思い出とサバと(完)
私が一体何をしたと言うのだ。
そう言えばこっち来て最初に気絶した時に見た夢に蜜が出てきたような。
こっちの世界にも来てるのかな。
というか私はどうやってこの世界に来たのかな。
トラックに引かれて死んだんだろうか。
いや私的には海に落ちて死んだとかのが合ってる気がする。
気付いたらこの世界にいたし地球での最後の記憶らしい記憶がまだボヤけたままだ。
その内思い出して欲しい。
「まあもしこっちの世界にも蜜が来てるようなら紹介しますよ」
「大丈夫か?私刺されないか?」
「いや、大丈夫でしょ」
大丈夫でしょ流石に。
いくら蜜でも人を刺した事はないはずだ。
「蜜に何かされそうになったら私が守ってあげますよ」
「よーし今日からお前の名前はオンナスキーだ」
「ネーミングが雑過ぎる」
その後も記憶を追うように一つ一つ思い出していく。
一人釣りに行った話。
蜜と釣りに行った話。
釣り中に釣り場のおっさん達と仲良くなってその中の一人にストーカーされそうになった話。
「本当に釣りの事しか頭にないんだな」
「失敬な、食べる話だってありますよ」
果たしてこの世界にストーカーという概念があるのかわからないからうまく伝わってるかはわからないけど。
「次の町、港町でしたっけ、まだ何日か掛かります?」
「そうだな、ゆっくり行けばまだ二、三日は掛かるかもしれないな」
「じゃあ明日は歩きながらタリアさんの昔話でも聞かせて貰おうかな」
私の十倍ぐらい生きてるんだから何かドラマみたいな事があるだろう。
焚き火を消してタリアさんが出したエルフ製布団を二人で被って今日はもうお開きだ。
布団は一枚しかないから毎日これだ。
次の町では寝袋とか探そう。
初日襲われそうになったが背骨を砕く勢いで抱き締めたらもう襲って来なくなった。
「それじゃ、おやすみなさい」
「ああ、おやすみ色欲魔」
「貴女にだけは言われたくない」
せめて名前を統一して。




