騎士団とナマズと(8)
「ねぇねぇちょっと」
「ん?」
カラフルな野菜を見ていた私の肩をヴィヴィにツンツンされて振り向くとヴィヴィの指す方に例の若い騎士がいた。
「あ、船で会った」
「声かけましょ」
「ナンパ?」
「なんでやねん」
関西出身のセイレーン。
人混みの中で歩いて来る騎士に手を振る。
向こうもすぐにこっちに気付いたが知らんぷりしてすぐ横を通りすぎて行った。
カッチーン。
「おうおうやる気かにーちゃん」
そっちがその気ならこっちもこの気。
甲冑の肩の所を掴んでひき止める。
「なんですか、離してください」
「今こっちに気付いたでしょ、無視はないでしょ無視は」
「こちらは貴女方に用はありません」
ああん?
騎士団は新人の教育がなってない。
「レディーには優しくしろって教わってないの?べーべちゃん」
「な!誰が赤ちゃんだ!いい加減にしろ!」
「ちょっとエナ!」
今にも取っ組み合いになりそうな状況にヴィヴィが割って入る。
「赤くなってる赤くなってる!いくら騎士とはいえ人間相手に本気か!」
「まあ私も一応人間だし」
一応、一応ね。
甲冑の握っていた所が私の手の形に凹んでいた。
「き、貴様!私を騎士団の人間と知っての狼藉か!」
「当然!まあ狼藉になったのはそっちが原因だけど」
「なんだと!」
絹糸の様な綺麗な金髪、芸能事務所に所属してそうな甘いフェイスだが短気ではいかん。
身長も私と対等か甲冑脱いだらもしかしたら私のが大きいかもしれない。
そんな彼はスラッと剣を抜いた。
「ピィ!」
小鳥の様な鳴き声を出したヴィヴィが私の後ろに隠れる。
「あらあら、高貴な騎士様が一般人の女相手に剣を抜くなんてプライドの欠片もないのね」
「貴様!どこまで私を侮辱する気だ!」
後ろからヴィヴィにガスガス殴られる。
煽るなって意味だろう。
知らんがな。
「遊んであげるよ、べーべちゃん」
「きっ貴様!」
顔を真っ赤にして抜いた剣で私に斬りかかってきた。




