セイレーンとタコと(5)
タリアさんと目を合わせるが私は反対だぞと言わんばかりに首を横に振る。
私はいいと思うけどなぁ三人になっても。
スリーマンセルなんて基礎中の基礎。
「わ、わかったわ!じゃあ宿代!私出すから!」
まさかの金を持ってるだと?
「一緒に行きましょうタリアさん」
「ええーせっかくいい雰囲気の二人旅なのに」
「子供か、というか思春期の男子か」
あわよくばワンチャン狙ってるのか。
旅において金の有無はでかい。
「賛成の人ー」
「はーい」
私とヴィヴィが同時に手を挙げる事で当然多数派になる。
「ちっエナの頼みだから仕方なくだぞ、わかってるんだろうな」
「わかってるわかってるぅ」
今にも飛び出しそうなテンションでヴィヴィは小躍りを始めた。
「改めて、私はヴィヴィ、呼び捨てでいいわよ、種族はセイレーン、特技は歌、よろしくね」
あくまでも歌が特技と言い張るのか。
種族的に仕方ないのか。
宗教上の関係か。
こうして青い髪のセイレーンが加わり女三人旅になった訳だ。
まじまじと見るとアイドル以下地下アイドル以上ぐらいの見た目だ。
地下アイドル詳しくないけど。
まあクラスに二、三人いるレベルの容姿って所だろうか。
「エナ、決まってしまったものは仕方ないが他人を信用しすぎだぞ」
「うーん、とは言っても私のさっきの馬鹿力を目の当たりにした後で私に暴力振るったりもしないでしょ」
晩御飯がサラダチキンになってしまう。
もしくはサケフレークならぬセイレーンフレーク。
当のセイレーンはというと。
「あれ、そういえば私の荷物は?」
そういえばひったくられてたのが発端だった。
「あ、それならそこに」
未だに気絶するおっさんの横に。
「よかったー、これがないと旅出来ないのよー」
と言って小綺麗な麻袋……のようなリュックのようなそれを拾う。
荷物がそれだけなら荷物持ちもやってもらえるな。
そう言えば病院……診療所?の先生がさっきから無言だがヴィヴィが元気そうなのを確認して部屋から出ていった。
先生にも見捨てられた可哀想なおっさん。




