暗い過去
俺は昔起きた事件には常に背を向けてきた。しかし、ここに来てそれをこじ開けようとする人物が現れるとは思わなかった。俺たちは茶の間に腰を下ろしてお互いの目を見つめている。すると急に、
「僕の目を見て何か感じたかなぁ〜」
と軽い口調で聞いてきたのだ。
「いえ何も、強いて言うなら眼帯が気になります。」
「やはりそうか。まぁ、気にしないでおくれ。この後、お茶が来るらしいからその時に今後のことを話すよ、それにしても君は聞いていた通りサッパリとした性格だね。」
と笑いながら言ってくる。
俺は今後とは?と思ったが特に教えてくれそうではないので座ってばあちゃんを待つことにした。
そのまま、2、3分待つと婆ちゃんがお茶を持って入ってきた。
そしてばあちゃんも茶の間に座布団を引いてきてそこに座り、満を辞したように大炊御門が話し始めた。
「まぁ、遠回しに言うのもあれだし率直に言うんだけど今回は君の10年前の事件についてだ。」
ばあちゃんはこのことを知っているらしく冷静だ。
「10年前君は何を見て何があったか覚えてる限り喋ってみてくれるか?
かなり深い記憶の傷として残っているから無理やりにとは言わないが」
俺は思い出そうと頭を絞る。
唯一思い出せるのは2足歩行の黒い体毛に覆われた生物こちらにゆっくりと近づいてくるあの禍々しい光景。
その光景は脳裏に焼き付き1枚の写真として海馬に埋め込まれている。本当に思い出すだけで苦しい。
「俺は10年前幼馴染みの凛と一緒に山に遊びに行った時たまたま森の中で動物を見つけたと思った。なんとなく好奇心だけで凛も連れて森の中へ入って少し開けた小川の流れる所に来た時、そいつが振り返えると俺は動かなくなっていた。そして、そのまま・・・・。」
その先の記憶ほとんどはない。
しかし、あの時に見た光景は恐怖として俺の記憶に残っている。
それを聴き終えて少しの間のあと婆ちゃんが話し始めた。
「そのあと見つかったあとあの子の眼の奥にはこの子の祖父で私の夫と同じ黒い光がみえたんです。」
それを聴いた大炊御門は少し考えているのか前髪をいじりながら1点を見つめている。さっきとは違うオーラが彼を包んでいた。そう、俺の目だ。
「こんなこともあるんだなぁ〜」
と薄気味悪いニヤケ顔を浮かべながらこちらを見つめていた。本当によくわからない人だ。
「で、わざわざ出向いてもらったのにも訳があるんですか?」
「ご名答。君をスカウトしにきたんだよ。まぁ、簡単に言うと殺し屋なってくれないか?」
は?俺は今までの会話を一瞬で振り返ったがなんでこんなことになっているのかわからない。いきなり言われても対処はできない。俺はあまりに急にそんなことを言い始めたので混乱してなんの言葉もです目を開いて狼狽えていると
「殺し屋と言っても相手は人間じゃない、むしろ人間より厄介な存在さ。特に君の中にいるものを殺すのはなかなか骨が折れるからね。」
そんなことを言われて自分の胸に手を当てる。その瞬間意識が奪われて勝手に口が動く。
「あの時から気づいていたんだなぁ、どの時代の英傑九獄家もめんどくさいなぁ〜」
「やっぱり、君は誰なんだい?」
「教えたら君たちは対策してくるだろ?ましてや極上の身体を手に入れたんだ。簡単に手放すわけにもいかないな〜。」
冷静な声いつもの俺の声より1トーン低くなっている。
「この子はやっぱりそっち側ではキーパーソンだったんだね?この子からは君たちと同じあっちの世界の匂いがしていたからね?確か名前は月野木だったかなぁ〜。初めて殺した英傑も月野木だったはず、血統が途絶えてなくて森の中で出会った時に驚いた。」
「君が殺した月野木家の人間は分家の人間の当主さ、英傑でもなんでもない。」
冷たく大炊御門が言う。
「たいしたことないと思ったら英傑じゃなかったのかこれだから英傑の血の濃いい奴は困る。」
俺は不敵な笑みを浮かべながら喋っている。気分が悪い。
「ここで、おまえを殺して英傑の首を揃えるのも悪くない。」
「君なんかに簡単にできるのかなぁ〜、君の寝ていた1200年の間に私達がどれだけ強くなったかも知らずに」
「同感だなぁ〜、この1200年ただ寝ていただけではないことを証明してやろう。」
その瞬間俺の意識は遠のいていった。
ウキウキ