ハイドラとバスと(14)
「気にする必要はない、我々も暇だったからな」
私釣りしてたけど。
まあもう帰るつもりだったけど。
「さ、こんな所に長居は無用だ、町に帰るとしよう」
「は、はいぃ」
そんな少女漫画の主人公がイケメンに迫られた時みたいなリアクションせんでも。
森の奥から幽かな視線を背中に受けながらも森を抜け、釣具を回収し三人で町へ帰還した。
話を聞くと彼女は町の薬売りでその材料として色々な茸を集めていたそうだ。
森を出る手前で落ちていた籠を拾うと中にはシメジみたいな茸、なめこみたいな茸、ピンクのやつ、紫のやつ、レインボーのやつと多種多様な茸が入っていた。
「体に悪そう」
「摂りすぎると毒になる茸も勿論ありますけど毒茸が全て悪い訳ではないんですよ、少量の毒を体内に入れる事で毒を体の外に出すっていう治療もありますから」
なるほど、漢方って確かそんな感じだったな。
「あ、私の家はここです」
会話していたらいつの間にか家の前に着いていたようだ。
リリー達の家から離れてない、というより凄く近い場所にその家は建っていた。
「ちか、三百メートルぐらいかなぁ」
「え、近くに住んでるんですか?」
「住んでるというより下宿?無一文の私たちを泊めてくれてるんだ、リリーとジェイ」
ああーという顔をして私とタリアさんの顔を見た後スッと私の胸を見る。
「あそこのお兄さん女好きで有名ですしね」
「まじかーそんな気はしてた」
大体雰囲気でわかるって。
どうぞどうぞと言われて家に通される。
薬草やら茸の加工品やらが棚に沢山置かれて商品として売られていた。
本当に薬売りだったか。
ファンタジーの薬局って感じだ。
行商ちゃんとは大違いだ。
第一印象って大事だな。
まあ行商ちゃんは第二印象も胡散臭さしかないけど。




