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1.おっす! 俺はお餅大好きミッチョンコ! 気軽にミッチョンコって呼んでくれ!

「うめーっ! なんでこんなに美味いんだっ! 誰かちゃんと説明しろーっ! この美味さの原理を説明しろーーーーーっ!!!!」


 おっす! 俺はお餅大好きミッチョンコ! 気軽にミッチョンコって呼んでくれ! って言ってる場合じゃねぇんだよ! 餅が美味すぎてやべーんだよ! じゃあな!


「こらミッチョンコ! 夜中の2時に大声出してんじゃないわよ! その餅もろとも荒挽き肉にすんぞ! あら、ビキニくん? じゃないよ! 荒挽き肉だよ!」


「⋯⋯すいやしぇん」


 かーちゃんに怒られたので餅食いは一旦中断だ。せっかくアガって来てたのになぁ。あらビキニくんってなんだよ。親父ギャグかよ。


「早く寝るのよ」


「あいよ!!!!」


「うるせぇ!!!! じゃあな! ちゃんと寝ろよ! ⋯⋯あーうっせうっせうっせうっせうっせうっせうっせうっせうっせうっせ」


 そう言いながら階段を降りていくかーちゃん。部屋出たあともうっせうっせ言ってたな。


 あー、もう2分以上も餅を摂取してない。どうしよう、死ぬかもしれん。餅食べないと体の奥底から爆発の気配がして眠れないどころか日常生活もままならないんだよな。

 かーちゃんのいびきが聞こえてくるまで餅のエロ画像でも見て待つか。


 あ〜こんなに伸びちゃってぇ。良いねぇ。砂糖醤油もベッタベタに塗りたくられて、黒ギャルみたいな褐色肌になっちゃってぇ。


 こっちの画像も良いねぇ。海苔で隠れてるせいで全部は見えないんだけど、その見えないってのがまたそそるんだよね!


 あらあら、網に乗せられちゃってまぁ。あーでも、やっぱ拷問系はちょっと見るの辛いな。他の見よ。


 えっ!? 中にチョコを入れちゃうの!? エッッッッろ! そんなことしていいの? 逮捕されない? えっっっっっロ!


 えっ! それを焼くの!? 俺が拷問系嫌いなの知っててやってんのか貴様ーっ! 焼くんじゃねーっ!


 こっちはお汁粉だ。あんこと煮られてとろっとろになったお餅、えっちだね〜。動画見たくなってきたな。ちょっとだけ見ちゃうか。


『餅マニア必見! あんなとこからこんなとこまで全部見せちゃうよスペシャル!』


 ヘッドホンをつけて⋯⋯


 最大音量にして⋯⋯っと。


『ペッタン ペッタン ペッタン』


 ここから見せてくれるのか! 手返し上手だなこの人、すげぇ! にしてもけっこう毛深いな、白い腕毛がめっちゃ生えてる。もしかしておじいさんなのか? おじいさんがこんなレベルの手返しをしてるのか?


『ペッタン ペッタン ペッタン』


 カメラが遠ざかり、餅をついている2人の全身が映った。まさかのウサギ。ウサギが餅をついている動画だったんだ。最高じゃねぇか!


『お餅がつけたので、餅とり粉をまぶしていきまーす!』


 (きね)でついていたほうのウサギが机に粉を撒いている。そして、そこに手返しをしていたウサギが餅を運ぶ。


『あっつあっつあっつあっつあっつあっつホイっ!』


「ウッヒョウッヒョウッヒョウッヒョウッヒョウッヒョッヒョーイ!」


 思わず叫んでしまった。ババアはどうせ寝てるだろうし、大丈夫だろう。


『棒でコロコロして、お餅を平べったくしていきまーす!』


 いいねっ! いいねっ!


『っとその前に〜、粉のついてないアッツアツの部分をつまみ食い〜っ! う〜んおいしぃ〜!』


「アーーーーーーーーッ! ンマソーーーーッ! ダッ! 俺も食べたくなってきたああああああああ!」


「うるせぇ! 何時だと思ってんだ! 3時だぞ! はよ寝ろハゲ!」


「すいやしぇん⋯⋯」


「うるせぇ!!!! じゃあな!!!!」


 かーちゃん怖ぇ⋯⋯


 怒るんじゃなくて、耳栓して寝ればいいやんね。そうすれば俺もかーちゃんも平和に夜を過ごせるのに。


 さて、餅のつまみ食いを見てしまったからには餅を食べぬ訳にはいかぬだろう。食べよ。


 あ、お茶あと少ししかないな。冷蔵庫から持ってこよ。かーちゃんにバレないように、抜き足、差し足、忍び足で⋯⋯っと。


 電気もつけない方がいいな。とりあえず冷蔵庫を開けよう。

 ⋯⋯ん? ペットボトルの飲み物が1個もない。買ってないんかな。


 仕方がないので冷蔵庫を閉めると、扉に張り紙があるのに気がついた。


『夜中に餅を食べるつもりだったんだろ! 飲み物なんてねーよ! 夜だけ水道も止めてやったわ! ざまみろ! 母より』


 ムッキーーーーーッ! 腹立っつー! いいよ、飲み物なしで食ってやらぁ! 見とけよ! いや、見ないで! こっそり食うわ!


 2階の自分の部屋に戻った俺は椅子に座り、机に置かれた餅と向き合った。餅がこっち向いてるのかどうかは分からないから、向き合ったって言わないかもしれないね。


 少しずつ食べれば喉に詰まったりなんかしないんだよ。ゆーっくり食べようじゃないの。夜は長いんだしさ。


 さ、いただきますよっと。


 パク⋯⋯


「うめーっ! なんでこんなに美味いんだっ! 誰かちゃんと説明しろーっ! この美味さの原理を説明しろーーーーーっ!!!!」


 美味すぎる! こんなん何個でもバクバクいけるわ! うめー! うめすぎー! うーめん!


 うっ! 詰まった詰まった! 飲みもん飲みもん⋯⋯ああーっ!


「うるさいねぇ! ⋯⋯ってミッチョンコ! どうしたの!」


「モゴモゴモゴモゴ! (餅が喉に詰まった!)」


 上手く言葉にならない!


「どこか苦しいの? どうしたの? 救急車呼ぶ? 大丈夫? 何か言ってよミッチョンコーッ!」


 やばい、苦しい、もうダメだ。


「モゴモゴモゴモゴモゴモゴ⋯⋯(お母さん、今までお世話になりました⋯⋯)」


 こうして俺の17年の人生は幕を閉じた。





 はずだった。


 気がつくと、俺は見知らぬ場所にいた。どうやら死んではいないようだ。


 周りに見えるのは、大きな山と小さな小屋と、中くらいのおじさん。とりあえずおじさんにここがどこか聞いてみよう。


「モゴモゴモゴ! (ここはどこですか!)」


 えっ!?


 俺、喋れてないやん! まだ餅詰まってんの? じゃあなんで生きてんの? そういえば、俺今呼吸してない⋯⋯


 やっぱ死んでるんだ。


 おじさんは不思議そうな顔でこちらを見ている。ごめんな、モゴモゴ言ってるだけじゃ分かんないよな。


 不思議そうな顔をしながらも、おじさんは口を開いた。


「モゴモゴモゴ、モゴモゴ」


 お前もなのかよ!!!!!!!

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