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4.ビッチョンコ・モッチンコ!?!?!?

『さあどうぞ勇者様、お酒とお寿司の写真ですぞ〜』


 村長はスケッチブックを片手に寿司と酒の写真を見せてきた。なんなの? この世界の食事ってこうなの? 使い回し出来るじゃん。


『手話とかやらないんですか?』


 お、ビッグマック、良い質問じゃん!


『出来るものがおらんのじゃ⋯⋯教材もないし』


 なるほど。


『いやぁ今日は本当に良い日じゃ! フォッフォッフォ!』


 笑い声も書くんだ。


『勇者様、今は旅の途中ですかな?』


『ええ、そうですよ』


『実はうちの娘が、勇者様が現れたら絶対について行く! と言っておるんですよ。それが娘の昔からの夢でしての、どうかお願い出来ませんかの』


 え、娘!? ⋯⋯逆にいいの? えへへ、えへへ⋯⋯バラ色の人生の始まりやぁ⋯⋯


『娘は我らビッチョンコ家一の秀才なんです。何かとお役に立てると思います』


 お前の苗字ビッチョンコなのかよ。びっちょびちょみたい。うちのばーちゃんも雨に濡れた時に言ってた気がする。そういえば俺の名前に似てるな。1字違いやんけ。


『おーい、娘や〜』


 村長が呼んでいるが、誰も来ない。当然だ、スケッチブックに書いているだけなのだから。


『村長さん面白いですね』


『フォッフォッフォ』


 ビッグマックと村長が意気投合している。今のボケだったのか。⋯⋯やっぱ俺要らんよな。


「モゴモゴモゴ〜⋯⋯モゴ!?」


 寝間着姿でボサボサ頭のおばさんが部屋に入ってきた。こちらを見て驚いている様子だ。


『あ、驚かせちゃってすみません。お邪魔してます』


「モゴ! モゴモゴ!?」


 おばさんはビッグマックの声を聞いてさらに驚いている。


 とんとん、と肩を叩かれた。村長がスケッチブックをこちらに向けている。


『娘です』


 えっ!?


 ⋯⋯あ、そうか、村長の娘だもんな。若いはずないよな。なに期待してたんだ俺は! クソっ! クソ⋯⋯っ!


『ドンマイ』


 ビッグマックが慰めてくれた。


『あなたが勇者様ですか!』


 おばさんが村長のスケッチブックとマジックをひったくって、そう書いた。


 またこのくだりか。


『そうです、ボクが勇者です!』


 俺マジで何も考えなくていいから、そのうち腑抜けになりそうだな。こわい。


『お目にかかれて光栄です! 村長の娘のモッチンコと申します! よろしくお願いします!』


 モッチンコ!?


 女なのに名前にチンコが入ってるの!?


 いや男でも入ってたらおかしいけども!


 てかこいつフルネームだとビッチョンコ・モッチンコってこと!? やばない? やばすぎない? そんな名前で大丈夫なのか? 大丈夫ってなんの話だ? いったいなんの話をしてるんだ俺は!!!!!!!!


『お餅みたいで可愛い名前ですね』


 ビッグマックは紳士だな。そうか、言われてみれば確かに餅みたいな名前だな。チンコだけど。


 そういえば村長さんはなんて名前なんだろう。気にならない? ビッグマック。


『村長さんのお名前はなんとおっしゃるんですか?』


『フォッフォッフォ』


 は?


 え、もしかしてこれが名前?


『けっこうみんな驚くんですがの、UFOというんです』


 よかった、フォッフォッフォはただ笑ってただけだったんだ。そうだよな、さっきも何回かフォッフォッフォって言ってたもんな。もし名前だったら怖すぎるもんな。


 んで名前UFOなのかよ!!!


 お前なに人なんだよ! フルネームだとビッチョンコ・UFOじゃねーか! 今日ビッチョンコ・モッチンコよりヤバい名前聞く予定なかったから心臓とかがビックリしてるよ!


『喉の餅もビックリしてるよ』


 人生で初めて聞いた言葉だ。いや、モッチンコとかも初めて聞いたけどさ。そうか、この世界は喉の餅もビックリするような世界なのか。気を引き締めていかないとな。


 そういえば今俺人生って言ったけど、これって人生って言っていいのかな? 1回死んでよく分からん世界に飛ばされてるのに、人生って名前でいいの? これ。


『いいよ』


 いいみたいです。ありがとうビッグマック。


『ということで、モッチンコを頼みますぞ。今日はゆっくりお休みになってくだされ』


「モゴモゴ」


 そうだ、喋れないんだった。慣れないなぁ。


『ありがとうございます』


 気が利くやん、餅。


『君がモゴモゴ言ってる間はボク喋れないからさ、こういうお礼とかのタイミングは黙ってていいよ。ボクもバカじゃないから挨拶くらいは出来るんだよ』


 挨拶出来ない奴はバカだと言いたいのか。全くもってその通りだと思います。これからは黙っておきます!


『聞き分けがいいね』


 はい!


『そっちの部屋を使ってくだされ。それでは、おやすみなさい』


「モゴ」


 あ間違えた。


『おやすみなさい』


 ごめん、咄嗟に言っちゃった。


『いいよいいよ。咄嗟に挨拶が出るのはいい事だと思うよ。でもこれから一生こうだから、慣れていこうね』


 一生こう、か⋯⋯


 そう考えるとなんか怖くなってきたな。


 その夜俺は枕を濡らして寝た。


 感想待ってます! って喉の餅が言ってました!


『ビッグマックだって何回言ったら分かるのさ!』


 すいやしぇん⋯⋯

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― 新着の感想 ―
[良い点] ややこしいですねえww。あとなろう系じゃないですねえww。あ、どっちも良い意味ですよ。 シュールな設定だけど、分かりやすい工夫がなされていると思いました。軽い気持ちで楽しく読める作品だと思…
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