思い出とサバと(1)
町を発った日の夜、釣りをしたらサバみたいなのが四枚ほど釣れたので焚き火を囲み塩焼きにして食べてみる。
サバみたいというのはサバにしてはヒレが倍ぐらい多い謎の魚だからだ。
「角はないんだけどな」
「ああ、こいつは見たことあるな、確か港町でも網で捕られて凄い売られてる奴だ」
やっぱりサバか。
干物でもいいかもしれない。
塩焼きはアユでやるべきだったかも。
まあいいけど。
調味料数日分貰って来といて良かった。
「サバか……」
「この魚がどうかしたのか?」
「いや、懐かしいなと思って」
サバ自体は結構食べるけどこいつを見る度に毎回思い出す高校時代。
「なんだ、昔話か?そういえばこの世界に来る前の事を聞いてなかったな」
「そんな面白い話もないですよ」
高校生活は普通の高校生だったと思う。
普通のJKが釣りばっかりするのはいかがなものかとも思うが。
「じゃあそうですね、サバの話でもしましょうか」
サバを一口かじり思い出す。
うーむ薄味。
そしてサバより骨が少ない。
内臓は抜いてある。
「あれは高校二年だったかな、だからホニャホニャ年前」
「あ?なんだって?」
「ホニャホニャ年前」
乙女の年齢は秘密なのだ。
……
…………
あれは高校二年の秋から冬ぐらい、丁度サバの旬になるかならないかぐらいの時期。
午前の授業も終わり私は窓を眺めている。
「おーいバカ、お前また女泣かせたのか」
ブレザーの両ポケットに手を突っ込み私の前に立つこの少女は蜜、私の幼なじみだ。
身長は私より二十センチ以上小さい。
私の癒しだ。
「んー?ああまあ、靴に画鋲入れられたからペンケースと鞄に山ほどイソメ詰めた」
やられたらやり返す。
ドラマでもよく言われてたもんだ。
「大丈夫かそれ、イジメにならないか?」
「知らなーい」
蜜は可愛い。
顔も小顔だが性格もひねくれ者で背はちっちゃいし髪はサラサラだしこんな私を小さい頃から構ってくれる。
休日は私が昔送ったネコミミのパーカーをずっと着ている。
多分中学の頃から身長が殆ど変動してない。




