騎士団とナマズと(14)
そしてこのお婆ちゃん行商ちゃんと面識あるのか。
「あ、でも同じ物をタリアさんも飲んでるはずですけど」
それを聞いて私から目を離してタリアさんを見るがすぐに視線が私に戻ってくる。
「いや、タリアは問題ないな、既に体外に排出されておる、本来はそういう物のはず、恐らくはお主の体質による融合と見ていいだろう」
適応という能力がこんな所で私の足を引っ張った訳だ。
「実は今丁度地球からの来訪者がもう一人この世界にいるがね、その者は数名のパーティーで旅をしておる」
「え、勇者みたいな事ですか?」
どこまでファンタジーを突き詰めれば気が済むんだ。
「うむ、その男は魔王を倒すという使命を帯びてな、しかしお主……使命が見えぬ」
私も~。
その勇者はそういう使命でこっちに来たとして。
私は?
なんの理由があってこの世界に来たんだろうか。
ここに来る前の私が何か願ったんだろうか。
例えば異世界の魚を釣りたいとか。
……ありえるーー。
というかそれしかねーー。
「わ、私にもわかりません」
そう答えるしかない。
まさか釣りしたいからこっちに旅行気分で来ました何て言えない。
「そ、そうだ!その勇者の名前って?」
もしかしたら知り合いとかだったりしたら会って話が出来るかも知れない。
「その者は……」
お婆ちゃんの言葉を遮って扉がバーンと開かれて兵が一人慌てて入って来た。
「も、申し上げます!剣先団より再び予告状が届きました!」
あのタコ集団、まだ諦めてないのか。
その手紙を王様の所に持っていって跪いた。
手紙に目を通して王様が立派な髭を弄る。
「うむ、来訪者よ、すまぬがまた手伝ってはくれぬか」
「え、私ですか?」
「しかし王!」
騎士団の一人が一言申そうとするが王様がそれを制する。
「先日そなたが討伐した剣先団のモンゴウ、アレは騎士団と長きに渡り戦いを繰り広げて団長すら互角以上の勝負をされて圧されていたのだ、それを一瞬で仕留めたとあれば最早その力は疑いようがない、報酬も弾もう」
タコに苦戦するとか。
魚介初心者かな?
「……いいですけど、条件があります」
どのみちすぐ帰れないなら仕方ない。
「おお!そうか、して、条件とは?」
誰も話してくれないし、一つ重要な事を忘れていた。
「タリアさんが騎士団を去った理由を教えて下さい」
何故去らなければならなかったのか。
あれだけ立派な館があり、騎士達も帰ってきて欲しがってて、それでいてタリアさんのたまにするあの寂しそうな辛そうな顔。
知っておかなければならない。
「……まだ話しておらぬのか」
「…………」
王様の問いかけにタリアさんは目を反らして応えなかった。
「……話します」
とても話したくなさそうだけど口を開いた。
これは茶々いれないで聞こう。




