒目で手に入るなんて運がいいぜ!
しっこの場所に戻ると、半分くらい減っていた。
『ミッチョンコ、これやばいんじゃない?』
なにが? どのみちこの水筒には全部入らないし、いいんじゃない?
『きっと誰かが持っていったんだよ! どこかで大量虐殺が起こるかもしれない!』
ええっ!? 確かに! 俺のせいで人がいっぱい死ぬなんてやだよ!
『でもどうしようもないよね。監視カメラとかがあるわけでもないし、誰が持っていったかなんて分かんないし』
それもそうだな。気にせず行くか。
俺は歩いた。ひたすら歩いた。数時間は歩いた。腹が減らない。喉も乾かない。足は疲れる。
『しりとりしない?』
どうせ2手目で終わらせるだろ。やんないよ。
『ゴリラ!』
やるのね。ラね、ラ⋯⋯ランゲルハンス島。
『ウンコ!』
ちゃんと続けてるやん。コ⋯⋯コーンスターチ。
『ちんちん!』
終わった。
分かった、こいつは2手目で終わらせようとしてくる奴なんじゃなくて、「ち」が来たら「ちんちん」って言う奴なんだな。肝に銘じとこ。
『いかにも』
カッコよくないことでカッコつけんなし。
『〜〜し、って言葉遣いなんかめっちゃアホに見える。いつもそうなの?』
なんだと! 言葉遣いをバカにされるのがどれだけ堪えるか分かってて言ってんのか!
『だってなんかキモいんだもん。中学生みたい』
お前さ、忘れてない?
『何を?』
俺はいつでもお前をつまみ出してその辺に捨てられるんだぞ。生きるも死ぬも意のままだ。つまり俺はお前にとっての神なんだよ。
『なんでそんなひどいこと言うの⋯⋯?』
声が震えている。ざまみろ。
『女の子いじめて楽しい?』
女の子?
『え? 今更?』
えっ。
ビッグマック時代から? メスのビッグマックだったの?
『メスのビッグマックっていうか、ビッグマックは全部メスだよ』
あ、そうなの。
てことは、ビッグマックはボクっ娘!?
萌え〜〜〜〜〜〜っ!
ってタイプじゃないんよ、俺は。
『知ってるよ。告白されて「餅」って言って振った人間だもんね』
そもそもお前は餅なんだから、男でも女でも変わらないだろ。
『ちゃんと心は乙女ですぅー! この餅もちんちんついてないからメスでしょ』
そうそう、これもだよ。しりとりの時もだけど、なんですぐちんちんって言うんだよ。そんな女子いないだろ。
ていうか、そのちんちんついてなかったらメス理論はダメだろ。ハンバーガーや餅に限らず、全ての食べ物についてるはずがないんだから。
なんなら食べ物以外でも基本ついてないもん。ちんちんの生えたカツ丼とか学校とかあったら超怖ぇじゃん。
よってお前は女ではない! ちんちん言い過ぎ!
『それはボーイッシュなボクっ娘だからなのだよ』
語尾がなのだよになった。ボーイッシュのボクっ娘でもしりとりでちんちん! なんて言わんぞ。
そんなやり取りをしていると、遠くに村のようなものが見えてきた。さっきのビッチョンコ村より大きそうだ。
なろう村のみんなー!
感想をくれーっ!
ビッチョンコ編 完!
だよ!