セイレーンとタコと(10)
他の乗客がチラチラとこっちを見ている。
まあ(見た目)若い女が三人で固まって海に何か投げてたら不自然に思うかもしれない。
もしかしてナンパされちゃうかも?
そういえばヴィヴィって何歳だろう。
人間的な見た目で言えば私より若く見えるけど人間じゃないしなぁ。
海老の付いた針がスーッと海に消えていった。
「後は食いつくのを待つだけです」
「ここで一発で釣れたらお手柄だぞ」
「いやー流石にそれはない、ガニサスガニサス」
脈釣りは糸の感じ見てないといけないからちょっと糸に集中しよう。
頼むぞ龍王?の髭。
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水中。
船の真下。
「よし、予定通りに進んでるな」
「はい!モンゴウ様!」
私の名前はモンゴウ。
今年で五百歳になる。
偉大なる剣先団の斬り込み隊長である。
これより脆弱な人間達の王を名乗る者を刈り取りに王都と呼ばれる土地に攻め入る為に部下を十名引き連れてマヌケな人間達の船の底に張り付いている。
こうしていれば力を温存しながら勝手に人間が我々を運んでくれるという寸法だ。
「作戦を確認するぞ、この後王都に潜入後、全員で城に正面から乗り込り騎士団達を打ち倒し王の首を取る」
騎士団達とは何度か刃を交えているがたかが人間の剣では私に届かないのがわかっている。
人間の中では強いとしても二本しかない腕ではどうしようもなのがわかっている。
なんと脆弱な奴等よ。
「各員、突入前に準備は万全にしておけ、まあ大丈夫だとは思うがもし私に何かあった場合は即刻本部に戻り何があったか総司令に報告すること、情報は命だからな、いいな!最後まで気を抜くなよ!」
部下達全員の返事を聞いて安心だ。
優秀な部下に恵まれたな。
さっさと王の首を取って愚かな人間達に我々の方が優れているという事を知らしめなければ。
「その前に腹拵えでもしておくか……おっ!」
丁度都合よく私の大好物のレインボーシュリンプが泳いでいるではないか。
幸先いいな、まるで我々の勝利を知らせてくれるかのような美しい虹色だ。




