王都とウツボと(3)
「この魔力?とかいう、生命エネルギーとかいうやつ何物なんです?」
「何物と言われてもなぁ、魔力は魔力だし生命エネルギーは生命エネルギーだとしか言い様がないな、空気みたな物だろうか」
まあ確かにエネルギーが何かと説明しろと言われても難しいか。
でも魔力角とかいうのが無くても生きてる生物だってこの世界にはいる。
だとしたら角の有無の差はなんだろう。
生命力の強さとかなのかな。
でも決してこの角付きの生物の生命力が弱いかと言うとそうでもないし。
魚だけじゃなく野うさぎや野犬にも角が生えてるのを見たこともある。
第二の呼吸器官みたいな物かな。
うんわからん。
「ま、なんでもいいが、とりあえず私は帰るぞっとそうだ忘れてた」
そう言って小瓶を二つ投げて来た。
ナイスキャッチ私。
「っと、これは……ニーサに貰った瓶じゃないですか」
「何かと必要になる可能性がある、一応持っておけ」
瓶には相変わらず蛇と鯨のイラストがそれぞれ描かれていた。
中には液体が入っている。
「そう言えばこれ結局なんなんです?」
「気になるなら開けてみればいい、私はもう試したぞ」
いつの間に。
「ま、お楽しみは残しときますよ」
「ん、そうか、まあ準備は……」
タリアさんの言葉を遮り若い騎士が走ってきた。
例の生意気騎士とは別人だ。
なんだか慌ててる。
「タ、タリア団長!」
「団長はやめろ、来たか?」
「は、はい!あっちです!」
そう言ってタリアさんに双眼鏡を渡して海を指差す。
指差された方向を双眼鏡で見たタリアさんがなんか頷きながらうんうん言ってる。
「おーなるほど、そう来たか剣先団」
「なんです?」
「いやーなるほど」
「いやだからなんですか?」
「うんうんなるほどなー」
「しばくぞ!!」
コントみたいなやり取りをしてたらデオさんが騎士を数名引き連れて同じく駆けて来た。
それを見てタリアさんが私に双眼鏡を渡して来る。
同じ方角を覗くもなにも見えない。
一面の海、いや、遠くの島がチラッと見える。
いい双眼鏡だね。
そうじゃない。
「え、なんです?あの島が何か?」
「そっちじゃない」
と私の首を両手でがっしり持って少し左に傾ける。
なんだか遠くの方で波がザバザバと立ってる。
「津波攻撃ですか?」
「それもハズレだ」
良く見ると波の真ん中でデカイ尾ヒレみたいな物が上下してる。
「魚?」
チラリと頭が見えた。
見覚えがある。
この世界でじゃないが。
何度も堤防で餌取られた。
双眼鏡を若い騎士に返すとデオさんが私とタリアさんの顔を交互に見ながら喋り始めた。
「たった今観測隊からの報告で海上に巨大生物が出現、過去の情報とすり合わせた結果、騎士団はアレを伝説の生物、リヴァイアサンと断定しました」
「なるほど、確かにそれなら王都を滅ぼすぐらいは訳ないだろう」
と納得されてるタリアさんには悪いけど。
「いやアレでっかいウツボだよ」
何回釣りの邪魔されたか、何回釣れたかわからない。
通称海のギャング。
ここから見た感じ数百メートルある。
今まで釣り上げてきた化け魚の比じゃない。
あんなのどうすんだ。
味は結構いいけどね。
というかあんな巨大な魚今まで何処に居たんだ。
 




