そんな仲じゃないもんね
今日で君と会うのが最後だからって
どんな話をしようとかは決めないよ
だって、私と君はそんな仲じゃないもんね
お互いけなし合って
お互いけなされてるのにもかかわらず
最後に笑い合うの
意味のない瞬間に叩いて
意味のない瞬間に叩かれて
別に言うことはないの
言ったかな?
私、バイト先でね
けっこう昔の友達に会うんだよ
もう二度と会わないだろうなって思ってた人が
お客さんで来たりするんだよ
だからね、もしかしたらね
君にもどこかで会えるかもしれない
“確実に君に会える日”は
今日で最後だけど
“君に会えるかもしれない日”は
これからも広がっていくと思うの
本当はね、最後まで君のことが好きかどうか
分からなかったんだ
君のことこんなに考えてるのに
好きかどうか分からないなんて変かな
君は私のことを
あの可愛いモデルの子に似てると言ったの
誰にも言われたことないし
まったくこれっぽちも似てないと思った
どういう意図で言っていたか分からなかったから
ムキになって否定し続けるしかなかった
君は笑って、主張を繰り返す
その積もり続ける「どうして」の中
隠していたのは複雑な嬉しさ
可愛いと言われてるみたいで、実は照れてたのに
その反面、なぜか自分が嫌になった
君のその調子の良さに
だまされないように、だまされないように
私はいつのまにか
好きという感情を持つ前に、手放していた
そばで話せるだけでいいや
君と話していると、よく分からないけど
おもしろいから
……ずっとそう思ってきた
でも、ほんとよく分からない
「また会いたいね」って
息がつまって言えないんだよ
友達なら簡単に言えそうなのに
私と君は友達だったのかな
こんなに、二人のうちの片っぽが
もう片っぽを想ってるのに
これって友達なのかな
一度だけ、君の前で顔が赤くなった
それは、私がぼんやり
通り過ぎる人々の方を向いていた時のこと
君は私をからかうように
「あの人のことかっこいいって見とれてんの?」
と言い隣りに現れた
私はハッとして君を見た
君が言ったあの人という人物が
誰のことかも分からない
ただハッとした
その時私が考えてたのは、君のことだったから
このタイミングが、恥みたいに思えた
「……は?」
君はそう反応して
耳まで真っ赤になった私に向けて
「なんだ、こいつ」って顔したね
私も自分で自分に思ったよ
なんだこいつ、って
でもね、仕方ないよ
やっぱり好きだったんだよ
最後はね、君は右手をあげて帰って行ったよ
最後はね、いつもと同じだったよ
本当に最後なのかなって
その時は信じられなかったんだ
でもね、その最後からもう三年会ってないんだよ