ドワーフとカマスと(5)
「何か言うことは?」
「エ、エルフがドワーフに手をあげていいと思ってるのか!?」
「ドワーフがエルフの持ち物を盗むのは良いと思っているのか?」
「うっぐっそれは……」
さーてドワーフさんもう後が無いぞ。
「し、仕方ないだろ!今ウチの村は飢えてるんだ!」
村単位で飢えてるのは仕方ないとは言っても人の物を盗っていい事にはならない。
「ドワーフ族はそんなに飢える程貧しい種族でもないだろう、そんな急に飢饉に見舞われてたまるか」
「ほ、本当なんだ!」
タリアさんのナイフを手で制してドワーフさんの前に屈む。
「困ってるなら言って下さい、私達の出来ることならお手伝いします」
「へへっやっぱり女は乳がデカイ方が器もデカイな」
にやけた顔の天辺にエルフの踵がめり込んだ。
「そう言えばタリアさん、村ってもしかして」
「ああ、王都までのルートの途中の第一村だ、ドワーフはその秀でた加工能力を活かして近隣の村に物を売ったり自分達で作った農具を使って生活してたはずだが」
ドワーフさんの案内でその村に向かう。
と言っても一本道だけど。
荷物は重くなったクーラーボックスだけドワーフさんに持たせて後は自分達で持つ事でかなり楽させてもらっている。
力持ちな種族らしい。
「ここ暫くやり取りしていなかったがそんな簡単に飢える町では無いと思うがな」
「まあ、行けば判るでしょう」
体感一時間程だろうか、こっちの世界に来てから時計も携帯もないからほぼざっくりだけど暫く歩くと特に何も苦もなく村に着いた。
「こっちだ、着いてこい」
ドワーフさんの後について一軒の家を目指す。
村の外には人っ子一人いない。
寂しい村だな。
ちらっと目の端に入った田畑も枯れている。
「ここがオイラの家だ」
そういうドワーフさんが家の前でクーラーボックスを置いた。
「本当にこの村いつも栄えてるの?」
「おかしいな、前に来た時は確かにもっと他の村とかからも人が来たりして賑わっていたはずだが」
とても想像出来ないな。