騎士団とナマズと(10)
「えーっと……」
「王の方には私から話を通してあるよ」
仕事が早い。
「昨日着いて直ぐに城に向かったんだ、大体十年ぶりだったけどな、王は健在だったよ」
「へ、へぇ」
そう言われても王様と面識ないからなんとも言えないけど。
「剣先団の話も通してある、船長の話も含めて直ぐに信用して下さった、今日行こうか」
「そ、そうですね」
本当に誰だこの人、なんだかいつもより八割増しで美人に見える。
「タリアさん、騎士団に戻るつもりはないんですよね」
一瞬だけ眉間に皺が寄った気がした。
「当然だろ、私はもうお前に貰われた身だ、なんだったら地球とやらまでお供してもいいぞ」
それはやめた方がいい。
耳長族としてどっかの研究所に捕まって解剖されるか蜜にバラされる。
「さあ、腹減っただろう、ちょっと待っててくれ」
そういうと一人で部屋の外に出て行った。
「……エナ、タリアってあんな奴だった?一日しか一緒にいなかったから私まだ詳しく知らないけど」
「いや、私も違和感を感じてる」
正直戸惑ってると言ってもいい。
そしてタリアさんが料理なんて出来るのだろうか。
ナイフで芋虫刺して素焼きにする人だぞ。
しばらく無言で待っているとガチャリと扉が開いた。
タリアさんと並んで女の人がカートを押して入ってくる。
メイドさんだ。
嘘だろ実在したのかよメイド。
コスプレとかじゃなく?
「待たせたな、彼女はラヴィ、一人でここの切り盛りをしている」
タリアさんの隣に立つ女性はスカートの端を摘まみ軽く挨拶をする。
綺麗な長い銀髪に一昔前のギャルのような浅黒い肌、タリアさんとは対照的と言えるだろう。
「因みにダークエルフという種族だ今年で八十歳になる」
「げぇ!マジでぇ!激レアじゃん!」
ヴィヴィがびっくらこいた顔で立ち上がる。
色違いのエルフって事じゃないんだろうか。
まあ確かに色違いのモンスターはレアだな、うん。
ニコっと私達に笑顔をくれたと思うとカートに乗った料理を出してくれた。
彼女が作ったのだろうか、いい匂いがする。
「タリア様はズボラなので私がここでお世話させて頂いておりました、いつかここに帰っておいでになると思っておりましたが、貴女様が戻るきっかけを作って下さったのですね、ありがとうございます」
私の前で深々と礼をした。
タリア様……ね、なんだかこの街には私の知らないタリアさんがいっぱいだな。
ガングロ美人メイドってタリアさんの趣味なんだろうか。




