王都とウツボと(4)
「リヴァイアサン……そんなの文献にあったか?」
「かなり昔の物しかなくほぼ神話でしたが間違いありません」
そう言ってデオさんの後ろにいる騎士の一人がなんかボロボロの本みたいなのをタリアさんに渡した。
それをパラパラと捲るとでっかいウツボの描かれたページで止まった。
相変わらず読めない字だけどまあデザインは確かにそっくりだ。
でもどう見てもウツボ。
リヴァイアサンてなに。
リヴァイアサン兵長。
なんかそんな名前のキャラクターがいた気がする。
進撃の魚人とかいうアニメのアレだった気がする。
確か名台詞が『動くんじゃねえよ綺麗に噛みつけねえじゃねえか』みたいなの。
「で、正体がわかったのはいいですけどどうするんです?アレ、あのサイズじゃ釣り上げるのは無理ですよ」
そもそも陸地に来てからじゃ遅いし船じゃ近付くのも困難だろう。
再びリヴァイアサン兵長の方を見ると周りにタコや大型の魚の群れも幾つか見える。
「しかも他にも色々いるみたいだし」
「ううむ、しかしあの形の魚に見覚えがあるんだろう?何かいつもみたいに対処法はないのか?」
「あんなに激しく泳ぐウツボは見たことないですよ」
大体岩影とかで静かに獲物を待ってるタイプの魚なイメージしかない。
「好物は?」
「え、私ですか?魚です」
「お前じゃなくてアイツだよ馬鹿」
馬鹿って言う方が馬鹿なんだよ。
「肉食なんで大体何でも食べますよ、適当なサイズのエビとか肉とか団子にしたら食べるんじゃないですか?」
とはいえあのサイズのやつが食う団子なんて今から作って間に合うんだろうか。
作っても食いつく保証はないし。
「弱点は?」
「うーん、締める時は首の後ろを叩っ切りますけど」
とは言え周りの魚介類兵士達をすり抜けて頭頂部にたどり着いて尚且つ頭を切るなんて至難の技も良いところ。
「よし、私とエナとデオでアイツの頭に飛ぶ、他の者は船で周りの兵士を足止めしろ」
「アホ?アホなの?」
そもそもなんでタリアさんが指揮してんだ。
騎士団に戻る気マンマンか。
「出来るさ、転送魔法のエキスパートもいるからな」
つまり私達を魔法であの巨大なウツボの頭に跳ばして締めるつもりか。
デオさんが騎士達にも指示を出して皆いつの間にか散っていた。
「ほらボケっとするなら私達もいくぞ」
そう言って有無を言わさず私をお姫様抱っこして城の方に向かう。
「ちょっとちょっと!」
「なんだ」
「せめておんぶにして!」
お姫様抱っこ初めてじゃないけどさ。




