ハイドラとバスと(1)
「むむむっこれは……」
「こっこれは?」
私の手を握り水晶玉を覗き込むお婆さんが険しい顔で水晶玉から顔を離して一息ついた。
「ふぅ、わかったよお前さんの能力」
リリーに聞いたところによるとこのお婆さんは他人の能力を見る事が出来るらしい。
旅の勇者やこれから戦いに行く戦士などが自分のスキルを確認するのに寄ったりするらしい。
しかし相変わらず私は無一文だけどいいんだろうか。
「な、なんですか、私の能力」
「お前さんは……」
グイグイッと顔が近付くのでこちらからも急接近。
「わ、私は……?」
「そうだね、名前を付けるとしたら適応とでもいうか」
「て、適応?」
キスする五秒前まで近付いた私達の顔を間に入ったタリアさんの手がぐいっと離した。
「近いぞ」
「女の嫉妬は醜いですよ」
「誰が老婆に嫉妬してるんだ」
年齢的には貴女の方が上でしょ。
お婆さんは気にする様子もなく語り始めた。
「そうさな、お前さんの能力は言語や体質などが環境に適応する能力ってところさ」
「言語、確かに誰に習うでもなくこの世界の言葉で会話出来てるし、でもなんか弱そう、こう……炎が出るとかビームが出るとかそういうの無いんですか?」
あまり強くなさそう。
冒険するにあたって役に立つのかな。
「何言ってるんだい、世の中生き残るのは強い者じゃなくて環境に適応出来る者なんだよ、体が適応するって言うのはとんでもない事だ」
本当かなぁ。
空気がどこにでもあってありがたみが分からないみたいな能力じゃないのこれ。
「それともう一つ……お前さんの中に巨大な蛇がみむぐぐ!!」
言いかけたお婆さんの口をタリアさんが手で無理矢理塞いだ。
「バカ!余計な事を言うな!」
「ちょっ!何やってるんですか!」
「い、いやぁなんでもないぞ!あはは」
愛想笑いでお婆さんの肩を組んで後ろでこそこそ私に内緒話をはじめた。
なんなんだ。
老人には優しくしなさい。




