思い出とサバと(3)
蜜は料理をしない出来ないやって貰わないなので多分購買にパンでも買いに行ったんだろう。
私も昼御飯食べようと持参した弁当箱を出す。
これは手作りだ。
前蜜に作って来たら評価は良かったけど魚が多すぎると言われたので今度は肉多めで持ってきてやろう。
蜜肉好きだからなぁ。
今日はごはんに鮭フレークかけた奴とキンキの煮付け、あとサバの味噌煮と申し訳程度の野菜。
最近サバにハマってる。
クラスを見渡すと殆どの生徒が食堂や購買や中庭に行ってるが私を含め数名教室に残っている、その中で私の三つ前の席に座ってる男子が机にかじりつく様に必死に何かに熱中してるのが目に入った。
まあこのクラスでは皆知ってる事だ。
蜜帰ってくるまで暇だしちょっと話かけてみるか。
席を立って彼の前に立つ。
「もしもーし、今日もイラスト描いてる?」
私に気付いてすぐにビクっとして覆い被さる様に描きかけのイラストを隠した。
「別にバカにしてる訳じゃないんだし隠さなくてもいいのに」
「い、いや、あ、あ、あ、あの、えっと」
彼は所謂オタクってやつだ。
ケータイの待ち受けをチラッと見たことがあるがなんか可愛い感じのアニメの女の子の絵だった。
私と目を合わせようとせずおどおどしている。
「飯田がオタクなんて皆知ってるんだし」
「う、うん」
私が飯田と呼んだ彼はアニメの話になると凄く早口になる。
友人と話してるのを何回か見てるが本当にアニメが好きなんだなって感じだ。
「何描いてるの?」
「い、いや、これはいい」
そう言ってそそくさとイラストを鞄に隠してしまった。
「おい、今度はオタクいじめてるのか」
声に振り返ると蜜がパンを持って立っていた。
「いじめてないよ、何描いてるのか見てただけ、というか早いね」
「浮気の気配を感じて走ってきた」
浮気って。
「ふ、ふ、二人は付き合ってるの……?」
「あ?見てわからないのか」
蜜も飯田の机の前に来た。
「将来を誓いあった仲だぞ」
嘘をつくな嘘を。
「百合だ……」
百合?




