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『宙の本』

大きな窓にもたれて座り

(そら)の名前をつぶやく君の姿は

僕以外の誰も知らない


共に住み始めて数ヶ月が過ぎ

君が透明になっていくようなそんな空気の中で

僕は君の本当の姿を見ているような気がした


家の外に出ると

君は普通の女の子と変わらない空気間の中

友達に交じり、ただ笑っていた




朝と夕方と夜

二人、家の中で過ごしていると

君は不意に窓にもたれて座り

一冊の『宙の本』を開き

その空を背景に宙の名前をつぶやく


それは本来の君の姿


たまに消えてしまいたいと思えるような世界の中で

君が自分を保つための方法


僕の前で

君は“君を創る過程”を

見せてくれているような気がした


ほのかに嬉しい気持ちと

ぼんやりとした不思議な気持ちで

透けて消え入りそうな姿の君を見つめる


そんな状態で

僕の目と君の目の焦点が合った時


視線が交わったから

何か言おうというような

そんな心くばりは

二人の間にはなく


ただその時に存在するのは

「このままの君を僕が誰にも壊させない」

という想いだけで


君はまた『宙の本』に目を落とし

呟く声がまた微かに天にのぼる

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