思い出とサバと(2)
「そもそもなんで画鋲入れられたんだ」
「サッカー部の部長好きだったらしいんだけどほら、私この間振ったでしょ」
「あぁ」
立て肘つく私の頭をガシガシと掻き回しにんまりと笑った。
「私と仲良くしてると蜜も苛められるぞーなんて」
「イソメ詰める女の友人に報復しようとするやつなんていないだろ」
ちゃんとビニールに入れたんだけどな。
見た目で平気だとしても臭いがアレだし。
その辺はちゃんと気を使った。
つもり。
つもりだけ。
「イケメンだったし勉強もできるみたいだし女子人気も凄いけどさー、正直タイプじゃないっていうかー」
「どういうのがタイプなんだよ、私みたいなやつか?」
「まー蜜みたいな腐れ縁ってのは無限に一緒にいれるよね」
ガシガシしてた私の頭を手ぐしで直して最後に形を整えてペタペタした。
私の髪型はほぼ寝癖なのでこれが自然体だ。
ちょっととかすぐらいはするけど。
「男だったらやっぱり自分の趣味に本気で打ち込んでる人がいいよねー、いや、サッカー部の部長さんが本気じゃないとは言わないけどそもそも仲良い訳でもないのに前から好きだったとか言われても知らんし、みたいな?」
まるでマックで駄弁るJKみたいだ。
JKだったわ。
「つーか今は釣りが恋人だしね」
「死ぬまでだろ」
間違いない。
「全く私がいつからお前の釣りに付き合わされてると思ってるんだ」
「嫌だった?」
蜜が私に背を向けて教室の扉の方へ向かって歩く。
「私がいないとダメだろお前」
振り返りながらニヤリと笑う。
今日の蜜は上機嫌だな。
それに釣られる様に私もニヤリと嫌らしい笑みで返した。
それ以上なにも言わずに蜜は教室から出ていく。
男が嫌いな訳ではない。
多分。
でも男ってめんどくさいし。
いきなり運命とか愛してるとか言い始めるし。
いや知らんしみたいな。
蜜とつるんで釣りしてる方が私には合っている。
学生の恋愛ごっこは精々そっちで勝手にやってくれって感じだ。




