思い出とサバと(7)
「いいか、男ってのはちょっと優しくされるとすぐ好きになるんだぞ、特にお前みたいに顔が良くて乳がデカいと尚更、それにお前は身長もデカいからモデル並みなんだからちょっとは自覚しろ」
近くに座っていたオッサンが小さく頷いた気がした。
「いや、蜜は男じゃないでしょ、なんでそんな事わかるの」
「私がそうやって惚れたからだよ言わせんな!」
「……」
「……」
……。
……。
はっず。
最寄り駅で降りて家までまた徒歩、大体一キロぐらい。
蜜の家は私の家の道路挟んで隣だ。
「電車でOLのお姉さんとかオタクっぽいお兄さんとかめっちゃ見てたよ恥ずかしい」
「い、言わせたのはお前だろ」
「照れすぎでしょ」
「照れるだろ」
そう思うならちょっとは慎んでほしいもんだ。
私が言わせたというより勝手にキレただけでしょ。
顔と体が目当てだったか……。
「私の顔好きなの?」
「すっ……き」
目をそらすな。
「だっだからお前は自分の顔の良さを自覚しろ」
「……はい」
こっちまで照れてきた。
「気持ち悪いか、女同士でこんなの」
「いやー別に好き嫌いに性別は関係ないんじゃない?私も蜜は好きだし……やだ恥ずかし……ニヤニヤすんな」
「うっうるさいな!釣り具ちゃんと準備しとけよ!」
そう言って蜜はまっかっかなまま家に入っていった。
おっともう家の前だったか。
蜜はついては来るけど釣り具を準備するのはいつも私の仕事だ。
そういえば私が飯田を勘違いさせてるって話だった気がするけど飯田も私の顔と体を見て好きになったりしてるのな。
「……まさかね」
年中釣りばかりで幼なじみと遊んでばかりでミミズ臭い女がそんな好かれる道理もない。




