セイレーンとタコと(2)
「まあでも女二人旅、何があるかわかりませんから、力はあっていいんじゃないんですか?」
「まあそれはそうだが、力の使い道を間違えるなよ」
まあ結局力ってのは使う人間の意思次第だ。
大型の魚を上げるには丁度いい。
もしかして今まで釣りしててたまに竿が軽くなる瞬間があったのはこれが出てたんだろうか。
最強の竿に最強の力。
今なら海に出ても負ける気がしない。
「ま、それはいいですから船を探しましょう、あと王都に向かうにはここから船なんですよね?」
確か前にそんな事を言っていた。
「それはそうだがお前、釣りがしたくてしょうがないって顔してるぞ、ソワソワしすぎだ」
「えっえへへ、まあ腐っても釣り人ですから」
あんな訳ワカメな魚が色々いる海だ。
きっとヘンテコな魚介類がいるに違いない。
間違いない。
「まあ急ぎの旅でもないしいいが、じゃあ先に宿でも探すか」
「無一文で?」
「まあ前回リリー達に拾われたのはかなりラッキーだったな」
「タリアさんお金持ってないんですか?」
「人間の通貨とエルフの通貨じゃ違うんだよ文句言うな」
わかってはいるがつらい。
ベッドで寝たい。
いくら釣り人でも荷物が荷物であることには変わらないのだ。
いくら新しい力があるとは言え。
「ま、それじゃあおいおい……」
門の所に仁王立ちしてても仕方ないと荷物を持ち上げ歩きだそうとした時に前から悪質っぽいタックルをかまそうと突っ込んで来るおっさんが一匹。
それを追う女の子。
「つっ捕まえてー!ひったくりよー!」
女の子が叫ぶ。
よく見ると女の子は両手が翼になっていた。
妖怪か?
「おいエナ」
「はい?」
「やってみろ」
「本気ですか……」
再びハイドラモード。
おっさんは何か叫びながらナイフを出して突っ込む速度を落とさない。
トントンと軽くジャンプをして正面まで来たおっさんのナイフを手で受けて弾き左足を軸にして右足で地面を蹴った。
威力が強すぎて地面が削れる、というか抉れた。
その勢いのまま膝を腹部に最早見えない速度でねじ込んだ。
おっさんがくの字に曲がって今来た方に飛んでいく。
「あっやっば」
これはやばいやつだ。
見なくてもわかる。
予想以上の威力が出た。




