閑話:未知の魔物、襲来!(すっとぼけ
今日は白の月が輝く夜、白夜。
白夜の時は、魔物の動きが大人しくなり夜だというのに日中のように明るいため。普段より安全に野営できる日です、
小さな村を巡る行商も明日無事に街に辿り着けば、今回の行商は無事に終わります。白夜の日を幾度となく夜営しているので不安もありません。
そう思っている時期が私にもありました、はい
視界を確保して安全に通れるように計画的に伐採されたカナタッソ林道の奥部が騒がしくなったのです。
私は、まだ寝ていないであろう妻を起こし万全の体制で動けるように準備しました。
ゴブリンの鳴き声が複数聞こえていたので、森の奥に入り込み道に迷った新米冒険者が複数のゴブリンを刺激して逃げているのだろうと、とんだ思い違いをしていました。
「人っーーーーー!!!!助けてーーーーー!!!!」
人声が聞こえたので、やはり新米の冒険者なのかと改めて思いました。
ふと冷静に考えなおせばゴブリンの足の速さなら囲まれなければ無事に逃げれる魔物です。
私は、行商人ではありますが多少は魔物相手の心得はあります。私を見つけたのならば恐らくこちらに来るでしょうからゴブリン程度ならば散らそうと判断して人声が聞こえる方を注視しました。
「・・・・・・・・・・・・・・・・えっ?」
それは2メートルもある人の手をした魔物が人の声を喋りながらゴブリンを引き連れ、私たちを襲い掛かろうとしていた魔物集団だったのです!
指は長く手のひらには大きな口と牙があり舌を伸ばしながら涎を垂らしながら足がないにも関わらず人が走る速度で迫ってきています!人の言葉をかいして!!!
人の言葉を話せる魔物は高位の魔物の特徴であり、見た事もない新種の魔物!
戦って勝てるわけがないっ!私はすぐさま馬車を出す判断をして夜通し走る覚悟でカナタッソへ向けて走り出しました。
恐らくは高位の魔物相手には無駄だとは思いますが、主に動物系の魔物に有効な魔物用の餌をばらまきました。
「お願いっーーーー!僕も馬車に載せてっーーーーー!魔物に襲われてるのっーーーー!!!!」
どう見てもゴブリンより凶悪そうな魔物が人の言葉を巧みに操り騙そうとしています!あの凶悪な姿を見て、誰がどうして助けようと思うのでしょうか?
騙されて食べられるに決まっていると何故思わないのか?
人の言葉は理解できても人の考えを理解できないのでしょうか?
どうやって動いているのかは不思議ですが、魔物とはそういうものだと思い雑念を取り払い馬車が壊れてもカナタッソの街まで辿り着ければと、馬に鞭をいれ速度を上げました。
途中でゴブリンは魔物の餌に夢中になったようで最初に姿が見えなくなり、それから暫くして手の魔物の姿も見えなくなりました。
ですが、私は念のためにカナタッソの街まで休まず移動することにしました。
「あれは一体なんだったんだろうか・・・?」
妻と共に怪訝な表情を浮かべ、白夜の日に見た事もない魔物に襲われたことは何かの前触れでないのかと考えましたが、出た結論は至極まともな事で「街についたら報告しよう」に落ち着きました。
夜明けには無事カナタッソの街に辿り着けました。この時間には中に入る人は少ないせいか、それなりの速さで街に向かっている私の馬車を不審な表情で見ているようです。
私は馬車の速度を緩め見張りの兵士の検査を受けながら夜中に起きた事の顛末を世間話がてら話しました。
兵士の方から上に話を伝えるとの事でしたが、私の方からも改めて伝えられる場所に報告するつもりです。
その後、裸の男が保護された事から盗賊と見間違えたのではないか?という話になったようです。
いずれにしろ見回りを増やす事にはなったので、ひとまずは安心でしょう。
どちらにしろ小さな村を回って生活必需品を売り、村の特産品を代わりに仕入れたのを捌くまで街を出る事はないので、これ以上気にする事ではないでしょうね。
次の行商までに安全が確保されることを祈るばかりです、
2話目だと思ったら閑話だった。
書いた本人が一番困惑している模様