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楽器のように美しい声
それはまるで
楽器のような声だと思った
窓が開け放たれた洋館の一室で
朗らかに響くヴァイオリンのような
金色の光降り注ぐ教会で
そびえ立ち奏でられるパイプオルガンような
夜も更けた静寂な自室で
自らの手によって心の安寧のため
音が生み出されるタングドラムのような
あなたが発する声は
恋焦がれる私にとって
まさしくそれらだったのだ
あなたの声が熱を帯びて
私の文章を文学的になぞり破裂させる
あなたの声が近しさと揶揄いを持って
私の名前をぶっきらぼうに呼ぶ
そして
あなたの声が自然な笑いを発する時
この世にこれ以上美しい笑声はないことを
確信する