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12.実は魔王は12歳!

 さて、北村村から徒歩2分。その距離約150メートル。次の村に到着した。この村にも当然のように看板が立っているのだが⋯⋯


『魔王ファン村って書いてあるね、大丈夫かな?』


 そう、恐らくここは魔王のファン達が集う村なのだろう。確かに魔王はカッコイイ。フォルムも強さも男の憧れだ。

 しかし、奴は人を連れ去る悪の権化。どこに連れ帰って何をしているのかは分からないが、村長の娘ばかりを狙っている大の熟女好きである。


 村長の娘たちはなぜか俺に惚れているので、そのうち俺も魔王に敵意を向けられるのではないかとヒヤヒヤしている。

 そんな時は伝説の有害物質である俺のおしっこ「健康ナルナール」を使って魔王を殺すしかない。出来るかは分からないが、やらなければならない時が来たらやらざるを得ないだろう。


 それにしても、自分の体から伝説の有害物質が出るというのはあまり気分の良いものではないな。1滴で人1人殺せてしまうのだ。しかも飲ませる必要はなく、肌に触れるだけでも死ぬ。

 そんな劇薬の名前がなぜか健康ナルナール。どういう意味なのだろうか。


『村に入るの?』


 入ろう。恐らくここに魔王はいない。俺が魔王なら自分の村に「魔王ファン村」なんて名前つけないからな。


『確かに。今日は冴えてるね、ミッチョンコ。餅バカのくせに』


 餅バカのくせには余計だよ。


 さて、この村に餅の情報はあるだろうか。お邪魔しますよ〜。


 早速人を見つけた。鉢巻きをした法被(はっぴ)のおじさんだ。耳の上のところに鉛筆を引っ掛けている。大工だろうか。


「モゴ!?」


 あ、こっちに気付いた。


『旅のお方ですか?』


 あ、その鉛筆で書くんだね。


『はい、旅をしております。突然ですが、この村にお餅ってありますか?』


『しゃ、喋ったぁ!』


 このくだりは絶対あるのね。そろそろ飽きてきたよな。大工のおじさんは目をまん丸にしてこちらを見ている。


 そんなおじさんを見てか、周りから村人がぞろぞろと集まってきた。皆スケッチブックになにやら書いている。そんないっぺんに見せられても対応しきれんぞ。


『魔王様の身長はピッタリ5メートル!』


 はぁ!?


 この村の奴も餅の質問無視すんの!? もしかして餅の質問ってこの世界ではタブーなのか? ていうかなんでいきなり魔王の身長なんだよ。誰が測ったんだよ。

 別の男がスケッチブックをこちらに向けた。


『年齢は12歳!』


 魔王がってこと? あいつ12歳なの? 子どもじゃん! なのにあんなデカくて強いの? しかも熟女ばっかり狙うし。おねショタってやつ? いや、おばショタか⋯⋯


 もしかして猫とか犬みたいに人間とは歳の取り方が違うパターンとか? さすがに12歳であれはないもんな。


『住所は○○○の○○の○○○!』


 なんなのこいつら! なんで魔王の話ばっかするんだよ! そもそもなんで住所知ってんだよ!


『体重は3トン!』


 めっちゃ重いやん!


『弱点は鼻と目玉と金玉!』


 人間と同じやん。ねぇ、いつまで続くのこれ。


『知らないよ』


 ビッグマックも諦めてるやん。


『健康ナルナール6滴で倒せる!』


 マジ!? そんなこと教えてくれるの!?


『誰が1番でしたか!』


 どゆこと? なに?


 ちょっとビッグマック聞いてみてよ。


『1番ってなんの話ですか?』


『今の聞いて誰が1番魔王様のファンに相応しいと思いました?』


 あ、そういうことなのか! さっきからやってるこれは魔王のこと知ってますよアピールだったのか! ここに立ち寄った旅人は毎回こんなことされてんのかな。


『ミッチョンコ、誰が良かったと思う? とりあえずボクは弱点と健康ナルナールの致死量教えたやつはファン失格だと思うけど』


 確かに。


『いやいやちょっと待ってくださいよ! そんなつもりで弱点を教えたんじゃありません! あれは魔王様は弱点を知られたところで誰にも負けないんだぞ、という自信の表れなんです!』


 なるほど、そういうことか。良いファンじゃないか。


『それに健康ナルナールなんてただの伝説で、多分この世には存在していないから教えても平気なんですよ!』


 持ってますって言ったらこいつらに引っ捕らえられるかな。


『間違いなく危険人物認定されるだろうからね』


 まさか魔王にも効くとは⋯⋯しかも6滴。俺って実は最強なんじゃないか?


『さぁ旅のお人! 1番は誰ですか!』


 住所の人だな。魔王を避けて旅が出来るからこの情報は嬉しかったんだ。


『ミッチョンコ、それってファンかどうかってあんまり関係なくない?』


 いいのいいの、真剣に審査する義理なんてないんだから。ただ立ち寄っただけでいきなりこんだけの人に囲まれてスケッチブック見せられて、なんで真面目にやんなきゃならないのさ。


『せやな。(まさ)しく正論やな』


 ということで通訳お願い。


『住所の方です』


『やったーっ!』


 喜んでる喜んでる。


『異議あり!』

『私も!』

『異議あり!』


 審判にケチつけるのありなのかよ。


『住所なんて誰でも書けるわ!』

『そうだそうだ! 俺の方が相応しい!』

『いや俺だ!』

『私よ!』


 みんな自分のことしか考えてないじゃないか! そんなんなら初めから審査してほしいなんて言うなよな! 他の旅人にもこういうことをしてるんだろうか。めっちゃ腹立つなこいつら。今作で1番見苦しい人達だ。


『ミッチョンコ、この村ムカつくわ。早く出よ』


 そうだな、こんな村に長居しちゃダメだ。どんどん人類に絶望してしまう。早く出よう。


 ⋯⋯この村にも村長の娘がいるんだろうか。


『いたとしたら何?』


 いや、また魔王に攫われるのかなって思って。また屋敷の屋根に穴が空くのかなって思って。


『もしそうだとしてもボクらには関係ないだろ。君さ、ボクと一緒にこの世界に来てからほんの少ししか寝てないだろ? そろそろ休まなきゃダメだよ』


 ビッグマック⋯⋯俺のことを心配してくれてるのか。ありがとう。


『君が死んだらボクも干からびて死んじゃうんだからね、ちゃんと自覚持ってよね!』


 そういう理由なのね。分かった分かった、すぐに村から出ますよ。村長の娘も知りません。

 村人が2回戦を始めようとしていたが、無視して村を出た。

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