思い出とサバと(10)
蜜がお風呂を準備してる間に夕飯の準備が出来た。
味噌汁と刺身、それからご飯は炊いてあったので焼いたサバを使った出汁茶漬けだ。
並べるところまで終わったのでテレビを見ながら蜜を待つ。
と思っていたら丁度帰ってきた。
「どんだけ時間かかってるの、ボタン一つ押すだけでしょ」
「いやまあそうなんだがな、出来てるのか?」
「出来てまーす」
ソファーに座る私の隣に座った。
「ちかい」
「いいだろ」
今日の蜜は本当にどうしたんだろうな。
甘えたいモードなのかな。
「……もしかして、私が男子と仲良くしてるのが気に食わなかった?」
「……言わせんな」
「もー、焼きもち焼きだなぁ蜜は」
「うるせえ」
私の方を一度も見ずに食事に箸を付け始めた。
テレビの音とカチャカチャという食器の音、あと咀嚼の音だけがひたすら混ざりあう。
うむ、いい出来だ。
やっぱり釣りたての魚はうまい。
その後一言もなく二人共食事を終え無言で蜜が二人分の食器をシンクに持っていった。
私がソファーで横になっていると帰ってきた蜜がその上に寝そべる。
人間ベッドだ。
「なーにー」
「……ふろ」
「後でね」
「……そろそろ帰るぞ」
「あれ、泊まっていかないの?」
私の上からスッと退いて玄関の方に向かっていく。
「今日はやめとく」
「ふぅん」
言い残して蜜は何事も無かったかの様に帰って行った。
一人になってしまった。
「……誰も帰ってこないし、適当に風呂入って寝るかな」
男子……男子ねぇ。
別に恋愛とか興味無いんだよね。
盛り上がるのは勝手だけど。
まあでも明日飯田には改めて謝らないとね。
蜜の言葉はナイフを通り越してチェーンソーだったりするから。
「まあ、もし彼氏とか作るなら一緒に釣りしてくれる人じゃないと論外だな」
そらそうでしょ。




