ドワーフとカマスと(7)
その化物のいる場所に案内してもらおう。
その前にドワーフさんの空腹が辛そうだったのでとりあえず残っているカマスの刺身をお裾分けしてあげよう。
クーラーボックスの底に冷却用で入れてた水をゆっくり出しながらカマスの血を流して頭を取り、内臓を取り、三枚におろして皮を引いて完成。
水分を切るのに本当はペーパータオルが欲しいが贅沢は言ってられないのでタリアさんの協力の元風の精霊の微風で乾燥。
取った内臓と頭はポイ。
ドワーフさんもうめえうめえと言いながらムシャムシャ食べ続ける。
一口摘まんだけど脂ののり加減はかなりいい。
「本当は醤油とかあれば良かったんだけど」
「ショーユ?とはなんだ?」
「私の世界の調味料です、こう……しょっぱい液体と言うか、大豆っていう豆の加工品なんですけど」
わさびとかも有るといいんだけど流石に欲張りか。
王都の方に行けば調味料ぐらいあるかもしれないけど。
王の都だし。
「そうだ、金属の加工が得意なら包丁とかないですか?タリアさんのナイフ使い続けるのもなんだかアレだし」
「私の短刀は魚を捌く用じゃないからな」
今の所魚を捌く用途でしか活躍してないけど。
釣ったカマスは全部無断で拝借したナイフで捌いてるし。
「おう、そしたらこれ使いな」
ドワーフさんが棚からジャラジャラと革のベルトに収納された刃物の山を引っ張り出してきた。
三十、四十はあるだろうか。
「わ、すごい」
「オイラんちは代々刃物の専門家だからな」
出刃包丁のようなもの、柳包丁のようなもの、はたまた日本刀のようなもの、かと思いきや果物ナイフのようなものまで多種多様だ。
「あの、取引しませんか?」
出刃っぽい刃物を良く見つめるがこれは良く出来てる。
「その化物退治したら私用に包丁を作ってください」
長い旅路になるだろうしこれから次々魚も捌いていく事になるだろう。
良い釣り旅行には良い刃物が必須だ。
「……おう、いいぜ、お前さん達があの化物を退治してくれたらお前さんのお好みの包丁をプレゼントしてやらぁ」
交渉成立だ。
それだけ村の危機って事だろう。
ドワーフさんの腹拵えも済んだところで重い腰を上げていざ出陣。