セイレーンとタコと(4)
「ま、まあ助けてもらって感謝してるわ」
本当かよ。
「えーっと、あなたは……鳥の妖怪?」
天狗か何か?
「ヨーカイってなによ、私は誇り高きセイレーンよ」
誇り高いやつは本当に自分で誇り高いとか言っちゃうのか。
「む、ハーピィかと思ったがセイレーンだったか」
「なんですか?それ」
「ハーピィは鳥と人間の間みたいな姿の魔物だ、セイレーンは海の生き物だと思っていたんだがな」
そう言ってタリアさんがセイレーンの翼をペロッとスカートでも捲る感じに捲る。
えっち。
「あんな野蛮な奴らと一緒にしないで、私達セイレーンは水陸両用なのよ、水モード!」
そう叫ぶと淡い光に包まれ翼が人間の手と同じ形になり足がでっかい魚みたいになった。
一般的に絵本で見る人魚なんかに近い形だろうか。
尾ひれがビチビチしてる。
上半身はぐったりしてる。
「こっこれっ陸地でやるとダルいのよ」
アホなのかな。
「空モード!」
再び淡い光に包まれて先程の姿に戻る。
「私の名前はヴィヴィ、私の歌を理解してくれる相手を探して一人旅をしてる者よ」
アホなのに一人旅とか危ないな。
歌?
「歌って?」
「ああ、セイレーンは海で船乗りを歌で誘惑して殺したりするらしい」
「野蛮じゃん」
なーにがあんな野蛮な奴らと一緒にしないでだよ。
人魚とそのハーピィの中間の半端者って事でいいんだろうか。
「歌を理解してくれる相手を探してって、もしかして音痴なのか?致命的じゃないか、毒なし毒虫じゃないか」
それは致命的だ。
トゲナシトゲトゲ。
アレは違うか。
「お、音痴じゃないし!音楽性の違いと言ってよ!」
物は言い様。
「所であんた達は?見た所この街の人間とエルフじゃなさそうだけど」
まあ私の格好なんて一度直されてるとは言え私の世界のシャツとジーパンだし。
「ああ、えっと私が異世界の人間で元の世界に戻る為に王都に向かって女二人旅をしてる所で」
「え?ほんと!?私もこれから王都にいこうとしてたの!一緒にいきましょ!」
よっぽど一人旅暇だったんだろうか。
ぐいぐい来るやん。




