騎士団とナマズと(9)
キィィンと甲高い金属音。
私と彼の間に一陣の風。
いつの間にかエルフがいた。
鋭いナイフで騎士の剣を弾く。
本当にいつの間に来たんだろうか。
騎士に集中してて気付かなかった。
クルリと回転して騎士の首元にナイフを突き付けた。
「私の友人だ、手出しはするな」
いつものタリアさんの背格好、いつものタリアさんの声、いつものタリアさんのナイフ、でも雰囲気だけは違っていた。
騎士はびっくりしたのか声も出せずに後退りする。
「我々には構うな、騎士団に戻るつもりはない」
腰を抜かした騎士が尻餅を突く。
ナイフをしまったタリアさんが私の手を引いて人混みに紛れた、それをヴィヴィが追ってくる。
指、細いな。
全員無言のまましばらく歩くと洋館みたいな場所に連れてかれた。
随分と古そうだ。
「ここは?」
「昔王都で暮らしていた時に私用に用意されていた館だ、掃除も行き届いている」
私達は野宿でこの人は館かい。
いい加減手を離されタリアさんが洋館の門を開く。
確かにギィギィと古い鉄の音はするけど掃除もメンテナンスもある程度は行き届いているようだ。
タリアさんの後ろをついて歩く。
すぐに玄関、そして開く。
ここに一人で住んでたんだろうか。
それとも使用人とかいたのだろうか。
騎士団長ともなれば収入もかなりいいだろうしな。
「こんな家があるなら言ってくださいよ」
「着いてすぐ説明しようと思ってたんだがな、まさかあんなにしつこく迫られるとは思わなかったんだ、すまないな」
そう言ってタリアさんはまず食堂に通してくれた。
テレビで見るような長いデカイテーブルが一つ、周りには椅子が二十ぐらい。
「まあ座ってくれ」
まあここに来て立ちっぱなしもアレなのでヴィヴィと顔を会わせて適当な所に座った。
「若い騎士がすまなかったな、と私が謝っても済む話ではないが、だが君も人間だろう、もう少し自分の体は大事にしてくれ」
なんだか畏まりすぎてて私の知ってるタリアさんじゃないみたいだ。
キャラがおかしい。
この場所のせいだろうか。
それともノスタルジックに浸ってるんだろうか。
ともあれ今日の宿はここで大丈夫そうだろうか。




