王都とウツボと(1)
「釣れるのか?」
王都に来て三日、例の襲撃予告から何も動きが無いまま時間だけが過ぎていく。
「まあ、ボチボチですねぇ」
騎士達は戦闘準備を着々としている中私は海辺でチンタラと釣りをしていた。
船着き場の近くにいい感じに堤防みたいな場所があったので適当に揃えた餌でサビキ釣りをしている。
まあ戦闘に対して準備する物ないし。
ここはいい場所だぁ。
竿をしゃくると自分でミンチにして来たエビが水中の籠の中で散らばっていく。
地球から持ってきたサビキの仕掛けが後ちょっとしか無いけどまあ無くなったらこの街で仕入れられる物である程度揃えよう。
「おっ」
竿先に圧が掛かる。
くいっ。
リールを巻いて仕掛けを上げると鯖と鯵と鯵と鯵。
角付き。
「鯵多くね?」
それを針から取りバケツへ。
「お、凄いじゃないか」
「サビキなんてこんなもんですよ、まあ型が小さいけど」
結構数は釣れる、まあ十から十五センチか。
サビキならこんなもんか。
「剣先団って全員あのモンゴウみたいな感じなんですかね」
全部タコなら楽っちゃ楽、眉間にぶちこむだけでいい。
「ああ、どうだろうな、魚の形したやつもいるらしいぞ、もしかしてお前が釣ってきた魚達の怨念じゃないだろうな」
ええ、やめてよ。
もしかしてそれを成仏させる為にこの世界に飛ばされたとかじゃないだろうな。
そしたらどんだけの数相手すればいいんだかわかったもんじゃないぞ。
「まあそれはいいが、これが今日の晩飯か?」
「美味しいですよ、刺身にするには小さいですけど、揚げ物とかいいかも」
この世界のソースは結構フルーティーな感じする。
パン粉みたい調味料もあるし。
フライ美味いよね。
「そういえばヴィヴィは?」
「ん?ああラヴィと買い出し中だ、化け物が攻めてくると言っても生活はあるからな、とお前には言うまでもないか」
釣りしとるでこちとら。
ラヴィヴィヴィコンビ。
ヴィが多いな。
「タリアさんは戦闘準備しないんですか?」
「まあ今のところ無いな、私の武器はこのナイフでいい」
そう言えばずっとその腰のナイフ使ってるけど何か思い出の品とかなんだろうか。




