ドワーフとカマスと(4)
追われて慌てたクーラーボックスがガタガタと揺れながら逃げるがすぐに大きめの石に躓いて二回、三回と転がり動きを止めた。
「風よ!」
パンッパンッと空気を蹴りながら空中を駆けるタリアさんが転がるクーラーボックスの肩紐を掴んで着地する。
なにそれカッコよくない?
ずるい。
ズサーッと慣性のままに数メートルすすんだタリアさんがブレーキを掛けて停まる。
クーラーボックスとは別に何か丸っこい物を抱えていた。
「なんですかそれ、小人?」
トコトコと徒歩で私の所に帰って来てクーラーボックスと小人を下ろした。
ボサボサの髪の毛、薄汚れた服(これについては私も人の事が言えないが)、小柄な割には顔はおっさん、背中には小さいハンマーみたいな物を背負っていた。
あら立派なお髭。
「こいつはドワーフだ」
ドワーフか、名前だけ知ってる。
「小人族と呼ばれる場合もある、金属の加工や工芸などに秀でた種族だ」
金属の加工?そういえばエルフの村で針を加工してくれた時にそんな事を言っていたような。
「今私達の集落にもこいつと同じドワーフ族が一人いる、ミスリルを加工したのもそいつだ」
やっぱり。
ドワーフさんはタリアさんに襟を掴まれて離せ離せと暴れる。
「離してあげれば?」
「逃げるだろ」
「まあ何も無くなってないし」
盗られてたら別だが。
「ふーむ」
タリアさんがドワーフさんをポイした。
ポイ捨て厳禁。
「いでえ!」
ダミ声でお尻を押さえて不時着したドワーフさんが涙目でタリアさんを睨んだ。
「何しやが……あっごめんなさい」
ナイフをドワーフさんに突き付けていつでも殺せるんだぞアピールを始めた。