騎士団とナマズと(15)
そもそもそんな責任感マシマシなキャラはタリアさんには合わない。
さっさと吐き出してもらおう。
「十年も前の話だ」
目を瞑って噛み締める様に話始めた。
…………
当時の私は騎士団長だった。
歴代最強なんて言われていた。
その事で天狗になっていたんだろう。
王都の害になる物を数々退け。
村々を助け。
人々を助けていた。
だから思ってしまった。
今なら奴をも倒せると。
我等エルフの怨敵、私の親の仇、あの化けナマズを。
私兵の様に騎士団を使った。
エルフの皆には反対されていた。
手を出さない方がいいと。
諦めた方がいいと。
でも私はもう既に勝てるつもりでいた。
奴に対峙した時、もう復讐は終わったつもりでいた。
そう、復讐だったんだ。
個人的な。
それでも気を抜かず、最後までしっかり戦ったつもりだった。
結果的には全滅、奇跡的に死者はゼロだったが見ていたエルフ達が倒れた私達を全員回収してくれた。
魔力を吸収する鎧の様な鱗にも、人を切り裂く鋼鉄の鞭の様な髭にも手も足も出ずに完敗だった。
そうして私は私怨で無茶をさせてしまった騎士達に負い目を感じて里に逃げ帰ったという訳だ。
…………
「後で聞いた話では最後やられそうだった私達の前に見知らぬ冒険者が入って助けてくれたらしいがな、ここまでが無様なエルフの昔話だ」
そう言うタリアさんの拳は血が出そうなくらい強く握られていた。
「なるほど、結局あの化けナマズが発端だったんですね、でも誰も死んでないならもう許されてもいいんじゃないですか?」
「そうです!誰も貴女を恨んでない、我々も納得して付いていったんです!戻ってきて下さい!」
王様の一番近くにいた一等背の高い騎士が鎧をガシャガシャ揺らしながら段を降りてタリアさんの前に来た。
この人が今の騎士団長だろうか。
「私を許すなデオ、私は許されない事をした」
デオと呼ばれた青年はタリアさんより頭一つ大きかった。
「でもあの化けナマズはもう倒したじゃないですか、タリアさんが気負う事なんて何もないですよ」
もう十年も前の話なら時効もいい所だ。




