ドワーフとカマスと(8)
村から三人で出て私達が来た方とは別方向、人の手が殆んど入っていないほど草木が覆い茂るほぼ林みたいな所でドワーフさんが止まる。
大体小一時間歩いただろうか。
「この先だ、この先に水車があってそこから水を引いていた」
しかしこんな林じゃ入っていかないと化物の姿も見えないな。
「ドワーフさん」
「スランだ」
「えっ」
「オイラの名前だよ、ドワーフさんのままじゃ何かと不便だろ」
まあこれからドワーフの村に行ったりする時にドワーフさん居ますか?じゃ皆が皆ドワーフさんだしそれもそうだ。
「じゃあスランさん、その化物ってどんな姿してるんですか?」
最初に聞いとくべきだった。
忘れてた。
「ああ、そうだな……蛇みたいな細長い体だろ、細長いと言ってもデカイから太いんだけどよ」
やっぱり大蛇か?
「それでいて尖ったくちばしに」
くちばしって鳥系?
ドラゴンの仲間か?
「体の大きさは……そうだな、とにかくデカイ!あんたが十人居ても届くかどうかってサイズだな」
巨大なモンスターか、もう嫌になってきた。
困ったらタリアさんに真っ二つにして貰おう。
詳しい話を聞きながらずんずんと林の中を進んでいくとすぐに水車小屋を発見、正確には小屋だった物を発見。
「あぁーこれは酷いわ」
見るも無惨にバラバラにされている。
ドワーフの村の方角に伸びた水路も確かに枯れてる。
「建て直すのには何日も掛かるしよう、多分近くにいるぞ」
ここは最初に私達が釣りをしていた川の下流だろう。
少し太めの川が水車小屋跡地を流れている。
「前に来たときはここまでこの溝も幅広く無かったんだ、でも多分あの化物が拡げたんだろうよ」
川幅を拡げるサイズの化物、是非とも会いたくない。
しかしあの小川の水だけでこの太さの川は出来ないと思う、他の場所からも水を引いてるのかな。
川を覗くとチラチラと泳ぐ魚が見えた。
あの形状、あの太さ、さっきのカマスと同型かな。
「カマス多いなぁ……ん?」
蛇みたいな細長い体に尖ったくちばし?
もしかしてだけど。
「ねえスランさん、もしかして化物って……」
「お、おい!来たぞ!」
スランさんの指す方向、下流から何かが背ヒレを立てながらスイスイと泳いで来た。
「あー……うん、そういう事か」
全長ざっくり十メートルちょい。
確かに化物ではあるけど今回のターゲットは間違いない。
「カマスだ」