ドワーフとカマスと(6)
木造の家に入るとさっきのドワーフさんがこじんまりとした家の真ん中に鎮座してこちらを凝視していた。
「とりあえず腹が減った、さっきあんた達がやってたみたいに俺にもあの魚を食わせてくれ」
夫か。
いや、夫の友人が図々しい感じか?
「その前に聞きたい、この村で何があった」
「魚が先だ」
「話が先だ」
いやどっちか譲れよ。
子供か。
小さい竈の前でまあ座れと言われて対面に座る。
「腹が減って話どころじゃねえんだ」
タイミングを見計らったかの様にドワーフさんのお腹がぐ~と情けない音を立てる。
「どうする?」
「え、私が決めるんですか?」
そっちのが年上なんだからそっちが決めて欲しい。
まあ魚自体は二人じゃ食べきらないぐらいにはあるから分けてもいいんだけど。
「じゃあ先にカマス捌きましょうか」
「……む、まあエナがそういうならいいが」
「へへっ話が早いな」
捌くのはいいが。
「水とか無いと捌きづらいんですけど」
血塗れになるし。
「水ならお前さん達が釣りしてた川以外ないぞ」
「いや、水は村まで引いていただろう、無い筈がない」
まあ近くに川があるなら引かない理由が特にない。
「いや、それがな、村に水を引いてた水路を誰かが壊したんだ」
「直せばいいだろ」
ごもっとも。
それだけ技術のある種族なら直す事自体は容易な筈だ。
「それが水源の近くに化物が棲みついててなぁ、村の誰も手を出せないんだよ」
はい出たー。
またこのパターン。
まーたナマズか?
今度はコイか?
それもとドジョウ?
「あんな化物見たことも無いし、この辺は地下水脈も無いし、水場まで距離はあるしで困ってた所をお前さん達がワイワイやって訳だ」
やりようはありそうだけどなぁ。
「この村を棄てて別の場所に行こうとは思わなかったのか?」
「あーダメダメ、オイラ達はこの土地しか受け入れない事にしてるんだ種族的に」
種族的ってなんだろう。
宗教的に的な事かな。
「っておい!飯より先に話ちまったじゃねえか!」
「まあまあ」
しかしそうなると今手元にある水はこのクーラーボックスの中身だけか。
「よし!じゃあ私達がその化物を退治してやろう」
隣のエルフさんが何か言い出したかと思うとすっくと立ち上がりドヤ顔決めポーズ。
「わぁ、頑張って下さいね」
「お前も来るんだよ」
なんでよ。
「これでもただの人間ですよ私は」
「いないよりマシだろ、ドワーフが見たこともない化物ってのが気にならないか?」
まあ気にならないと言えば嘘になるが。
滝壺で巨大ナマズが釣れて小川で大カマスが釣れる世界じゃもう何来ても驚かないよ私は。
「この世界の魚もとりあえず全部釣っていけ」
「魚かどうかもわからないでしょ」
もしかしたら大蛇とかドラゴンとかかも知れない、巨大カエルとか巨大カメとかの可能性もある。