思い出とサバと(6)
まあ私も熱中してる時に邪魔されるのが嫌な感覚はわかる。
別にアニメに熱中するなとは言わない。
イラストだけ見せて貰おうと思ったけど大人しく帰って釣り行くか。
「みつー、かえろー」
「なんだ、もう終わったのか」
多目的室の扉の横でポチポチ携帯をいじっていた蜜はその手を止めて何かを察した様に携帯をポケットにしまった。
「あいつ根性無しの甲斐性なしだな、つまらない男だ」
「言い過ぎだよ、ちょっかい掛けたのはこっちなんだから、さっさと帰って釣りに行こ」
「今の時期はなんだったか」
「そうだなー、海まで行くなら鯖とか……」
大人しく退散しようと多目的室から離れるが後ろから呼び止められた。
「まっ待って!送ってく!」
まあ飯田だ。
「なんだアイツ、人に言われないと行動出来ない長いものに巻かれるタイプか、やっぱりつまらない男だ」
「蜜はディスりたいだけでしょ」
「お前を盗られたくないだけだぞ」
純愛か。
三人で帰路につく。
私と蜜は駅まで徒歩。
飯田は自転車らしいから駅まで付いてきてくれるらしい。
「青春って感じだね」
「ああ、あ、うん」
キョドりすぎでしょ。
女と話すの慣れてないのかな。
「おい飯田」
「は、はい!」
先に仕掛けたのは蜜だ。
「もう少し人間らしい会話は出来ないのか、はいとうんしか言ってないぞお前」
「あ、えっと……」
あまり変わってない。
「な、なんで僕に話を……?」
蜜に肘つんつんされた。
「え?あーいやー昼休みに絵描いてるのが見えたから何描いてるのかなーって、ただそれだけだったんだけど迷惑だったよね」
「そ、そんな事ないけど人に見せるレベルじゃないし……」
「そう……じゃあいいや、いつか人に見せるレベルになったら見せてね」
「あ、あ……うんわかった」
まあ見せられないという物を無理に見せてもらう訳にもいかない。
「私達さ、これから釣りに行くんだけど一緒に来る?」
「え、釣り?明日学校だよ!?」
「うん」
「この季節でこれからだともう暗くなるよ!?」
「うん、それでも釣りは私の趣味だからね」
これに尽きる。
「い、いや、僕はいいかな……」
「そっか、じゃあまた今度ね」
話をしていてもう駅に着いてしまった。
ま、蜜がいるしいいか。
「えっえっと、もっと話とか……」
「察しろオタク、趣味にも付き合わない話も繋がらない奴といても楽しくないって言ってるんだ」
「いや、そこまで言ってないよ」
蜜はやっぱり私以外には結構キツい所あるな。
「ごめん……」
「じゃあな、チャンスを自ら棒に振ったオタク」
そう言って蜜は私の背中をぐいぐい押して改札を通る。
ちょっとキツすぎじゃないかな今日は。
「ご、ごめんね飯田!また明日ね!」
「こっちこそ、ごめん……」
丁度来た電車に二人で乗り込んで見つめ合う。
「ちょっと言い過ぎだよ」
「お前こそ好きでもない男に期待させるな、勘違いを生むだけだぞ」
「別にただの友達でしょ」
「ほらそれだ」
何がいけないっていうんだかわからない。




